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日記②心に引っかかる詩

村上春樹を初めて読んだのは高校生の時でした。
図書館で目に止まった「アフターダーク」の背表紙は今でもはっきり思い出せます。

彼の長編小説は少し苦手で、物語に入り込める体力や付き合うメンタリティは当時からあまりなく、短編小説やエッセイをよく読んできました。

独特のドライな文体はあっさりと短時間で読めるほうが私には合っていたのだと思います。

こちらの詩は村上春樹がオウム真理教の信者にインタビューをしてまとめた書籍、「約束された場所で」の冒頭に引用されたものです。

マークストランドの詩がエピグラフとして使われています。
もちろん村上春樹の日本語訳です。

ここは、私が眠りについたときに約束された場所だ。
目覚めているときには奪い去られていた場所だ。
ここは誰にも知られていない場所だ。
ここでは、船や星々の名前は、手の届かぬところへと漂い離れていく。
山々はもう山ではなく、太陽はもう太陽ではない。
どんなものであったかも、だんだん思い出せなくなっていく。
私は自分を見る、私の額の上に暗闇の輝きを見る。
かつて私は欠けることなく、かつて私は若かった…。
それが今は大事なことのように思えるし、私の声はあなたの声に届きそうに思える。
そしてこの場所の風雨は、いつまでも収まりそうにない。

(村上春樹「約束された場所で」冒頭より マーク・ストランド 「一人の老人が自らの死の中で目覚める」)

1行目の This is the place that was promised=「約束された場所」という訳で本のタイトルに使用されているんですね。

この詩が気に入り、最初に読んでから10年以上月日が過ぎても思い出すことがあります。

この作家さんが気になりマークストランドの本を1冊買いました。
「犬の人生」という本です。
すごく不思議な本で、何だか掴みどころのない腑に落ちないない物語です。

わかりやすい意味を持たない、言葉に意味を持たせない、分かりやすく説明しない。
でも言葉や筋道に絶対性を感じる、美しさがあるというのは、
私が好きな物語に共通している気がします。


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