夏に至る

外に出たくなくなるほどの亜熱帯。陽射しよりも湿気が身体を刺してくる。
今年もまた夏に至る病の夏になるのかな、とぼんやりと心を覆う灰色。
梅雨は明けたのか、それとももう夏なのか。


徒労感、何も成し得なかった人生をどこまで歩くのか、とか、10年後を考えることすら鬱陶しく感じる、本当は夏は外に外に気持ちが向いていく季節なのに、この内に内に気持ちが落ちていく感覚はなんだろう。

そして部屋にうずくまる。電気すらつけない部屋の中で夢も見ずに眠る。



花火を目の前で見ているようなぴかぴか、からの、どおんどおん。で目が覚める。雷雨だった。

何故か少し心地よいと感じてしまう、どおんどおんのリズム。遠くじゃない、すぐそこで雷が落ちている音。稲妻の光がちかちかぴかぴか。
目が覚めたのに夢なのかな、と思うけれど、この腹の底に響くような重低音の振動は、現実だ。


少しわくわくするな、この感じ。雨に濡れるのも厭わずベランダに出ちゃう。ものすごい豪雨とぴかぴか、どおんどおん。

ああ、これは祭だね、祭が始まる合図の太鼓のリズム。
稲妻と太鼓、生まれる前から身体に刷り込まれている祭の高揚感。


豪雨のち、夏。
感性が開ける夏が始まる、



やっぱり、ずっと、夏が好き。


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