連載小説 マリアと呼ばれた子ども 第35回
翌日、簡単な朝食を済ませると僕たちは【ドルフィン】と名付けられたタオライアーの制作に取り掛かった。作業場所は愛さん宅のリビングルームに続くデッキだった。まずは外形を鉛筆で下絵から取ると、ジグソーで外形を切り出した。
午前中にそこまで終わらせると、【昼食がてら、ドームハウス見学に行きましょう】とアンニカ親子が提案した。
ドームハウスというのは半球状の形状の家にことだ。阿蘇にはドームハウスをたくさん宿泊施設として利用できるファームランドがある。園内にレストランや入浴施設が併設されている。
愛さんをお宅に残して、僕たちはドームハウスが立ち並ぶファームランドまでドライブに出掛けた。半球状のドームハウスが300も立ち並ぶ光景は、まるで日本ではなく異国か別の惑星に来てしまったような感じがした。
僕とマリアは以前から、ドームハウスに興味があった。実際に見学させてもらうと、特にエネルギー効率が良いので、夏涼しく冬暖かく生活でき、音響が良いので楽器演奏や合唱をするにはうってつけだと知り、ますます興味がそそられた。
【将来はどこかでドームハウスを別荘として持つのも良いな】と僕は思った。出来れば小さなドームハウスをいくつか繋げ宿泊用に、大きなドームハウスは演奏と合唱をするのに活用してもらいたいと、空想が広がった。
園内にあるバイキング形式のレストランでは、肉と魚を食さないマリアでも、気楽に昼食を取ることが出来た。園内には入浴施設もあったので、僕たちはそこで入浴を済ませてから、愛さん宅に帰った。
午後遅くから、愛さんの指導の下で、子どもたちは丸ノミを扱うのも手慣れた様子でタオライアーを彫り始めた。
大人は夕食の支度をしていた。阿蘇の食材はどれもこれも生き生きとしているので、凝った料理にしないで、スープや蒸し物、サラダなど素材を活かした献立で十分だった。