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台風の日のツイートがバズって、地理学の本が緊急重版がかかった話
地球規模最大の台風と「地理学の本」。
台風が来ると、水や養生テープ、電池、パンなどが飛ぶように売れる。どうやら地理学の本も売れるらしい。
■2019年10月13日 地球最大規模の台風襲来
台風19号は、風よりも雨が激しい雨台風で、各地に雨による被害の爪痕を残していきました。
東京、神奈川でも「一級河川が氾濫するぞ」と警報が一日中出ており、テレビニュースでもTwitter上でも、これから必ず来る災害に備えてずっとピリピリしていました。
■雨台風による浸水被害のあるエリアとないエリア
特に東京都内の城東地域4区(台東区、墨田区、荒川区、足立区)は、警報が出るのは早かったようです。記憶は定かではないですが、午前中には避難勧告が出ていた気がします。
江戸川区まじか。
— さかかな🐠フォトレコ/ホテル紹介する人 (@a000j) October 12, 2019
荒川決壊で、もっとも大きい被害が想定されるのは、足立区の千住です。ほぼ全域が5メートル以上の水の底に沈むとされてます。
そうすると何が起きるか。低いところに流れていく水は地下鉄に流れ込みます。北千住駅には複数の路線が走っています。
→ https://t.co/nLv7UJHsmi https://t.co/6xq0edmIS6
一方で、私の住んでいるエリアは川は近くになく、幸いに1階ではなかったので、被害を受けることはありませんでした。
同じ東京でも、避難勧告が出るエリアと出ないエリア。何が違うのだろう。そんな疑問をふと思った時に、思い出したのがこの本でした。
建築を専攻していた人なら、課題図書として一度は手にとったことのある人もいるかもしれません。
陣内さんは地理学で第一人者の方で、東京の地理学の研究を一般の人にもわかり易い言葉で書籍を出しています。
『東京の空間人類学』はざっくり要約すると、「東京」という都市は「江戸」から積層されできているんだよ。江戸時代の人たちの生活文化がこうで、台地や運河はその生活のなかこんな役割をしていて、実はその役割は現在の「東京」にも息づいていてね、
と、地理をもとに東京人の文化を読み解く本なのです。
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そこには、今回荒川の氾濫が疑われていた城東地区についても書かれていました。
ほんとそれなんですよ。
— さかかな🐠フォトレコ/ホテル紹介する人 (@a000j) October 12, 2019
タワマンが高いのはただのバブr…
この7つの丘、山の手にいる人たちが勝ち組でしたし、今回も難を逃れてます。
城東地区は安いけど、残念ながら谷です。 pic.twitter.com/slUNngie9R
現在の高級住宅地(目白、白金台など)は、江戸時代でも武士が住む高級なエリアでした。江戸上に近いこと、かつ川の水害にあいにくい台地の上が当時は高級なエリアだったのです。
対して、下町と呼ばれる地域は度々川が氾濫するエリアで農民や下賤が住んでいたそうです。
それゆえ、下町エリアはいまでもその名残で地価が安いのです。そしてそのエリアは東京都内23区でも住みやすい町(地価が安い、物価が安い、商店が多い)として、現在でも栄えています。
そしてそこが台風19号の際に、1番に避難勧告が出たエリアなのです。
■適切なタイミングに情報を出すことで、バズが起きる
東京23区で浸水するエリア、しないエリアの違いに興味でた人は地理学の本を読むといいよ。
— さかかな🐠フォトレコ/ホテル紹介する人 (@a000j) October 12, 2019
山手線の防護ラインについて、山手という地名の由来とか、高級住宅街とされる地域はどう高級になったのかとか、江戸城近辺の水害の強さの理由とか、書いてあるよ。
陣内さんの本はわかりやすいからオススメ。 pic.twitter.com/7ZdomicfYc
個人的には、「東京の空間人類学」は高校生の地理の授業で必修にすればいいのにってくらい面白いよ。
— さかかな🐠フォトレコ/ホテル紹介する人 (@a000j) October 12, 2019
東京に住んでいる人は必読書だよ。https://t.co/x0T1WmW4M7
これらのツイートは「有益だから」とかではなく。いつものノリで「ねぇ知ってるー?」という感じで投稿したのですが、まさかのプチバズに。
これにはびっくりしました。
なぜなら、一般ジャンルではない建築系図書の、さらに地理学というマイナーな学問の入門書だからです。ふつうに生活していたら、ここまで一般の人に興味をもってもらえることはないでしょう。
伸び方としては、台風当日21時に投稿して、翌日にかけてジワジワと伸びました。
関東に台風が来た翌日は、川が氾濫したニュースや都内各所の浸水被害をずっと報じられていたので、「なぜ被害がでるのだろうか」純粋に思った人が多かったのかも。(思っていた本と違っていたら申しわけないです)
今回の投稿がなぜ伸びたかを一言で示すなら、世の中の「興味関心」と合致していた投稿だったが、正解なのかもしれないなって思いました。
■メディアとは必要な人に必要なタイミングで情報を届けること
よくよく考えてみれば、メディアとはそういうものな気がします。
例えば、テレビニュースや新聞が多くの人に未だ見られるのは、即時性の高い情報を常に取り扱っているからだし、お笑い番組だって旬の芸人さんやテーマで企画を行っています。
