仙界の果実
不老不死とやらは
戯言であっても恐ろしき事
不条理にまみれた我が肉と魂を晒してなんになる
仙界の果実よ
未来永劫をもたらす仙桃よ
西王母様
艶やかで
滑らかに白く光りを帯びる果肉を
手に口にしたいとは叶わぬか
王の子として生まれ落ち、何ひとつ不自由なく生きてきた王よ。
蟠桃宴が始まろうとするこの時に、三千年に一度実る仙桃に働いた無礼を何と心得る。
仙界の果実に毒を塗ったとは先刻より承知。これは西王母なる我が身が貶められたと同義。
其方は不老不死の恩恵を受ける筈であった。その上で、誰を殺めるつもりだったのだ。ここに毒の盛られた桃が三個ある。己こそがこの桃を食すがいい。
さあ王よ、如何に。
王は西王母を見据えたまま、悠然と三個の果実を口にして、そしてその唇を奪った。
艶やかで滑らかに白く光りを帯びる
あなたを手に口にしたいとは叶わぬか
ほとばしる悦楽に沈む事こそ本望なり
王の子として生まれ落ち
手足を縛られ
何ひとつ不自由なく生きてきた
我が望みはただひとつ
美しい方
どうか……
＊西王母 仙人界の女神的存在
＊武帝が西王母から貰った不老不死の桃を三個食したと言う説話からの個人的妄想
物語仕立ての散文詩として、神話部のお題「果実」へ参加します。
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