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マリベルのはなし。

何か書いてみてようと思う。

何がいいだろう。過去のこと?
過去のことは鉄板ネタだよね。じゃあ過去のことで。

過去といってもいつ?じゃあ小学生かな。

小学生のころって何してたんだろ?まぁだいたいゲームだわな。

何のゲームしてた?テリワンが多かったね。というかドラクエばっかだったかな。
ポケモンもやったしメダロットもやったけど、やっぱりドラクエの印象が大きい。

特にドラクエ7。だいぶやりこんだし。
マリベル以外のレベルを99にした。
あと、マリベル以外は人間職もすべてマスターした。


マリベル以外。


マリベルのことが嫌いなわけではなかった

・・・と思う。多分。


じゃあなんでそんないじめのようなことをしたかといえば、特に理由はない。

しいて言うなら、単純にマリベルが途中離脱をしたからだ。マリベルが途中でパーティーから抜けたのが悪い。

そして、あえてマリベルのことを迎えに行く理由がなかった。性格もアイラの方が好きだったし。

今ならまだ多少はマリベルのツンデレの魅力もわかるけど、当時はまったくわからなかった。


「遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ」


そう言って立ち去る彼女のセリフに

「何コイツ性格悪っ!」

としか思えなかった。


でも今ならわかる。

あれは不安を隠すための防衛本能から出た言葉なのだ。多分。

大人になった今の私がそんなことを言っている。

謎の神殿の謎を解いていって
開かれた空間で謎の石板をはめると、
突然今までいた場所とは
まったく違う景色ところに飛ばされたのだ。

そんなの怖いに決まってる。

「どうしてこうなった?」と頭の中はパニック状態。

でもそんなパニックになってるところなんて見られたくない。


だから。

自分の精神状態を
落ち着かせるためには
外部に悪の原因を作る必要があって。


それは

「主人公たちが変なことをしたからだ!」

という攻撃思考となって体現された。


その結果が

「遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ」

なのだ。


あそこで
あの言葉が出てくるのは、
性格が悪いからではない。

ただただ、怖かっただけなのだ。


だから、
それでマリベルのことを嫌うのはかわいそうである。

でも幼き日の私は、
別にこういうマリベルのひねくれた発言で
マリベルのことを嫌いになっていたわけではない。

そもそも別に嫌いでもなかったわけだし。

なんだろう。

ただ単純に「興味がなかった」だけなんだと思う。


…違うか。

登場人物としてどうこうを考える以前に、
戦闘員として「使えない」と判断していた節があるのかもしれない。

多くの人がそうだと思うけど、
ダーマ神殿で転職ができるようになった際、
私はマリベルを魔法使いにした。

魔法使い→僧侶ときて、
上位職の賢者を目指す魔法職ルートだ。

職業を持つ前のマリベルは
魔法職の色が濃いステータスと呪文を持っていた。

だから、
プレイヤーはマリベルのことを無意識に
「魔法使い」だと認識するような構造になっていた。

私は素直でかわいい子どもだったから、
そこでは反骨精神を発揮せず、
素直に魔法使いルートを選んだのだ。

まったく、素直でかわいい子どもである。

ちなみにいっておくと、

私は今でも素直でかわいい。



で、だ。

今のドラクエはそんなことはないが、
かつてのドラクエは呪文が弱かった。

というよりは、
呪文の威力にステータスが関係なかった。

呪文ごとに与えるダメージ量がある程度決まっていたのだ。

だから、
キャラのレベルが上がるにつれ、
敵のHPが上がるにつれて、
相対的に呪文の威力は低くなった。

「呪文を唱えるくらいなら物理で殴れ」というのがセオリーだった。

さらには、
物理攻撃には「バイキルト」という
攻撃力を2倍にする補助呪文があったのに、
魔法には威力を高める補助技がなかった。

ダメ押しとして、
呪文は当然MPを消費するのに、
近い効果を持つ特技は
MPを消費しないものが多かった。

結果、
ドラクエ7では、
魔法職は物語後編に進んでいくにつれて、
どんどんどんどん肩身が狭くなっていくポジションだったのだ。
(個人的な見解です)


