③林佐智世さん (高山村役場 住民課)
こんにちは。
今回は、高山村役場 住民課で働く林佐智世さん(以下 佐智世さん)にインタビューをさせていただきました。
佐智世さんは、高山村に北部に隣接するみなかみ町の猿ヶ京に住んでいて、高山村役場に勤務されています。
佐智世さんは昨年まで、僕がお世話になっている地域振興課でお仕事をしていたので、機会があれば話をするという間柄でした。
一度ゆっくり話をしてみたいと思っていたので、思い切ってインタビューを依頼すると快諾してくださいました。
ゆっくり話す機会はなかったので、どんな話になるかわからなくて、ちょっと緊張しましたが終わってみたらめちゃくちゃ楽しかった。
役場窓口で佐智世さんに対応をしてもらって顔を知っている方には、かなり驚く内容になっているはずです(笑)
キーワードは
能・尻高人形・モンハン
この3つ。ぜひお読みください。
役場でインタビューを受けてくれた林佐智世さん
役場でのお仕事と趣味について
ー 住民課ではどのようなお仕事をしているんですか?
佐智世さん:住民課の窓口担当ですね。住民票出したり、住所の登録をしたりとか、マイナンバーカード交付の手続きをしたりとかしています。現在主担当ではないのですが、中学校卒業前の子や、シングルの親子、身障の人も等級によっては、ピンクの福祉医療券ってのが出るんですけど、病院の窓口でお金払わなくて良くなるって券のご案内などもしています。
群馬県は福祉医療の助成が手厚いそうです。そういったことを役場に入ってから知ったそう。役場に入りながらいろんなことを学んでいると話していました。
ー 他に群馬県強いぞみたいなことはありますか?
住民課は関係ないんですけど、文化財関係で『みやま文庫』っていうのがあって、群馬県独自の文庫なんですけど面白くて。公共が入っている文庫って全国的にもあまりないんじゃないかなぁ。
私が大学で図書館司書を勉強していて、文庫の関係とか図書の取りまとめとか結構興味深く見ているので、、
そういえば、高山の文化財の関係で「道祖神」を冊子やホームページで取りまとめていること。あれはすごいことじゃないかなぁ。
地図で場所を明確にしていて、この「道祖神」はどういう種類でと説明しているのはすごいことなんじゃないかなぁと思うんですけど。。
道祖神一覧(最後のページ)↓
https://www.vill.takayama.gunma.jp/06kyouiku/2-1bunkazai/4.pdf
住民課の話から、群馬県や高山村の他地域と比べて優れているところについて淡々と教えてくれました。ここでは割愛した部分もあるのですが、冷静にいいところを見つける、佐智世さんの見方が素敵でした。
ー 道祖神も図書館司書の知識なんですか?
道祖神とかは私の趣味です(笑)
ー え、道祖神が趣味なんですか?
道祖神というか、文化財とか民俗学系のやつが結構好きなんですよ。大学の卒業論文は伝統芸能の「お能」について書いたんです。
高山村って尻高人形があるじゃないですか。一番初めに三番叟(さんばそう)というのがあるんですが、それを中心的に論文で書いたんです。
ー へー!! すみません、サンバソウってなんですか?(笑)
www。演目ですよね。
日高川とか、いろいろ尻高人形(高山村の人形浄瑠璃・国指定無形民俗文化財)では演目があるんですけど
その中の一番初めにやる演目で三番叟(さんばそう)っていうのがあって。
ー 演目は、歌手のコンサートみたいに何曲もやるってことですか?
そうです、そうです。
一度の公演で行われる演目が何個かあって、三番叟があって日高川があってー。安珍清姫(あんちんきよひめ)とか分かります?
話は盛り上がり全然知らなかった『日高川』、卒論テーマにもした『三番叟』について教えてもらいました。
尻高人形の「日高川」で用いられる人形
嫉妬で鬼になった安珍清姫
三番叟っていうのは、元々『翁』という演目があって、これは物語性がなくて舞台の中で四隅を払ったりとか、天下泰平・五穀豊穣じゃないですけど、神楽みたいな感じで歌って舞うもので、白い面の「翁」を能楽者が舞った後に狂言役者が面を被らない「揉ノ段」黒い面を被る「鈴ノ段」と分けて舞います。これが現在の「三番叟」です。
演目をする前に舞台の上の、露払い、場面を清めるためのものとして行われるんです。
尻高人形の三番叟は人形がぴょんぴょん飛び跳ねているだけ。
そういうものなんですけど、どういうふうに飛び跳ねているかはいろんな流派や人形劇とか芸能によって違うので、そういうものを興味深く見ております。
ー へー! なんで三番叟に目をつけたのですか?
室町時代とか、一番古くからの能楽の芸能形態が残っているのが『翁』とか『三番叟』なので、それってどれくらい前から言われてるのかなぁとかそういうの考えてたら楽しくなっちゃってこれにしたんですけど。
私は興味があるから楽しく見ているけど、興味がない人にとっては心地よく眠くなってしまうこともあるので。でも、心地よくなってしまうのもそれはそれでいいのかなって。
高山村の文化財資料を手にする、佐智世さん
急に飛び出してきた能の話にびっくりしました。同時に、能についてイキイキと話しているのでめっちゃ好きなことが伝わってきます。
また、高山村の尻高人形についても話をしてくれました。
人形がどういうものなのか、高山村の村史とか、高山村の地名についてのことは全部本で残っているので
それを見ながら、これの由来ってここから来ていたのかなぁとか、内容が他地域の演目と違うけど、どうしてこういう風になったのかなぁとか考えるんです。
三国街道経由で伝わってきたのかなぁとか。街道経由でわざわざここ(尻高)まで来るのかな?とか。そういうのを考え出すと止まんなくなっちゃうじゃないですかー(笑)
ー いや、なかなかならないですよ(笑)
こんなにいろんなことを考えているのなら「自身の地域にも知っているはず」と思い、佐智世さんの住んでいる猿ヶ京の歴史についても聞いてみました。
自宅周辺の歴史について
ー 佐智世さんの住んでいるところ(猿ヶ京)は何か違った文化があるんですか?
