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5000円ポッキリの話

今まで新宿の歌舞伎町であまり楽しかった思い出がない。

この話は私が若さが溢れていた頃の話。
最初の出来事から良くなかった。最初に就職した会社の先輩と歌舞伎町へ飲みに行った。だが飲みに行ったのは2件目だったのが良くなかった。最初は田町で飲んでいたはずなのに、酔った勢いというものだろう先輩がまだ時間が早いから歌舞伎町で飲み直そうということになった。

飲み直すつもりで行った歌舞伎町なのに、気が付くと先輩と私は、水着バーに居た。初めての歌舞伎町なのに何故水着バーなんだ?ってと思ったが、酔った勢いと先輩の行こうよに押し負けてしまった。システムを知らない私は、女の子がドリンクを頼むのをいいよと言っていると、先輩はフルーツ盛り合わせを頼んでいた。お酒にフルーツって何で?と思ったが、そこに来たフルーツは想像していたものと違った。超大盛りで上に花火が刺さっていた。

やっぱり歌舞伎町は凄いんだな~と思っていると、時間はあっという間に過ぎ、さてお会計となった時に一気に酔いが覚めた。一時間何千円ということで入ったお店だったが、会計は5万円を超えていた。私と先輩は顔を見合わせて、金額を見てびっくり仰天。その当時はカードを持っておらず、現金も5千円ちょっとしか入っていなかった。先輩も何千円で飲めると思っていたから、大慌てで財布の中身を確認したが、全然足りない様子だった。

その後、先輩がちょっとお店の外へと消えていき現金を調達して会計をすましてお店を出た。とても高い授業料を払った。その後、フルーツ盛り合わせというものがめちゃ高いことを知った。それ以降先輩と何度も新宿で飲んだが、歌舞伎町では飲むことはなかった。

その後転職して、歌舞伎町へは行かなかったが、転職先の社長が歌舞伎町にハマっていたこともあり、私は再び歌舞伎町に行くこととなった。そこでは、水着バーの様な失敗はなかったが、別の失敗が今度は私と相棒を襲うのであった。

それが、呼び込みアタックだ。いつものごとく、私と相棒が適度以上に酔って歌舞伎町を歩いていると、呼び込みのお兄ちゃんが何人も何人も寄ってくる。女性にモテるなら嬉しいが、ここ歌舞伎町では呼び込みのお兄ちゃんにモテモテなのだ。その中の一人の呼び込みのお兄ちゃんがしつこく声をかけてきた。

「5000円ポッキリだから。一切追加料金もなし。奇麗どころだらけだから大丈夫。安心して」とその言葉に、私と相棒が反応してしまったのが失敗だった。既に酔っぱらっている二人にはまともな判断を出来ず、欲望のままにお店へ入り、お金を前払いした。そこは雑居ビルの2階なのだが、私達以外にお客さんが誰もいない。それどころか、女の子も誰もいないのだ。30分過ぎにお酒を造りに女の子が来たが、作ってすぐいなくなってしまった。シーンした部屋で私と相棒が二人で酒を飲んでいると男性が来て言った。

「延長します?」

「するわけないだろ!」と二人でそのままお店を後にした。お店を出て間もなく、さっきとは違うお兄ちゃんが声をかけてきた。断りつつも、さっきのお兄ちゃんに騙されたからと言うと、「あいつはダメな奴なんですよ。俺は大丈夫だから絶対!信じて!」最初のお店での空振りでしっくりしていない私と相棒は、また、そのお兄ちゃんの5000円ポッキリという言葉に乗ってしまった。

今度のお店は雑居ビルの地下だった。前回同様に前払いで支払い、お店に入ると、今度は音楽がガンガンなっている。部屋の真ん中にポールがあって、外国の女性がぐるぐると回っている。ちょっと怪しいけど大丈夫だよね?と不安になったが、ちゃんと女の子が来たかと思ったら、今度は全員が外国人でカタコトの日本語しか喋れず、会話にならないのだ。分かったのはウクライナから来たという事だけだった。お酒を飲むというより初歩の英会話教室みたいな感じになってしまい、ダメだ、お酒を飲んでいても楽しめないと思っていると、店員さんが私達に「特別ルームがあるけど、そちらへ行きますか?」聞いてきた。

その特別ルームを見てみると、入口のカーテンの前にボブサップみたいな屈強な外国人男性が腕組みをしているのが目に入った。それを見た私達は丁重にお断りをしてお店を出た。

お店の外に出て、私と相棒が「5000円ポッキリってろくなお店がないよな~」とため息をついていると、待っていましたとばかりに、新たな呼び込みのお兄ちゃんが寄ってきて言った。

「ねっ!あそこ外国人だらけでしょ」

「うちのお店は日本人だけ!どう?5000円ポッキリで」

私と相棒は声を揃えて「もういいよ!」と言ってその場を離れたが、それでも次から次へと違うお兄ちゃん達が寄ってくる。ここはヤバい、ここでは私達は絶好のカモなのだ。早く逃げなければと急いで近くのてラーメン屋に入り反省会と称して飲み直した。

その後、条例とかで厳しくなったようだけど私と相棒にとって歌舞伎町は楽しい思い出がない。酔っ払っての失敗がほとんどだけど、場所の相性というものもあるのでは?と思う。酔っぱらって欲望に負けて騙されっぱなしだった。

今はどうなっているか分からないが、酔っ払った私達にとって、昔の歌舞伎町は怖かった街なのは間違いないようだ。

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