緑のふるさと協力隊を経験して~Voice9
この1年が与えてくれたもの
緑のふるさと協力隊としてこの村で過ごしたこの一年は、とても心が動いた一年だった。
嬉しさや達成感で涙が出そうになったり、これまで見たことのない景色に言葉が出なかったり、上手くできないことに悩んだり振り返って反省したりと、本当に多くのことを感じることができ、得るものも多かった。
一日一日が過ぎ去っていくのは早く感じていたが、約一年経った今では短かったとは思わない。
毎日新しいことだらけというわけではなかったが、日々の発見は多く、とても中身の詰まった一年になった。
そう感じることができているのも、本当に地域の方々に支えられていたからこそだと思う。
もともと人と関わったりすることは好きだったが、協力隊としてこの村に来て更に人と直接かかわること、人のことが大好きになった。
それでも一年を振り返ると、自分の認識の甘さ、思慮の足りなさが原因で起きてしまったことに悩んでいた時期もあった。
その時はいち早く声を掛けてくれて、話を聞き励ましてくれた人がいた。
その人とは、普段、お酒の場で会うことが多く、いつも冗談を言ったり、楽しい話ばかりをするような関係だったが、その時に思っていた以上に常に気にかけてもらっていたことに気づいた。
人のことや状況をしっかりみていて、自分で決めつけたりすることもなく話すときちんと理解してくれて、信じてくれるような人だとわかった。
これほど細やかに配慮ができて自分ではない誰かのことを考えられる所は、尊敬することができて、その方からは何度も元気をもらえたし、学ぶこともたくさんあった。
他にも、ちょっと前に話したことを覚えていて食べたいと言っていた料理を作って持ってきてくれたり、『少し疲れたような顔じゃないか?』と心配してくれたり、イベントなどの頑張り時の前に、必ず小さな差し入れをくれたりと、こんなにも気にかけてもらっている、ということ感動してしまうことが何度もあった。
土地柄なのか何なのか、そういう気配りや心遣いが自然にできる人がとても多かったように思う。それは私が協力隊として来ているから、という理由もあるとは思うが、住んでいる人たち同士の間でも、見えない小さな気遣いをたくさん感じた。
それはお互いのことをよく見ているからなのだと思う。
そういう間柄は、良い面ばかりだけではなく、時には悪い面が顔をのぞかせることもある。でも私にとっては温かく、居心地の良いこの村の空気感は、こういった人同士の関わりが産んでいるのだと思った。
この村にはかっこいい大人が多いという意見を聞いたことがあったが、最近になってその理由がとてもよく理解できると感じている。
「こういう人になりたい」という部分を持つ人とたくさん出会うことができた。
そういった人たちと出会えて、話を聞けたり、一緒に過ごせたりできたのは、これから先に必ず生かされてくると感じている。
人との出会いが与えてくれるもの、豊かにしてくれるものはとても大きいなと一年を通して感じていた。
協力隊としての活動が終わりに近づくにつれて、応募した時の気持ちや村に到着したばかりの頃を思い出すことがよくあった。
どんな一年間になるかはわからないけど、帰るときにはきっと大切な場所になっていて、寂しく思うのだろうと思っていたが、想像以上に大事にしたいもの、忘れたくないものが増えていた。
それは大きな発見から、毎日に散りばめられている小さなものまであって、残りの日が短くなるにつれて一つ一つがさらに大事に思えるようになっていった。
人として大きく変われたわけではなかったが、豊かにはなれたと思う。
考え方や感覚、物の見え方は、自分でも増えたと感じるし、地元の友人にも変化が伝わっていたようだった。人生の中でこの一年間は、あとから見ればとても短い時間だと思う。だけど、この一年間で自分の中に新しく増えたものは多かったし、これから先も持ち続けていたいと思う。
協力隊を終えて、どんなことをしていきたいかは具体的にはまだ決まっていない。まず今やってみたいことは、まだ見たことのない景色をたくさん見ていきたいということ。
それはまだ行ったことのない地に行きたいというもの含まれているが、まずは自分の地元の農村、山村をもっと知っていきたい。
1年前は全く知らなかったこの村のことを、こんなにも好きになることができたから、出身地であるがまだ知らないことや知らない場所だらけの地元について、もっと知っていきたいし、好きになっていきたい。
そこで知ることができた魅力を少しずつでも他の人に知ってもらって、好きになってもらえるような、そんな活動ができればいいなと考えている。
どういう形であれ、この一年間が私に与えてくれたものを大事にして、生かして、これから過ごしていきたい。