マリベルは
ゲーム制作者の巧みな誘導によって、
魔法職の地位を確立するも、
物理偏重のドラクエ7の仕様上、
どんどん存在感をなくしていったのである。


幼き日の私はこう思った。


「マリベルつかえねーな」と。

まったく、素直でかわいい子である。



そこにきての、
マリベルの離脱。


正直いって、「どうでもいい」。


それに比べ、
頼りになりすぎるエース・キーファが
パーティーから抜けてしまったときの喪失感は、
とてつもなかった。

キーファの
たくましい腕から放たれるかえんぎりに、
どれだけ救われてきたか…。

キーファがいなかったら、少なくとも
あの恐怖のからくり兵どもとは
まともに戦うことはできなかった。

めちゃくちゃ頼りになる、ハートの熱い兄貴分…。

それがキーファだった。



それなのに。

突然キーファが
パーティーから抜けてしまったときの、
幼き日の私を襲った悲しみと不安。


母親について行ったデパートで調子にのった結果、婦人服売り場で母親を見失ったときのような心細さがそこにはあった。

「その先大丈夫なのだろうか…」

言いようもない不安が腹の底からわきあがってきた。



しかし、だ。

マリベルが離脱した際は、そんな心細さは一切なくて。

元々外れかけていた、
コートの一番下のボタンがついに取れた。

あった方がいいけど、なくても大して困らない。


そんな感じ。


薄情だなぁ…とは思う。

しかし、小学生男子なんてそんなものだろう。

まったく、素直でかわいい子である。


そして。

言ってしまえば、
マリベルとお別れした後に加入してくるアイラさん。

彼女の存在がまた、
マリベルとの別れを一層希薄にした。

アイラは頼れる女剣士。

物理偏重型の
ドラクエ7のシステムに合ったステータスに加え、
これまではマリベルしか装備できなかった女性ものの装備も活かせるハイスペック。

おまけに性格もいい。

ついでに彼女は頼れる兄貴分・キーファの子孫だったりする。



・・・。


うん。マリベルはお役御免でしょ。

もうこれはそうなってしかるべきでしょ。



というか、ここまで書いてきて思った。


シナリオライターさん、
マリベルのこと嫌いじゃね?


例えばこれが恋愛漫画なら、
途中から出てくるスペックも性格もいいライバルさんは、完全にかませ犬ポジション。

たとえ
スペックが劣ってようが、
性格に難があろうが、
初期から登場しているメインヒロインに軍配が上がる。

そういう風に、できている。

だから不憫なのは
むしろかませ犬ポジションとなるアイラさんで、
間違ってもマリベルではない。



ただし。

ドラクエ7は恋愛漫画ではなかった。



ということはつまり、
初期から共に冒険してきた背景はあるものの、
性能では完全に劣るマリベルが、
アイラさんに勝てるはずもなく。

私の世界のマリベルは、
レベル28のまま成長することなく、
フィッシュベルの自室で
その生涯を終えることになってしまったのだった…。




時は過ぎ、2013年。

10年以上の時を経て
ドラクエ7のリメイクが発売された。

PS版のオリジナルをプレイした当時小学生だった私は、大学生になっていた。

12年という歳月と多感な学生生活を経験し、だいぶ大人に近づいた。


そんな大学生の私が、
再びドラクエ7の世界へ旅立った。

大学生にもなると、
ゲームの楽しみ方にも深みが出ていて、
ゲームシステムそのものを楽しみつつも、
どちらかというと物語の内容を楽しんでいたように思う。

つまり、
大学生になった私には
「マリベルの使えなさ」は
さほど重要ではなくなっていた
のだ。




では、「マリベルはレベル29以上の世界を見られたのか」といえば、



答えは「覚えてない」だ。




物語を楽しむことをメインとなっていたため、
昔ほどゲームシステムへの関心がなくなっていた。

結果、
自分がどういう状態でプレイを終えたのか、
まったく覚えていない。


いや、
さすがに全クリはしたはずで、
やりこみ要素も一通りはこなしたはずだ。

私はそういうタイプだから。



でも。


今回の話の核となるマリベルに関しては、正直全く覚えていない。


いや、

マリベルだけでない。

アイラのことも、ガボのことも、メルビンのことも、リメイク版の記憶がほとんどない。

思い出すのはいつもPS版の方だけだ。



つまりこの話は、

「小学生の私は表面的なものの見た方しかできなかった→マリベルに興味がなかった」

↓↓↓ところから、10年以上の時を経て、

「大学生となった私は物語的にゲームを楽しむようになった→マリベルの気持ちがわかった」

という成長物語


には、なり損ねたのである。





なんてこったい。


私は自らの成長を、
ドラクエ7というフィルターを通して
伝えたかったのではなかったのか。

無意識なりに
そんなキレイなゴールへ向かって
歩みを進めていたわけではなかったのか。

事前に何も考えることなく手を動かし始め、
順調に動き始めた指のおもむくままにタイピングを続けていった先。

その先にあったのは、
「成長した私」でも「報われたマリベル」でもなく、期待させておいて裏切られただけの

「結局かわいそうなマリベル」だけだったのである。

ごめんて。



あれれ?

こんなはずじゃなかったのに。

なんかいい話になる予定だったのに。



人生、なかなか思い通りにはいかないものですなぁ。

だからこそ、おもしろいんですよね。




と。

話に収拾がつかなくなったときによく使う、安易な総論で締めさせていただきます。




今のあなたの気持ちを当てましょうか。



「私の時間を返して!」


でしょ?



ごめんね?

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