もはや萌える気力もないのに『俺が考えた最強の推しカプ指輪』はオーダーしたい。

最近の女性向けジャンルはすぐにジュエリーを出してくる。
私の腐女子人生の終着駅となったジャンルもそうだったし、近隣のジャンルもそうだった。
私が見た中で最も感心したのは何年も前になるが刀剣乱舞の第一弾企画だ。
同一キャラクターのリングは同デザインでも客層を分け、本物志向の数十万円と、ちょっと奮発したファッションリング感覚の数万円。
地金も石も技術も最高レベルで、これは凄いと思った。
その一方で、良くてシルバー925や、更には真鍮、合金としか表記されていない地金で作った指輪をとんでもないぼったくり価格で販売するジャンルがあまりにも多いことに驚いた。驚愕を通り越してショックだった。
二次元に萌えるオタクは地金価格を知らんと思ってらっしゃる？？？生産数とコストの兼ね合いのレベルを超えてる。
どうせオタクは馬鹿だからキャラグッズなら盲目的に買うだろうという公式の舐めた態度が透けるどころか丸見えなのに、推しが人質にとられた時のオタクは命も財布もプライドも捨ててしまう弱い存在。ゆえに買った。
でも自分は弱いと同時に面倒くさいオタクでもあった。
そもそも公式が打ち出してくる推しと私のイメージする推しはカラーもモチーフも全然違う。公式はアッチのモチーフをプッシュするが、私の解釈ではコッチのモチーフが強い、みたいなことがかなりある。
バンバン発売される使いまわしイラストのブラインド商品にも物申したかったが、300均レベルの合金リングをこの価格で売ってくる神経にはいよいよ嫌気が差して、公式の解釈なぞ無視して自分が思う推しの指輪をセミオーダーしようかな、と考え始めた。
推し二人のリングを別々にオーダーするより、いっそ推しカプの指輪が一つあればいいのでは？
私が思う推し二人のイメージカラーを混ぜると明るい紫になる。
花でいうとライラックカラー…？
花言葉は…青春の思い出、恋の芽生え、無邪気、謙虚…？
駄目だ、推しカプ要素が微塵も無い。そんな良いもんじゃない。
ラベンダーカラーと考えたらどうだろう？花言葉は～…『疑惑』！いいね！花言葉『疑惑』の由来は「何故こんな小さい花がこうも強く香るのか？」という疑問から来ている？ファーーーーーいいね～～～～！！！

腐女子仲間でもあるリア友に「お前の創作活動は決して仲良くなれない二人をどうにか仲良くさせようと四苦八苦する保育園の先生のようだ」と評されたことがあるし、私自身磁石のN極同士、あるいは磁石と木材というくっつくはずがないものを屁理屈をこね回して溶接するのが大好きだ。
S極とN極のように放っておいてもくっつく関係より、私がどうにかせねばくっつかない存在が好きなのだ。
手間暇がかかるからこそ愛着が沸く…丁寧な暮らし…お上品な生活系雑誌で特集されるようなあの精神が好きなのだ。

刀剣乱舞ジュエリーの口コミの中で一番私が心を打たれたのは蜂須賀虎徹のリングだった。
「何十万円もするジュエリーなど買ったことはないが、私の推しが蜂須賀虎徹である以上、デザインは同じであろうと最高ランクの物を買わなければならない」的なことが書かれており、オタクの鏡すぎて震えた。
蜂須賀虎徹は贋作が多いことで有名な虎徹の真刀であり本人（本刀？）もそれを誇りに思っているキャラクター設定なのだ。
勿論、このレビューからは同デザインで低価格帯の商品やそれを購入する人に対する非難や蔑みは一切感じられない。
この人はただ、推しの蜂須賀虎徹に向き合った結果、最上級のもの以外は解釈違いだし、その解釈違いを防ぐために人生で一番大きなジュエリーの買い物に踏み切る勇気を出した――それだけのことだ。
何て無垢で真剣で切実でありながら誠実な推し活だろう。カッコいい。

翻って私は公式の解釈を拒否して自分だけのイメージリングを錬成しようとしている。私が欲しいのは推しカプのイメージリングだ。キャラクターの名前や記念日を刻印することも、公式が推すモチーフを組み込むこともないし、薄紫色は推し二人と何の関係もない。
何も知らない人が見たら、ただゴールドのリングに小さな紫の石がついていて、内側には英単語（何がいいか考え中。お守り的なのがいい）が刻印してあるだけの地味なアクセサリーでしかなく、私のいたジャンルを辿ることは不可能だろう。それでいい。私はそのくらいの低温グッズが欲しいのだ。
刻印に推しとは無関係の文字を入れたいのは、ぶっちゃけいつかは推しカプに飽きてしまうからだ。
今はまだ、こうやってnoteに記事を書いてしまうくらい推しカプに思い入れがあるが、いつかは彼らの存在すら意識しなくなる日が来る。
賞味期限が存在する『萌え』が消えた後も、ただの私好みの指輪として手元に残って欲しいんだよね…推しに寄せることを意識しすぎると、推しに飽きた時にそのリングも不用品になっちゃうのが怖いんだわ。公式の設定した推しカラー別に好きじゃないし…。
知らない人間が見ても決して私の推しを辿れない。
萌え尽きた後も推しとか無関係に身に着けていたい。
そんな自由でエターナルなリングが欲しいのです。