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友だち 犬を亡くした友だちへ

時々、友だちになどならなければ良かったと思う。今日は結局、朝おはようのLINEが来ただけだった。こんなに何も言ってこないことは珍しいから、また心配する。

 ひょんなことから、普通なら絶対に友だちになんかならないような人と友だちになった。しかも、とても近しかった。自分の心にすっと影のように忍び込んで、離れなくなった。あまりにもぴったりな気がした。毎日話した。しかし、やりとりはいつも向こうからの連絡待ちといつの間にかルールが決まった。私が連絡しても返事がないことが多かったからだ。待っていると向こうからどんどん連絡が来たが、時々、ピタッと途絶えた。「なんで連絡しなかったの」と聞いたら、自分の勝手だと言われた。つまり、友だちはとてもわがままで、自己中なのだ。だから、孤独だった。友だちの孤独が手に取るように分かった。私と似ていた。わがままを許した。


 私はずっと待つ。どうしたのかと心配する。犬が死んで、葉っぱが閉じるみたいに一人自分の殻に閉じ篭って苦しんでいる友だちのことを、異常に心配する。私がこれほど心配しているとは知らないだろう。知っても余計だと怒るかもしれない。


 時々、友だちになどならなければよかったと思う。ミスだった。いつも人と接するときそうする通り、一定の距離を保ち、他人として扱うべきだった。いつの間にか友だちが私の中に影のように忍び込んでいた。私と見分けがつかないくらいに。友だちは犬依存症で私は友だち依存症だ。だから今夜も心配する。戻ってこない飼い主を待つ犬の気分。犬小屋につながれたまま、私は飼い主が帰ってくるのを待っている。いつまでも待っている。

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