湯河原チルアウト のなにがチルアウトなのか。高揚感とくつろぎの溢れる温泉旅館 TheRyokanTokyoYUGAWARA
本noteは前半のホテル紹介と後半のマーケティング(有料)の二部構成になっています。
このあいだの土日に行ってきた「チルアウトできる温泉旅館」が最高だった。って話をしてもいいですか……?
ここで言う「チルアウト」とは、
「高揚感とくつろぎが共存している」状況の自分に気持ちが向いているという、一種の自己陶酔を孕んでいる。
引用:"チルアウト"を言語化する
のこと。
温泉に日頃の疲れを溶かして、人をダメにするソファに沈むように身を預ける。日常から解放される贅沢な時間にアガりながらも、最高にくつろげる旅館「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」。
訪れたのは2019年9月末。
肌にあたる風はだいぶ涼しくなってきて、温泉が恋しくなり始める頃でした。
The Ryokan Tokyo YUGAWARAってどんなホテル?
湯河原チルアウト
THE RYOKAN TOKYO YUGAWARAには、豪華絢爛なお部屋や最新鋭の設備があるわけではありません。
ただ、あなたと、あなたの本当に親しい友人や家族や恋人が一緒に過ごすのに、丁度いいくらいのお部屋とお風呂があります。
あなたが心置きなく自分の時間を過ごせるための場所でありたいと思っています。どうか、最高にチルなひと時を。
コンセプトを「チルな温泉旅館」とし、 #湯河原チルアウト と銘打って2018年2月にオープン。
湯篭もりをテーマに、旅館に篭もることに特化した「アガる旅館」です。部屋は和室とドミトリーの全25室。カフェバーを併設しています。
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■海のそばにある山の上の旅館
湯河原駅は、東京駅からJR東海道線で1時間半の温泉街です。熱海駅の1つ手前にあり、熱海と比べると少しこじんまりとしています。
「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」は湯河原駅から車で15分。山の上にあります。
部屋からの眺めがいいです。空が広い。
バスで行く人は、最寄りのバス停から歩くとかなり急な坂があるのでご注意を。この坂を10分ほど登ります。
旅館の周辺はコンビニもなく、非常に静か。一度旅館に着いてしまうと、もう下の世界に降りていくことを躊躇してしまう、ちょっと辺鄙な環境です。
でもそれは逆に考えれば、宿にお篭もりするのに最高なロケーションとも言えるのです。
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■温泉旅館で気が向くままに読書や執筆をしてくださいね
そんな「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」の宿泊プランには、湯篭もりプランという素敵なネーミングな商品があります。
湯篭もりってなんて風情のある響きなのでしょうか。しかも、大人の原稿執筆パックだなんて。
プランには積ん読解消パックと執筆パックの2種類があり、湯河原旅行というよりも旅館での滞在時間を楽しむつもりになってしまいます。
なので、旅館は山の上だっていいのです。
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■高揚感と陶酔感からくつろぎへ
連続する鳥居をくぐり、受付でチェックインをすませて、まずは部屋に荷物をおろしにいきます。
部屋に入ると金色の壁紙があたたかな電球色に照らされています。
なんだか秘密を抱えているような優艶な雰囲気の光に、不思議な高揚感を覚えます。
それ以外は良くも悪くも変哲のない部屋です。特別広いわけでも、豪華絢爛な内装があるわけでもありません。
少し違うのは、部屋のまんなかに人をダメにするクッション「Yogibo」が置かれていることくらい。
一般的な和室なのに、気持ちの高ぶりを感じるのは「湯河原」という温泉地だからかもしれません。
もともと湯河原は夏目漱石などの文豪たちに愛されてきた古湯なんだそう。
きっとそんなことはないんだけども、なんだか私も文章が書けるような気になってしまいます。陶酔感とはこのことでしょうか。
あの書類を出さないと。あの人はなにしてるのかな。今日のニュースは……。明日の資料づくりは……。
という思考の断片は静かに浮かんでは沈んでいき、淀んでいた思考が少しずつクリアになっていくよう。
高揚感が落ち着くころには私のなかに「考えるための余白」が生まれていることに気付きます。
まるで谷崎潤一郎の『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』のような世界です。
『陰翳礼讃』とは、1933年(昭和8年)に刊行された本です。まだ電灯がなかった時代の日本の美意識を描いています。
だがその羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。
人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。
引用:陰翳礼讃
この感性を持つには、私たちの生活は文明の便利さを享受しており、そして少し忙しすぎます。
なぜ障子の部屋で暮らしたことがないのに落ち着くと思うのか。なぜ電灯の光のゆらめきに気持ちの高ぶりを感じるのか。
「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」は物理的にも精神的にも日常から隔離して、「考えるための余白」を提供してくれるのです。
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部屋にはおこもりグッズがあります。
延長コードとスマートフォンの三脚(作業しながらスマートフォンを見るよう?作業撮りするよう?)が部屋に用意されてました。
昔ながらの旅館だと電源が少なかったり、部屋の端にあったりと使い勝手が悪いことがありますが、この延長コードがあればそんな心配はありません。心遣いが嬉しい。
ちなみにフロントでお願いすると、枕と手元灯を貸し出してくれます。これは寝落ちができてしまいます……。
いつの間にか、部屋に馴染んでいました。ここではリラックスではなく「くつろぐ」が合っている気がします。
部屋に入った瞬間の高揚感はどこへやら。
まるで羊羹のごとく、部屋という暗闇に沈められたようです。外界からシャットアウトされた世界に陶酔できる部屋は心地の良いものでした。
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■人をダメにするソファだらけのくつろぎ空間
見てください! 人をダメにするソファで有名なYogiboだらけのカフェを……!
