人間椅子
恋人に貸していた
「江戸川乱歩傑作選」が返ってきた。
中学生か高校生の時に
映像作家 シュヴァンクマイエルのコラージュ作品の展示を見に行った時に
乱歩の「人間椅子」を題材にしたコラージュがあって
気になって小説を読み始めたらはまってしまった。
怖いのは苦手なのに つい読めてしまう。
100年以上前に生まれた人が書いているけど
文体も読みやすい。
人間椅子は椅子職人が自作の椅子に仕掛けをつくって
中に入って身を潜め、椅子と一体化することで
新たな性癖のようなものを開拓してしまう話だが、
わたしも椅子ではないにしろ自身の彫刻作品の中に入り込んで
身を潜めながら野外で一晩過ごしたことがある。
ちょうど体操座りをした状態でぴったり入れて、
入ってしまうと外からは中に人がいることが全く分からない。
中からは小さい隙間から少しだけ外が見える。
でも夜中だから辺りは真っ暗。
わたしの体は作品や地面と一体化してしまい、
空間にとけてしまっているようで
自分が消えていくようで
胸がざわざわしつつも
とても静かなシンとした気持ちになれた。
これはまさに「人間椅子」
「ただもう、その不思議な感触の世界に惑溺してしまったのでございます。」
久々に読み返し、自身の体験とのシンクロに気づいて
あの時の感覚も思い起こされる。
たまには人間椅子を読んで
このイメージを忘れないでいたい。
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