お寺めちゃくちゃ少ないんですよね。根拠文献のない伝聞なんですけど、昔、あんま良くないお坊さんがいたらしくて、燃やしちゃったんですってみんな。(笑)
ー 信長かよ(笑)
ほんと(笑)
割と私の家の周りは神道が多くて、お葬式の時も神道式なんですよ。お線香とかお焼香とかじゃなくて榊(さかき)を奉納して、、
ー へー、神道式は僕見たことないです。
三島神社とか、中山神社とか(高山村にある神社)でも神楽やったりするじゃないですか。この辺りの神楽って中之条の方の神社の系列なんで似た神楽を舞うんですけど、
うちの方の神楽は、ちょっと簡易化された神楽(笑)
テキトーに代々繋がっているやつなんで、お囃子が省略されているとかそういう違いもあったりするんです。
ー 地域に住んでた人とかお坊さんによってガラッと変わったりもしそうですね。
そうですね。群馬県内だけでもそういう違いはあると思います。
ー 逆に佐智世さんが神楽の省略された部分を、復活させて、また長くするみたいなことも。。というか、そういったことも過去あったかもしれないですね。
あ、それは絶対あったと思いますよ。神楽ではありませんが現に高山村の「役原獅子」も途切れているんですよね。戦争や飢饉とかでちょこちょこ途切れているんですよ。途切れた期間が100年くらいの時期もあって、そうすると100年の間で変わったりする。
「省略されている」とか「あったほうがいいって増やされている」とかもあったりするんですよね。
途切れたけど、やっぱりやりたいとなったときのその人たちの気持ちを優先して、外から来た人がこういう風にやったらいいんじゃないとか言わずに黙って見てるっていうのも大事なんだろうなと思って。
うちの所みたいに燃やされたりすると、文書として残っていないことが多くて、、
そうすると文書として残っていない部分はどうなったのかと探すのが難しくなってしまうんですよね。燃やして無くしたっていうのもそれはそれで文化ではあるんですけど、調べたい時にすごく不便!(笑)
燃やすな!って(笑)
ー 確かにw 燃やされたら敵わないですね笑
そうそう。
ここまで聞くと、休日一体何をしているのかが気になります。
休日の過ごし方
ー 休日は、やっぱり歴史書とかを読んだりしているんですか?
ゲームしてます(笑)
でも図書館には、毎週行きますね。
ー へー!毎週行くんですね。
ちなみにゲームは何してるんですか?(笑)
今、モンハンやってます(笑)
ー モンハン(笑)
今って、PSPですか?(小学校の時から記憶が止まってる笑)
いやSwitchです。私も大人になってから、この2・3年で初めてゲーム機を買って、初めてモンスターハンターをしたんですけど。。笑
ー www。割と面白かったんですか?
面白かったです。今のやつって「モンスターハンターライズ」という日本系のやつなんです。
私は、お化けとか妖怪とかも好きなので、「これって天狗じゃん」とかエリアの音が、「あれうちの周りの音と同じで、超ひぐらしの音するよ!」とか。すごい作り込まれてるんで面白いですよ。
ー www そっちの方で見てるんだと思ってびっくりしました(笑)
いや、普通に(モンスターも)倒しますよ(笑)
武器の名前とかも、日本書紀のここから取っているんだろうな。とか
歴史とか文化とか宗教とか勉強しているといろんなものの元ネタになっているんだということが分かるので、そういうところから勉強していくのも楽しいですよねきっと。
ー なるほどー。全部楽しくなりそうですね。
そう全部楽しくなりますよ!
あとあれです、最近料理してます。コロナでどこにも行けないからいろんな国の料理を作ってみようと思って、図書館で本借りてペルーの料理をつくってみたりレバノン料理をつくってみたり、他の国の料理なんで正解ってわからないじゃないですか。料理で勝率っていうのもおかしいんですけど、勝率6割ぐらいなんですよね。別の4割はほんとにびっくりするくらい不味い(笑)
ー はははwww
冗談だと思うじゃないですか。マジ、マジなんですよ。(笑)
まずくてびっくりする(笑)
ガスパチョとかあるじゃないですか。トマトとかで作るだけだし、火とかもあんまり通さなくていいらしいし簡単だろうと思って作るんですけど、私が作ると超不味い。
トマトときゅうりと水とバジルをミキサーに入れただけなのにとろみがあるんですよ(笑)
ー (時計を見て、終わりの時間が近いことを知る)
えぇぇ、やば。。後味が悪いぞこれ(笑)
あ、もう終わっちゃう。やばいあんま良くない話で終わる(笑)
時間も来てしまったので、ここで一旦終了。
続きは、これから話すときのお楽しみということで。。笑
料理の話も、もう少し聞きたかったです。多分もっといろんなものが出てきたはず。
インタビューを録音したものを聞きながらこの記事を書いているのですが、記事を書きながら改めていろんなことをよく知っているなぁと思いました。またそれを仕事と絡めているところが立派だと感じました。
面白かった。インタビューしてよかったです。
僕の大好きなクセのある話をたくさん聞くことができました笑
今年の尻高人形は、ぜひ佐智世さんの解説を聞きながら鑑賞させていただきたい(笑)
普段は役場の住民課窓口で対応されています
お忙しい中インタビューに答えていただき、ありがとうございました!
読者のみなさん
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。