虫が好きならよかったのに

今のマンションに引っ越してから

もう10年は経った

毎年の事なのだが、このシーズンは嫌いだ

何が嫌いかと言うと

【蝉】


住んでいる裏に神社があるので、夏の季節は、

【蝉】にマンションが支配される

3階に住んでいるのだが、マンションの入り口から

部屋に行くまでは階段しかない

その間に、【蝉】の死骸が多い時には

40匹以上あるのだ


夜帰る時には、【蝉】がバチバチと音を立てて飛んでいる

私には、死ぬ間際の飛び方にしか見えない

狂ったようにバチバチと周りの壁に、ドアに、電灯に、当たっている

狂気の世界だ


子供の頃から、虫が大好きならば大喜びなんだろう

だが、私は違う

はっきり言って、虫は好きではない

嫌いなのだ


まだまだ続く夏

私は、1階から3階まで、まるでアメリカのスワット並みの気合いで

それぞれの曲がり角で『クリアー』と心の声を出す

銃の代わりに、折りたたみ傘を持って

心の中で今日も『クリアー』がこだまする

私の夏の戦いは、まだ、終わらない

どうやって戦うのでしょうか?

別に叩いたりしませんよ、怖いから


え❗️

部屋のドア付近に蝉がいたら?どうするって?

答えは簡単

私は夏の間は雨が降らなくても、常時折りたたみ傘を持っている

【蝉】対策の為にね

静かに折りたたみ傘を広げて

染之助染太郎のように傘を回しますよ

今日は、いつもより多く回っております

心で叫びながら


その姿を一度、妻に見られた事があった

「何やってんの?」

「染之助染太郎のモノマネだよ」

「わかるでしょ!傘回しているんだから」

「はい、はい」


呆れる妻


「蝉のどこが怖いのよ」

ど直球の一言に私も直球返し

「え〜全部」

『ダサっ』の一言に

私の心は傷つくことはない

ダサいより怖さが勝っているからね❗️


ただ、怖がり過ぎてしまった・・・・・

これだけは悔やむ


息子に、私の蝉嫌いが移ってしまった


息子曰く


【蝉】に囲まれない夏を迎えたい


あ〜その気持ち、分かるぞ息子よ❗️


親子揃って、染之助染太郎


それを見て更に、呆れる妻


今夜も、妻のため息が聞こえる


『はぁ〜』


『ダサっ❗️』





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