第1期桜蕾戦のベスト8A卓~JUNのミド活ヒストリー⑥

2021年3月22日

さかえ松戸で夏目翠プロと”二度目まして”をした翌日、第1期桜蕾戦のベスト8A卓に翠プロは挑まれた。
 
対戦相手は、内田みこプロ、香野蘭プロ、そして中田花奈プロ。

 対戦前のインタビューから私のテンションは上がりまくり。何しろ、つい昨日お会いして一緒に麻雀を打たせていただいた夏目翠プロがスマホの画面の向こうにおられる。

解説の大和プロから「対局前に取材させていただいて、内田プロを警戒しているとおっしゃってましたが。」と振られて、苦笑いしながら「警戒しているっていうのはちょっと…」と訂正を入れられた翠プロ。

このインタビューは夏目翠プロのお人柄をよく理解している今の私にはとっても頷ける切り返し。
三人いる相手でいくら他のお二人がプロでの経験がほとんどない人であったとしても、自分ではない一人を「警戒している」と言われたら後のお二人はいい気持ちはしないだろう。
夏目翠プロがそういう対戦相手への気遣いができる人であることは、これ以降も何度も目にしてきた。
このnoteを書くに当たって対局を見直してみて改めて、緊張した対局の直前でもそれが出来る翠プロを本当に尊敬する。
 
そんな翠プロの“お見立て”の答え合わせをするように、1回戦、2回戦と内田プロが連勝を飾る。その中で翠プロは1回戦こそラスを引いたが、2回戦は食らいついて2着を死守した。

3回戦はラス親の翠プロがトップの香野プロを追う展開。トータル暫定トップの内田プロがラスに沈んでいる展開もありここは是が非でもトップを取りたい翠プロは、7巡目に3、5、7筒のリャンカン形から3筒を切りドラの7筒を使い切って表示牌の6筒待ちのリーチ。

恐らくこの形からのリーチは読まれていることは百も承知で他家から出ることは期待していない。ひょっこりツモれたらラッキーだし、上がれず流局でも親の連チャンは継続するので相手を抑え込む意味もある。ところが、貯金のある内田プロが自身で9筒を切って6筒が中筋となり、3巡後にテンパイしてその6筒を打って夏目翠プロの上がり。供託棒もありこの3回戦をトップとした。

最終4回戦を迎えて夏目翠プロはトータル2番手。3回戦でラスを引いたとは言え内田プロは抜けたトップで実情残りの3人での勝ち上がり争い。当然、翠プロが他の二人のターゲットになる。何とか自力で加点して2番手を死守したい所だったが、手が入らず苦しい形で南場の親も失ってしまう。 

南四局を迎えたポイント状況はこんな感じ。ラス親は暫定トップの内田プロなのでまずこの一局で牌が伏せられるだろう。そんな翠プロの勝ち上がり条件は、三倍満ツモ上がり、出上がりなら内田プロからは三倍満、他の二人からは倍満というかなり難しい状態。

配牌はこんな感じ。第1ツモの六萬を切り飛ばす。翠プロの見ている一本道は条件を満たす国士無双。だがまだ7シャンテン。苦しい。 

更に苦しいことに、僅か3巡目で香野プロからピンフドラ1の五八索待ちのリーチが入る。しかし、2番手浮上には一発かツモ、もしくは裏ドラ1枚の条件が付きつけられている香野プロも実は苦しい。早い巡目で出た場合、ツモにかけて見逃しまである。

そんな中で翠プロは前だけを見て細い細い道を綱渡りをするように手を入れていく。香野プロもツモれないし当たり牌も出ない。そして迎えた流局間際の15巡目。とうとう西を引き込んで国士無双東待ちのテンパイをいれる夏目翠プロ。

山にはあと1枚の東。実況の大和プロも「東!東!東!」とテンション高く三連呼して解説の藤崎プロに諫められる場面も。
そしてとうとう、国士テンパイから1巡後に対局は決着する。 

夏目翠プロがツモってきたのは香野プロの当たり牌八索。翠プロの最も好きな牌である八索がこの時は痛恨の打ち込みとなってしまった。
ところが、香野プロの上がりに裏ドラは乗らずに、勝ち上がりは内田プロと中田プロの両名となった。 

フッと力が抜けた瞬間私の目には涙が溢れた。勝ち上がれなかった悔しさは1。後の9は最後まで諦めない姿を見せてくれたことへのうれしさだった。 

対局後のインタビューでの夏目翠プロはやり切ったすがすがしい笑顔だった。最後の逆転手について聞かれた時も上がれなかったという結果よりも、諦めない姿勢を見せられたことを語っておられた。藤崎プロからは、連盟の試験の時の話も出た。そして藤崎プロから「素晴らしい対局を見せてくれてありがとう!」と言われた時に翠プロの涙腺がかすかに緩んだように思った。 

私は翠プロは「人前では絶対に泣かない」という強い意志を持っている人のように思っている。しかし、対局終了が午前0時を回り、終電を逃したタクシーでの翠プロのポストにはこんなことが書かれてあった。 

私は、3か月前の「プロNo1決定戦」の時のことを思い出していた。あの時、立ち向かう姿勢を放棄してしまった弱さはもう一切なかった。この決定戦について書いたnoteでも触れたけれど、あの時の悔しさがこの日、誰もが心が折れそうな展開にも向かっていく姿勢を私たちに見せてくれたのではないかと思う。 

夏目翠プロのファンになって本当によかった。 

ミドレンジャーであることが誇らしかった。 

きっとこんなに素晴らしい麻雀を見せられたらますます夏目翠プロのファンは増えるだろうなぁ。 そう思った時、そんな今回翠プロに魅せられた新しいファンがリアルに翠プロと繋がっていける場は何だろう?と考えた。 

この日、翠プロが真っすぐ一本の道を突き進まれたように、私の前にも一本の道が開けた気がした。
でも、私が頭で考えたことはそんなに簡単に進むものではなかった。