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私ヒーローになりました✌️




皆さんこんにちは、ヒーローです。



皆さんも一回は妄想したであろう、
街中や電車の中、学校等の生活圏で
困っている人に対して周りの人間より
いち早く反応し対応して、

すごいあの人!スマートでカッコいい!

てな具合に、ヒーローになるという事を。


それになりました!祝
お赤飯!!

舞台は通勤ラッシュが終わりそうな時間の
そこそこ満員電車の中である。

そこそこの満員電車の中、
私は扉の前に立ち
電車に揺られていた。

そして次の駅に着く。

こちら側の扉が開くとアナウンスがあり、
降りる人がいるのであるなら、
扉が開いたと同時に外に出ようと思っていた。

駅に電車が到着し、扉が開いた。

しかし、電車内の乗客が降りようとする
動きはなく誰も降りなかった。


は、はaぁ〜〜〜〜ん!!なるほどね!!!



は?何が?


と思ったそこの貴方。

間違ってないよ、自信持って。


何故、列車から人が降りなかっただけで
私の脳裏に三流アニメの主人公探偵の様な
セリフが駆け巡ったかというと、

到着した駅で、そこそこの満員電車に
乗車しようと並んでいる唯一の乗客が
ベビーカーを押すママさん
であったからである。


よく朝の通勤ラッシュで
ベビーカーを押して乗車しようとして
何でこの時間にそんな幅を取る
エンジンついてないのにカーとかいう
乗り物を、乗り物に乗せるんだよ!
と憤慨している心一畳半人間を
電車内やネットで散見するが、
私はそうではない。


もちろん、世の中のママだって
満員電車の中に特攻隊よろしくベビーカーを
突入させたくてさせている訳ではない。

それでも我が子を連れて
満員電車に乗って移動しなくては
いけない理由があるのである。


そして、そのベビーカーを押して
電車に乗ろうとしてるママさんは
こんな時間に申し訳ありません。涙
皆様に迷惑をかけてしまっているのは
重々承知です。涙
という言葉が顔面から噴き出ていたし、
とにかくペコペコしていた。


はい。俺の出番です。


扉の前に立っている私が率先して
受け入れる対応をすれば、
周りに伝染し、ママさんが少しでも
感じる必要のない罪悪感を抱かずに
済むのではないかと考えた。
ヒーローへの第一歩。
ヒーローの種の発芽である。



しかし、ここで問題が発生する。


こういった時、私は

「あれ?声帯奪われた?」

ってくらい声をかけられない。

この状況でも
「あ、ベビーカー僕乗せましょうか?(ドヤッ)」
とか
「スペースあけますね(ニコッ)」
やら
「ペコペコしなくて大丈夫ですよ(キラッ)」
等々とお声かけすれば良いものを
実際には、
「(あ、う、、どうしよ、話かけ、あ、)」
と心の中でも挙動不審になっていた。

しかし、言葉がなくても行動で示せば良い。

Yes, I can!!


心の中で自分目線のみのバラクオバマが
出たところで私は即行動に移した。

まずヒーローである私は、
一発目に必殺技を繰り出した。
ベビーカーを乗せようとしている、
必要のない罪悪感を抱いて
ペコペコしているママさんより
私の方がペコペコしてみせるという技だ。


周りの日本経済を支えている方々に
え、お前のベビーカーと赤ん坊だっけ?
って思わせるくらいのペコペコ具合である

ペコペコペコペコペコペコ、
すいません、ペコペコペコペコペコペコ。
ペコペコペコペコペコペコ、
あ、あの、ペコペコペコペコペコペコ
ペコペコペコペコ

私の渾身の必殺技を繰り出したところで
顔を上げ、周りを見ると
サラリーマンの方たちが想定以上に
詰めてくれてベビーカー1台とママさん
1人が入れるスペースを前に確保できた。


それに加え、サラリーマンの方たちの顔から
全くイラつきや不愉快を感じなかった。
むしろ皆んな、私の様にそれぞれが
ママさんに可能な限り罪悪感を抱かせないようにしておる様に見えた。



ファンキーモンキーベイビーズの言う通り。
みんなヒーローだった。

そして私を先頭にヒーローの満員電車と
化した電車に、赤ん坊の乗ってるベビーカー1台とママさんが乗り込む事ができた。

後ろを振り返った訳ではないが
ヒーローたちもそれぞれの良い顔をしていたに
違いないだろう、
そしてママさんも安堵感と感謝で一杯と
言わんばかりの顔していた。

皆がドラマの様な派手さは無いが
リアルな生活における気の遣い合いで
ドラマでの創作から出来上がるハッピーエンドよりも、リアルで生々しさのある素敵な空間が
出来上がった。



私の足を、
ベビーカーのタイヤが
踏んでいた事以外は。



赤ん坊並みに泣けるくらい痛かった。


しかも、まぁまぁお金ある方の家なのか
重量感のあるタイヤ太めのベビーカーで
しっかりと私の右足を踏みつけてくれてた。


しかし、ここで私が
「踏んでるんですけど?」といった発言や
痛いなぁ的な素振りを見せ足を払うと
ヒーローの中に弱目のヒールが誕生してしまう
(足の話でヒールはややこしい)

この協調性が保たれた電車内に
無駄な緊張感は生む必要がない。
私はベビーカーが降りるまで耐える事にした。


なかなか降りなかった。


20分ほど重厚感のあるベビーカーに
足を踏まれる事を経験した。

そしてベビーカーを押したママさんが
次に到着する駅で降りそうな動きを見せた。


やっと私の右足が解放される。

ママさんは周りにペコペコしながら
降りる準備をしている。
どこまでも気を遣える女性なのだろう。

電車が駅に進入し、扉が開く。
そのママさんは最後の最後まで
他の皆さんに迷惑かけまいと、
凄まじいスピードでベビーカーを反転させた。


私は右足が千切れたかと思った。


Uターン並みのカーブを旋回するF1マシンの
ごとくベビーカーを回した。

その反動で私の右足に乗っていたタイヤは
火花散らした?くらい私の右足を擦り上げた。

これには流石に、
それまで痛みに耐えていた私も


「ニュァyaっ!!!」


という猫とウルトラマンが混ざったような
呻き声を出してしまった。



その呻き声は電車やホームの雑踏で
誰に届くこともなかった。

それで良かった。

電車からホームにベビーカーを降ろそうと
しているママさんの事を、
電車を待ち並んでいたサラリーマン達が
助けてあげていた。

また新たなヒーロー達が満員電車に乗ってくる。


私の右足が犠牲になるくらいで
優しい世界を作った人たちと
それに恩恵を受ける人が
必要のない気持ちを抱かずに生活を
送れるならいくらでも私は犠牲になれる。


本物のヒーローの出来上がり。


私も目的地の駅に着き、

「右足は痛くてビッコ引いてあるいてるけど、
素敵な空間だったな、、(ポッ)」

と思いながら歩いて改札にSuicaをかざすと、

「お前だけは絶対通さないぞ!」
と言わんばかりの勢いでバタンと改札のゲートが私の左膝を直撃した。

「ワンyaっ!!!」

と犬とウルトラマンが混ざった呻き声を
今度はあげてしまった。


「え?なんで?」と思いながら
窓口に向かい駅員さんに対応求めたら


全力でキセルを疑われた。

軽い取り調べって思うくらい色々高圧的に聞かれた。怖かったし左膝と右足痛かった。


絶対にあのJR職員の格好をした悪者だけは
許さない。いつか俺が倒す。











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