覚えてますか
いつも懐かしい音楽を聴かせてくださるゆき坊さん。
そんなゆき坊さんのnoteからは時に昭和のあれこれが溢れてきますね。そして昭和と言えば……
ある親子の会話
(モデルは長尾の親父さんと鷹征か?)
「東京オリンピックかぁ。まあ、まだ見れるかわからんが……まさか二度目の話を聞くとはなぁ」
そう言って、オヤジは懐かしむように目を細めた。
「オリンピックのために交通路の整備が大々的に行なわれて……都内の環状線はその時に作られてな。そのせいで、あの辺りに住んでた同級生は、皆、立ち退きでいなくなっちまった……どうしているんだろうなぁ……」
オヤジにとっての東京オリンピックは、華々しい記憶と共に少し寂しい記憶でもあったらしい。
この会話調のお話は、悠凜さんのお父さんの思い出を元に書かれています。
いろいろな思い出が溢れている昭和の東京オリンピックです。そして日本中が熱狂しました。
熱狂と言えば更に遡りますが、昭和11年のベルリンオリンピック。
女子水泳平泳ぎで見事に金メダルを取った前畑秀子さんですが、実況のアナウンサーは、実況も忘れてただただ応援。
「前畑がんばれ」を20回以上連呼していまいました。
真夜中のラジオを聴いていた多くの人達が大熱狂したそうです。
(↑さすがのわたしも生まれていない)
この音声は後にレコードにもなりましたが、今ならアナウンサーは、断固お叱りを受けていた事でしょうね。
ゆき坊さんからのリクエストで、ちょっとした昭和風情の一端を300〜500文字程度の4つのショートストーリーで思い出してみました。
また長尾の親父が出てくるかな^ - ^
『銭湯のお作法』の巻 悠凜作
「おい、銭湯行くぞ。男同士、裸の付き合いだ」
「あぁ?おれは裸の付き合いならオヤジより女の方が…」
「四の五の言ってねぇで行くぜ」
━引きずられて行く━
(籠に服を入れろってのか?鍵付じゃねぇのかよ)
「モタモタしてんじゃねぇ」
「あそこのおばさんから見えちまうじゃねぇか!」
「番台を気にしてどーする。ほら、とっとと脱げ!」
━脱がされて引きずられて行く━
「先に体流せよ」
「わかってるよ」
「あ"あ"〜やっぱ広くていいな」
「(濁音付で寛ぐなよ)…オヤジ。あのオッサン服着てるぜ?」
「ああ、あれは三助さんだ」
「三助?」
「頼めば背中を流してくれたりするんだ」
「へぇ」
「お、長尾の旦那!」
「おう、浸からせて貰ってるぜ」
「おれは女湯の方に行かなきゃならねぇんで…ゆっくりしてってくんな」
「ありがとよ」
「おいオヤジ!あの人、女湯まで行くのかよ!?」
「あったりめぇよ。待ってる姉さん方がいなさるんだ」
(マジか…)
「さ、あがるぜ」
━引っぱり出される━
「ほれ」
「何だ、これ?」
「決まってるじゃねぇか。風呂上がりと言やぁ牛乳よ。フルーツとコーヒーどっちだ?」
「(マジか…)…コーヒー」
「ほらよ」
腰に手を当て、オヤジは一気に飲み干した。
『それって何ですか?』の巻 翠作
「あ、ちょっとテレビまわしてちょうだい」
「まただ~おばあちゃん、テレビまわすって、画面を壁にむけるの⁉」
どうもこうも孫とおばあちゃんの会話というものは。
先だっても孫の可愛らしいキャミソールを『シミーズ』と言って慌てて誤魔化したおばあちゃん。
もとより孫は承知の上で、嫌味もご愛嬌。おばあちゃんが大好きだ。
「こんな時分から何処へお出かけかい?」
「明日学校休みだから、友達とカラオケ。おばあちゃんも今度行こうよ、演歌とかでもいいからさ!」
「演歌、演歌ねぇ~こう見えても昔はゴーゴーを踊ってたんだよ!」
「…… ゴーゴーって…… (^▽^;)」(ソレナンデスカ?)
目を白黒させている孫をしり目に、どっこいしょういちと腰を上げたおばあちゃんは、おじいちゃんのうわっぱりをえもんかけに掛けながら、やけにパンチのきいた鼻歌を歌い出していた。
『早回しは手動』の巻 悠凜
「何だ、この箱?ラッパが付いてる」
「ああ、そりゃ電畜だ」
「電畜?」
「電気式蓄音機…今風に言やレコードプレーヤーってのか?」
(…レコード自体が既に今風じゃねぇ気がするが…ま、いいか)
「ゼンマイを巻くとレコードが回るから、針を静かに落とすんだ」
「こうか?うおっ!音出た!このラッパ、スピーカーなのか!」
「そうだ。回転数はサイズによって違う…まあ、ゼンマイ仕掛けじゃどうせ速度は一定しねぇがな」
「早回しはどうすんだ?」
「出来るワケねぇだろ!…ああ、いや…手で針を動かしゃいいんだ。太い溝が切れ目だからな」
「へぇ…って、くそっ!どの溝かわかんなくなっちまった!」
「諦めて全部聴けや」
そう言ってオヤジが笑った。
『またやって来るよね』の巻 翠作
ねえ、ばんばひろふみの「いちご白書をもう一度」って歌を知ってる? そうそう、真夜中に谷村新司が天才秀才バカとかってやってて、ただ笑う役だけのばんばん。
この歌の中に「映画がまた来る」って歌詞があるの。
あのね、昭和の映画はロードショーの後にリバイバル上映が繰り返しあったのね。ポスターが貼りだされると、あ、また来るってね。
テレビじゃ無い大きなスクリーンで、何度も観た映画がわたしにはある。そう、忘れられない映画が「また来る」んだよ。
もっと大人になったらまた観ようねって約束もした。
「またやって来る」ものだった映画
観る度に少し変わった印象を持つ自分に寂しさを感じながら、大人になったんだよね、きっと。
おわり
さてさてあと2年で東京にオリンピックがまたやってきます。
わたし達庶民はどんな暮らしの中で、オリンピックを迎えるのでしょうか。楽しみですね。
おまけ
給食で出てくる食パンにバターが付いてくる。そのバターを塗ろうとすると、パンが削げでしまう。
ご飯など出た事がなく、楽しみは揚げパンだった日々。