【ネタバレあり】クレヨンしんちゃんオラたちの恐竜日記感想

どんな映画になるのか気になりながら観進めて、主題と思われる点が提示されて以降から内容がスルスル入ってくる気持ちいい作品だった。

私が今作の主題と感じたのは、ひろしが中盤に言った「親の見てないところで子供はたくさん考えて成長していく」という点だと感じた。
この作品には親子やそれに準ずる関係性がたくさん出てくる。“準ずる”についてはビリーとナナはもちろん、シロとナナ、しんちゃんとシロも該当していて、シロとナナについてはセリフはなくとも回想や表情、行動で感情を上手に表現できていたと思う。

バブルに対するアンジェラとビリーは親から離れなかった世界と離れた世界の対比になっているんだけど、アンジェラがなぜ父を信じたかったのかを回想によって見せてくれたのは良かった。優しかった父が変化していく様を表現することで離れたくなかったアンジェラの気持ちと離れてしまったビリーの気持ちがそれぞれ感じられる作りになっていて、どちらの感情も飲み込みやすかった。

個人的に気に入っている表現は、ナナがしんちゃんの顔につけた傷とバブルが1009の建物につけたビーム痕の対比だった。(あれ対比だよね?私はそう信じてる)
前者はナナが加害者側になり傷つけたことによって自我を取り戻すんだけど、後者はナナが被害者側で自我を失っている。前者はてっきり自我を取り戻す伏線になってるものかと思ってたので、逆の使われ方をして驚いた。

そして、その失われた自我を取り戻すきっかけがしんちゃんではなくシロだったのも良かった。ナナにとって長く付き合って心を開いたのはシロだったんだなぁ……と感じられたのが嬉しかった。それと同時に、シロにそういう感情を与えてくれたのがしんちゃんをはじめとした野原一家なんだなぁ……というのも嬉しいポイント。

最後に、個人的に観終わってスッキリしなかった点はナナが死んでしまったところだった。
大人の責任を子供が負う展開が好きではないし、今作における責任を負うべき者(バブル)と負った者(ナナ)が親子の関係にない点が納得いかなさに拍車をかけた。責任を負うべき者として“夢”を理由に無責任に命を生み出したビリーという考え方もできなくはないけど、それでも納得はできない。
この点については、今作の主題を「親の見てないところで子供はたくさん考えて成長していく」としてナナがビリーの見ていないところでたくさん考えて出した結論だったと思って飲み込むようにした。

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