【雑学:ルイソンさんからハウレットさんへ】

音源比較で判る余計な情報、とは言え資料を利用する上では需要なポイントでもあるのですが。

マークルイソンさんの衝撃的な本「レコーディングセッションズ」が出版されて以来、ビートルズ研究は細部まで探求できるようになりました。
一方でその事が逆に記述間違い(つまりルイソンさんの弱点)を洗い出す事にも繋がりました。

同書では、転載したレコーディング記録(誤記は除く)、集められた関係者の証言、テープに残されている会話の断片、など信頼性の高い2次情報が満載されています。

ただ、ルイソンさんは結局音楽面や録音技術面が不得手だったようで、そこに加えられた解説は参考程度に留めておいた方が良さそうです。年代が進むに連れて精度が上がる感じ、手探りで調べ始めたために曖昧だった点が徐々に理解できていく印象です。

例えばデビューアルバムで多く記載されている「編集バージョンからモノミキシングまたはステレオミキシング」という作業は怪しそうです。
1次資料であるレコード音源を比較すればモノとステレオが別編集であるという事実を突き止める事ができますが、これは録音時にモノ用とステレオ用のテープレコーダーを併用していた点を補強できる証拠となります。
つまり「編集バージョンからミキシング」が不要なだけでなく、ミキシング作業自体が不要(実質的にはテープコピー)と考えられるのです。

この点は、アンソロジーで I Saw Her Standing There の第9テイク(使われたカウントとそれ以降の演奏)が公開された事で、編集バージョンとして切り出されてなかった事が明確になりました。

穿った見方をすれば、公式情報をこっそり訂正するために内部の人間がリークしたかの様にもみえます。

最終的にルイソンさんはアンソロジーの解説を最後に姿を消し、レット・イット・ビー・ネイキッドからはケヴィンハウレットさんが登場しました。

情報収集家としての評価と情報分析家としての評価にズレがあった雰囲気ですが、ビートルズ活動期はあらゆる分野にマニアが存在していますのでルイソンさんが活躍できる場は限定されそうです。

***補足

「レコーディングセッションズ」を読み進めていくとビックリする記述が出てきます。

Words Of Love は第3テイク(第2テイクにオーバーダブを加えたもの)がベスト。

1964年を調べていた頃はまだ4トラック録音が理解できてなかったようです。音を追加するのは2トラック録音のようにコピーが必要でテイク番号も上がると考えていたようです。実際には空いているスペースに追加できるのでテイク番号は変わらないのですが。

また、同じテープにコピーできない事はカセットテープでも想像できると思いますが、第2テイクを第3テイクにコピーできると書いている所は不可解です。

という事で、アップル内部では資料としての信頼性に掛けると判断されていたのかも???

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?