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ある人の美学

フランスのシャンソン歌手エディットピアフの曲で、邦題を『愛の讃歌』という歌があります。
日本では、日本語歌詞をつけたものを越路吹雪が歌ってヒットしましたが、原曲の歌詞とは全然違っていて、
美輪明宏さんは、ピアフの原曲の歌詞に忠実に訳した歌詞でお歌いになっています。
歌唱力も表現力も素晴らしく、
紅白のラストに歌って欲しい位の迫力で歌い上げていらっしゃいます。

私の恩師が亡くなってから、
もし一曲何か彼女に贈るとしたら、この曲をというのが、
カラオケではオハコでしたという理由でもありますが、
先程、どうしてこの歌なのか、意味がつながったので、書き記しておこうと思います。
ピアフの歌詞解説はこの動画を見て知りました。

先生は、関わった人なら誰の心にも残る昭和の銀幕スターの様な燻し銀のキャラクターで、こういう歌をカッコよく歌える人でもありました。

亡くなる少し前に、私と彼女の人生の中で共通の信仰というトピックで、大変ショッキングな出来事が有りまして、お互いその件について連絡を取り合うこともなく、ただ、その事をどう受け止め、どう解釈し、この先どう自分が心に折り合いをつけて進んでいくのか、自分で悩み、苦しんだ時期が有りました。
先生ならどうするだろう、
私はどうする?と、余程電話をかけて話をしたかった時でしたが、自分の心が中々ちゃんと立て直せず、グラグラした状態で誰とも話をしたくなかったというのが正直な気持ちです。
先生は、このことがあって二週間ほどで亡くなったわけですが、亡くなる少し前、私と話をしたいと、よく口にしていたと、息子さんから後で聞きました。先生も苦しんでいたと、娘さんも。
やはり、あの時会いに行けば良かった。
あのことがなかったら…きっと、もう少し長生きされたのではないかと、あれは、ショックから来る生きる意欲を失ったせいではないだろうかと、私は密かに思っていました。前の日まで普通に元気で、
お盆前にお墓に灯籠を立ててまわって、その後の熱中症だったかもしれない、自宅のトイレで倒れて、救急車で運ばれ、意識を失ったまま、翌日に病院で息を引き取ったということでした。

越路吹雪の『愛の讃歌』は、愛し合う二人の幸せな歌かも知れませんが、ピアフが作った詩は、そんな歌では有りませんでした。
私が仏壇の前で手を合わせて、東京に帰ってきてからというもの、先生のことが頭から離れません。
そして、メッセージがこの歌の中に有りました。
ピアノで弾いていると、胸に迫るものがあり、涙で楽譜が見えなくなります。
先生にとっての解決、折り合いは、神と一つになること、つまり青い空に帰りどんな問題も関係のない宇宙(ほし)の世界に行くこと、愛する人と愛する人が一つになれる世界に行くこと…でした。
どんなに世間から嘲笑をうけようとも、背徳もあなたがそうしろというなら、私はそうするだろう、なぜならあなたは神で、神であるあなたがそんな事を言うわけはないのだけど、私はあなたがそうしろと言うならどんな事だって厭わない。そんな強い歌詞です。
この歌詞の内容を知った時、フランス人の感性は、彼女に合うのだろうと思いました。
あなたと私が人生の中で別れる運命でも、そんな事は構わない、私も死ぬのだから。死んだら一つになるのだから。

それほどまでに孤高で天晴れな人生。

事業のことも、自分の子供達のことも、孫のことも、どれほど心を平らかにする為にはこの信仰心が必要不可欠で、なければ生きられなかったのだと、私は思います。

個になりきったら、universeに戻れたんだという
つまり
真理はあるが、見ること悟る事を許されないのが宇宙法則なのだという論証かも知れません。

4人の子供が、この先どう生きてどんな人生で、喜びや苦しみ、困難や功労を経験するのか、もう関係のない所へあなたは行ってしまわれましたね。ただ、私はどうしても気になってしまいます。私にできる事はないのかと。

ただ、あなたの功績が一つの花となって後に残るものにとっての形となりました。
天皇陛下から授与された紫綬褒章です。
私はあなたから受けた恩を思うと、まだ当分この世に残されたまま生きる者として、あなたに、今もし届くなら届けたい想いに打ちひしがれています。

子供達4人が、それぞれあなたの意匠を継いで、というより、あなたの功績の恩恵の中でこれからはあなたの意思とは関係なくお好きな様に自由にやりたい様に、それぞれの人生を頑張っていかれることでしょう。

私は自分の中に流れるあなたの音楽の血が何よりの遺産です。いくら消そうとしても、強く色濃く残るあなたの香りが私のピアノの中に現れてしまいます…そしてあなたから紹介されて、私を託したもう1人の恩師の香りも一緒になって、今の私が出来てるんだと感じずにはいられません。
どうしても似てしまうんです。お二人に。自分ではわからなかったけど、私のピアノを聴かせると親がそう言います。どちらにも似ていると。
でもやっぱり、最初に習った先生の影響はより強く、性格までも似ています。それは、あなたの子供達がそう言います。
家族だ、兄弟だと私のことを言うくせに、私を遠ざけようとするあの人たちはなんなんでしょうか。まるで私があの人たちの事業に参入してくるのを恐れ拒んでいるようです。笑 おかしいですよね。ありえない。
あなたがいくらそれを望んでおられたのだとしても、私には残された時間は自分の体が持ち堪える限り、もっと上手に弾けるようになりたいという願いしかありませんから、心配しないでください。あなた達の事業になんて興味ないんです。

寂しい時不安な時抱きしめてくれる親でもなかったし、そんな時あなたがそばに置いてくれたことが、私の支えでした。あなたのカッコいい人生に、あなたの車に、あなたの衣装に、あなたの音楽に、あなたの家に、あなたの子供達に、あなたの人生に、私を少しでも招き入れてくださったことを、誇りに感じます。

追悼ソング、ピアフ、練習しなければ!

私の心の中にはもう少し平坦で穏やかな音楽が本当は流れているのにも関わらず、自分が弾く音楽は、ドラマティカルで情熱的なものの方が合っています。

皆様には、こちらの穏やかな方の音楽をこの記事の終わりに添えておきたいと思います。





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