これはもうYogiboの侵略です。
旅館併設の「ゲンセンカフェ」は宿泊客だけでなく、一般の人も利用できます。湯河原まで着て旅館にたどり着いたら目の間にこのカフェがあったら、アガりませんか?
窓辺の植物の葉が日の光に透けてキラキラしています。
ひなたぼっこに最高なロケーションを小上がりのカフェにしてしまっています。これは罪深い。
こんな素敵空間なら作業が捗る気がするけれど、寝落ちしてしまう気もします……。
んん、二律背反。
カフェには本棚も設置されており、貸出し自由です。比較的新書が多め。
1つ1つにつけられたポップを読むのも楽しい。
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しかもこのYogiboはゲンセンカフェだけでなく、旅館の至るところに置かれています。
隠れてないけど、ちょっとした秘密基地気分です。私だけのくつろぎスペースにテンションがあがります。
お風呂出てすぐのところにも。湯上がりコーヒーと読みたかった雑誌を持って。
悪い大人には、ビールと本を。
日常だと通勤中や待ち合わせまでのスキマ時間に行がちな読書という行為を堪能できるのです。
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■映えな空間と定番さが生み出すギャップにアガる
夕飯と朝食は「ゲンセンカフェ」でいただきました。素泊まりプランもありますが、旅館から出たくなくなるので、ごはん付きでの予約をおすすめします。
定番感のある料理。映え空間のギャップがいい。いい意味で裏切られた感じです。
夕飯はすき焼きと栗ごはん。すき焼きは写真撮り忘れました。
朝ごはんはアジの開き。
海も近く、アジは湯河原の特産品の1つでもあります。新鮮でくさみがなくて美味しかったです。10皿の小鉢もかわいい。楽しい。
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■お風呂はぬるめの湯加減が最高
湯篭もりで一番肝心なお風呂。ぬるめの湯加減で、ただぼんやりと足を伸ばして、脳みそからふやけるのに最高でした。
画像引用:じゃらん予約サイト
ちなみに、浴衣と帯は種類が豊富で自分で組み合わせを選ぶことができます。
友人とかぶらないように選ぶことも、あえてお揃いにすることも可能です。
男性用も複数デザインあり、サイズは2種類から選べました。女性用とおそろいの柄もあって、これだけ豊富にあるのは結構珍しい気がします。
紹介したように旅館の滞在体験のなかに「アガる」空間やコンテンツを丁寧に落としこんでいるのは、チルアウトという世界観のためなのだと思ってしまうのです。
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■ 「らしさ」が広告になっている
「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」のキーワードは #湯河原チルアウト 。
先ほど紹介したような優艶な和室、写真映えするYogiboで溢れたカフェ。アガる食事に、選べる浴衣。
それら1つ1つが #湯河原チルアウト の世界観を作り上げています。
インスタグラムでは、湯篭もりという少し古びた言葉への陶酔感としてをビジュアル化しているようです。
私たちに#湯河原チルアウト のイメージを伝える広告媒体として働いています。
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■湯河原だからこそ生み出されたチルアウト
先程も述べたよう「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」の立地はよくありません。
怒られることを覚悟でいうと、湯河原って何もないんです。旅行に行くなら箱根や熱海のほうが魅力的な観光地に見えるのです。
・新宿 → 箱根湯本 1時間30分
・東京 → 湯河原 1時間25分
・東京 → 熱海 1時間35分
だからこそ、「湯篭もり」が生きてくる。
読書や執筆は「籠もる」のに適しています。
目立たない観光地で、立地の悪さを逆手に取って、強みである温泉を生かした「湯篭もり」というコンテンツを旅館自らがつくりあげていることがすごいと思うのです。
「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」には、ただの「写真映え」ではない魅力がありました。
高揚感とくつろぎの入りまじったチルアウトするための空間。
それは、文豪たちが都会の喧騒を離れるために訪れていたように、私たちが自分を取り戻す時間を過ごすためのようだと思うのでした。
▽ツイッターで遊びに行ったホテルを紹介してます。
編集協力&スペシャルサンクス:長谷川 翔一/テキスト中毒マーケターさん、しろ⛄️らくがき帳さん
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以下、施設のマーケティング的なお話です。
「The Ryokan Tokyo Yugawara」の商品設計の何がすごいかを書いています。コーヒー1杯分の金額設定しました。
ホテル紹介noteを書いていて気づいたのですが、この積ん読解消パックと執筆パック、実は……。
マーケティング編目次
■UCC(口コミ)最強の執筆パック
■湯篭もりプランの連泊プラン
■私たちが商品を買う理由をわかりやすく提示する
■売上損失防止の予約動線
■旅館をコンテンツ化で収益化に成功
■私たちは時間にお金を払いたい
「執筆パック」商品設計強すぎ問題あるよね? という視点で書いています。
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