夏に至る(病)2


夏は暑いほうがいい。湿った空気、生温い風、動かない太陽、じりじりと焼き付ける光線。顔中が汗で溶ける、じわりと背中に張り付く服。吹き出る汗の生理現象で、自分が生きた生物なのだということをやっと自覚する。

眩し過ぎて目を開けていられないほどの明るみに晒される、圧倒的「生かされている」感覚。あまりにも無力な生物、それなのに汗を出し体温を調節し、必死に「生」にしがみついている。晒されたくない、まっさらな光の下で、生きていていいものじゃない、早く、陰に、行かなければ、

光が強いほど、濃い陰が出来る。陰に隠れる。隠れても光が目に入る。真っ白で、満ち満ちている、満ちているのに何もない、ただ熱を放つ、夏

そしてだんだんと暑くなって、生き物として形を保っていられなくなっても、夏は続く。夏の真ん中で、生きていられなくなった生物の。晒される、晒されながら、生きて死ぬ、夏に至る、病


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