ダメダメくんとの戦い
まだ実家に住んでいた頃の話。
私は体がとても弱くて、しょっちゅう寝込んでいた。寝込んでいるといつも聞こえる音は、機械の音だった。
実家の家業が町工場と言うこともあって毎日機械の音と油の匂いがしていた。当時の私は、朝8時になると聞こえてくる機械の音がうるさく感じていた。いつも熱を出し布団の中で寝てる時に、ガーガー、ギーギーと高い金属音が苦手だった。いつも決まった機械音と工場で聞いているいつも同じラジオ番組が寝ている私には、時報のように感じていた。
そんな機械音も夕方になると終わりを告げる。すると、家に静かな時間がやってくる。
その夕方に必ず聞こえてくる音がある。家からちょっと離れた線路から聞こえる電車のガタンゴトンという音だ。工場の機械音で日中はほとんど聞こえてこない。それが仕事が終わると同時に聞こえ始めてくる。
このガタンゴトンと言う音を聞くと、あーもう1日が終わりだなと思い、今日も熱が下がらなかったなぁ〜いつ学校に行けるのかな?そう思いながら寝ていた。
もう実家はなくなってしまったが、不思議な事に今の会社の事務所は、実家の環境に少し似ている。少し離れたところだけど、やはり線路があって今は、会社でかすかなに聞こえてくるガタンゴトンという音を聞くたびに懐かしくなる。
もう決して戻ることはないあの場所の懐かしい音。
失ってから気づくことが年をとる度に多くなってくる。
失う前は好きではなかった機械音ですら、今は聞けるなら聞いてみたい。
失った過去はどうやっても取り戻す事は出来ない。失う前に気づければよかったのに。
いくつまでダメダメな自分が続くのだろうか?
きっと死ぬまでダメダメな自分との戦いは続くのだろう。