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前程万里「赤い鬼」
location:黒井城(保月城)
plus code:54G2+79 丹波市、兵庫県
明日は天気が良さそうだから登山しようか…
僕は急に思いつき相方に切り出すと
いつものように笑顔で即答してくれた
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「黒井城」
丹波市春日町黒井にある城山で標高356m
地元の人がハイキングコースとしても登る山
僕らは丹波春日に移住してから
初めて春日の山を登ることになる
チチチ…ピィ…ィィィ…
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小鳥の声が辺りに響き渡る
そしてまさかの登り口には熊出没の標識
低山でも舐めてかかったら怪我をするぞ…
そう言い聞かして緩んでいた気を引き締め直した
ザッザッ…
中腹までくると赤門がありそこを潜ると
石踏の段と呼ばれる曲輪(くるわ)がある
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僕は何気なく門を潜った後にふと思った
その昔この場所でそれぞれの大義のため戦い
道半ば命を落とした兵士も沢山いた
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ワァァ…ァァァァ…キィッン…ザシュッ…
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そんな戦国の世が実際に丹波春日でもあり
今では僕はそこに住みその山を登っている
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歴史を考えると深く捉え過ぎてしまい足取りが重くなる
こんな平和ボケしていていいのだろうか…
結局今の世の中も戦国時代
いや人間が存在してからずっとだろう
そんな事を考えると全く足が進まなくなったので
気を取り直し山頂まで一気に駆け上がった
頂上は国指定史跡の黒井城跡で
この山自体が巨大な要塞のように見えた
ここから見える丹波の景色は山で入り組んでおり
敵も攻めにくかったと考察できる
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黒井城の歴史は古く南北朝時代(1334年〜1336年)に築かれた
戦国時代(1554年)の城主は丹波春日では有名な赤井(荻野)直正
通称は悪右衛門とも呼ばれている
また赤井直正はあの織田信長の重臣明智光秀軍を破ったこともあり
戦国の武将で丹波国に勢力を誇った豪族
「丹波の赤鬼」
僕らが歴史や存在を知らないだけで
各地域に土着の神仏や武将などが祀られており
鬼という名をあてられる事が多いような気がする
鬼や悪は強いという意味もあるし
歴史上の敗者も鬼にされるのは有名だ
昔からこれらの言葉は必ず出てくるが
僕らが本当に知るべき歴史はこれらではないのか
また城の名前は保月城とも呼ばれているが
その名の如く城から見える月は美しかったはずだ
一族を反映させその月をこの城で永遠に見続けたい
そんな想いもあったかもしれない
鬼にも感情があり涙する
「鬼の目にも涙」
その大粒の涙が落ちてできた波紋は時代を超え
僕らの鬼の記憶に語りかけているのかもしれない
……ポツン……
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