長芋

『育て、育ち、教え、教わる』 第18期 岩手県遠野市(旧宮守村)派遣

私は、協力隊の任期を終え、愛知県の農業高校で教員として働いています。

もともと果樹が専門の私ですが、今年度は畜産の担当で毎日生徒と一緒に汗を流しながら豚と鶏の世話をしています。

「君たちは若い!それだけで凄いパワーなんだよ!」

「農業ができるってかっこいいよ!」

なかなか夢や希望が持てない生徒に私はいつも声をかける。

これらは、私が協力隊時代に教えてもらったこと。

知恵や技術があるわけではない、ただ少し田舎に興味があっただけの私が協力隊として、地域で暮らし、ほんの少し、農作業のお手伝いをしたり、おじいちゃんおばあちゃんとおしゃべりしたり、伝統芸能をやってみたり。それだけなのになぜか歓迎され、感謝された。

神楽

私は協力隊を通して、若いパワーを必要としている地域がたくさん在ること知った。

農業高校の生徒だからといって、農業に興味のある生徒は少ない。

多くの生徒は、勉強が嫌いで、だけど、今の時代高校卒業の資格はとらないと…と「なんとなく」農業高校にくる。

それでもせっかく農業高校に入学したのだから、農業が大好きになってほしい!農業に誇りをもって卒業してほしい!と感じる。また、そのサポートをするのが教員だと思う。

農業の魅力は、頭と体と、心で植物や動物を育てることで自分自身が成長できることだ。植物や動物を見て、嗅いで、触れることで、『この植物水がほしいのかな』、『この豚病気になっているな』などを感覚的に把握し、行動する。自分以外の生命を感じ、育てることで自分自身の「思いやり」が育つ。こんなに素晴らしい勉強はほかにない。そのことを私は農業と生徒に教えてもらった。

芋ほり

私は協力隊を終え、派遣地へは一度しか足を運んでいない。時々それが息苦しくなる。

1年間お世話になったのに…でも今は、教員として若者に農業や田舎の魅力を発信することが私にできる遠野への恩返しでもあると考えるようになった。

いつか私の教え子が田舎や農業の分野で活躍してくれることを願って、生徒と農業を楽しみ、農業と田舎の魅力を伝え続けたい。

地球緑化センター機関紙『タマリスク』第113号p.9「ふるさとOBOG連載」より (2013年7月20日発行)

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