偶然とはいえ、脂が乗った旬な情報だったのでしょう。
■投稿をバズるコンテンツに当てはめてみる
今回の「台風の日の地理学」というコンテンツを、澤山さんの記事にある事象限に当てはめてみます。「台風=リアル」で 「地理学=レア」だったのではないでしょうか。
大衆メディアに掲載されるほどではないけど、大衆の興味がある分野。"宝の持ち腐れ"なんて言葉もありますが、「知識」とは、適切なタイミングにメディアに載せて人に伝えることで「情報」として変化させて、「知識」役割を果たすべきなのではないでしょうか。
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■私の投稿で、まさかの緊急重版が決まっていた
【話題書】陣内秀信『東京の空間人類学』(ちくま学芸文庫) が問い合わせ多数のため、緊急重版を決定しました。#いまこそ知りたい〈水の都〉東京
— 筑摩書房 (@chikumashobo) October 16, 2019
江戸・東京は、水によって形成された。歴史から自然と都市の関係を鮮やかに読み解く、サントリー学芸賞受賞のロングセラー。https://t.co/LOVV3AsvDq pic.twitter.com/PqN0LGGxzl
これは知り合いの方に教えてもらったのですが、緊急重版が決まっておりました。
……まじか。
そういえばと思って、バズった投稿(親ツイート)に連投した(子ツイート)に貼っていたAmazonリンクを見てみると……
70冊予約が入っていました。
……衝撃。
何者でもないただのOLのTwitterでの投稿が、誰でもない人たちの消費行動を促している。
という事実になんというか、不思議な高揚感を感じました。
ここ数年では、SNSマーケティングと銘打って、インフルエンサーさんに紹介してもらうこともありますし、偶然紹介されてひょんなタイミングに認知が爆増することもあります。
好きなものをSNSで全力紹介する姿勢を貫いていたら、「紹介していただきめっちゃ売れたので、成果報酬型で売り上げ分配させてください!」と言ってくださる方々が増えてきて、そのお気遣いがすごく嬉しい。一方で成果報酬型でお金を受け取ってしまうとそれは「PR」表記必須になるのか? という疑問…
— 塩谷 舞(mai shiotani)💭 (@ciotan) July 28, 2019
それが私のような一般人、ただのOLでも、これだけの人に超マイナージャンルの「地理学」をおすすめして、買ってもらうことができるなんて……というのが正直な感想です。
そりゃ、もちろん、インフルエンサーさんたちに叶う数字ではないのは承知ですが。
しばらく前から改めて提唱されている「口コミ(UGC)の重要性」を自分自身で経験できた気がしました。
【徹底解説】UGCとは何か、なぜマーケティングで重要になってきたのか https://t.co/MbU5kJE55i
— いいたかゆうた | yuta iitaka (@yutaiitaka) June 12, 2019
■ツイートアクティビティの数字的な話
▼親ツイート
東京23区で浸水するエリア、しないエリアの違いに興味でた人は地理学の本を読むといいよ。
— さかかな🐠フォトレコ/ホテル紹介する人 (@a000j) October 12, 2019
山手線の防護ラインについて、山手という地名の由来とか、高級住宅街とされる地域はどう高級になったのかとか、江戸城近辺の水害の強さの理由とか、書いてあるよ。
陣内さんの本はわかりやすいからオススメ。 pic.twitter.com/7ZdomicfYc
親ツイート:2,600リツイート、9,000いいね(11月3日現在)
▼子ツイート
個人的には、「東京の空間人類学」は高校生の地理の授業で必修にすればいいのにってくらい面白いよ。
— さかかな🐠フォトレコ/ホテル紹介する人 (@a000j) October 12, 2019
東京に住んでいる人は必読書だよ。https://t.co/x0T1WmW4M7
子ツイート:46リツイート、120いいね
・インプレッション…20,000
・リンククリック…1,200(60%)
・売上…60(3%)
という結果でした。これが多いのか少ないのかわからないのですが、私的にはインフルエンサーでもなんでもない人間による投稿によって、売上を立てることもできるのだなあというのを自分自身で体験できたのが非常に面白かったです。
・・余談・・
あと、今回の投稿で得た紹介料3,000円は、翌月、本10冊に昇華されました。
今月は本を買いたい欲求が抑えられなかった…。だって読書の秋だから…。積読が激しい。 pic.twitter.com/KgKBFHxVyb
— さかかな🐠フォトレコ/ホテル紹介する人 (@a000j) November 2, 2019
・・余談2・・
ちなみになんですが、私がこの本を知ったきっかけは、2,3年前に、建築を夜間学校で学んでいたときに先輩が貸してくれたからでした。
そのあとに気にいったので、自分でも購入したのですが、まさかあの時の会話からこうやって多くの人に「地理学の本は面白い」と伝えることができるなんて。
なにがどう繋がるのか、わからないものすね。
▼以前の大バズ考察はこちら
▼紹介料の売上金3,000円で買った本の紹介はこちら
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