EM試作②『マリオネット』演出のあとがき
こんばんは。
ミュージカルサークルEM試作公演第二弾『マリオネット』全3ステージ終了いたしました。見ていただいた方、本当にありがとうございました。
今回の公演では今後のオンライン演劇やパフォーマンスの表現の幅を広げられればと、今回のために新たにアプリケーションやシステムを構成して演出に加えました。そのことについて、これからのパフォーマンスの参考になる部分があればと、テクニカル開発を担当した私とサークル同期の古谷から解説記事を公開します。よろしければ御覧ください。
古谷からはテクニカルの詳しい部分をお伝えするので、私はその演出的意味をお話できればと思います。
(アーカイブ動画は準備でき次第公開しますので、見逃した方、もう一度見たい方はお待ちください)
チャットシステムと演劇における役者と観客の関係性
今回YouTuberのライブ配信が舞台だったので、演出としてYoutubeのチャット欄を模した画面を配信画面に配置し、リアルタイムで書き込んでくださったチャットを取得して表示させるようにしていました。
オンライン演劇でチャット欄を使って観客とのパイプラインを設ける取り組み自体は既にいくつかの劇団が採用しています。私達はそれをお話に合うように組み込みつつ、放映画面上で脚本に組み込まれたチャットと一緒に表示させていた形となっています。
このアプリとネットワークは私と古谷が死にそうになって1から作ったのですが、頑張ったのは観客が舞台に与える影響を私自身が見てみたかったからです。
作家によって差異はもちろんあると思いますが、演劇の三要素として「俳優・戯曲・観客」と挙げる場合があります。劇場という空間の中では、観客の顔や雰囲気や笑い声を舞台から感じることで、役者の反応が変わってくることがあるようです。また、最近自分を舞台世界の一人として体験してもらう演劇の「イマーシブシアター」などでは、俳優と観客の関係が再び考えられている印象があります。
オンライン演劇だと、客の様子が基本的に人数という数値でしか感じれないというのを前回の公演のときに思いました。今回このようにしてお客様の感想を演出に組み込んで、役者も見れるようにしたことで、その場で生まれる演劇を作ることができたのではないか、と思っています。
(あとここはあんまり私の中でまとまってないことなのですが、現代演劇って観客座ってみてるくらいの存在になってる気がしてて、こういう技術がまた覆していく可能性はあるなって思ってます。日本だと歌舞伎とかで「なんとか屋!!」っていう積極的な関わりがあった、ということを『演劇概論』(河竹登志夫著)で読んでなるほどと思いました)
照明アプリとオンライン上の舞台的演出
今はオンライン演劇楽しいってすっかりなってますが、そもそも私は元々舞台照明をずっと担当していて、照明に魅了されて研究で作品に起こしたりしていました。オンライン演劇だとそういう大掛かりな舞台演出ができないのがとても悲しくて、今回作ったのがこの照明アプリです。
ただこれは前に少し経験があって、1年ちょっと前の3月に劇場でやったミュージカルの劇中で、パソコンを照明装置に見立てて使ってみたことがあります。
今回はこれを少し手直しして使いました。夜な夜な明かりを作っていたときに確かに照明を作っている実感があって楽しかったです。
やりようはいくらでもあるが、そこへの環境整備が問題。もう少し使いやすくなって、他の照明家さんでも使えるようになったら…と夢想したり…
照明打ち込みの様子
役者に渡したアプリ。パソコンで大きく表示させて、
ディスプレイ照度をガンガンに上げてさせてました
Zoom演劇と表現媒体
オンライン演劇は演劇の可能性を押し広げるかもしれませんが、これはメインストリームにはならないと思います。なぜならオンライン演劇は媒体としての要素が強すぎて、描かれるものをかなり選んでしまうから。劇場をブラックボックスに例えることがありますが、キャンバスが真っ白だからたくさんの絵が生まれるというのは理解いただけると思います。
オンライン演劇を乗り越えて一歩進めるために、まずzoomという設定を取っ払って、YouTube Liveをやっている人と画面を見ている人という設定にしてみました。これによって、カメラという存在を舞台から消すことはできたと思っています。
ただ、やはり今回はYouTubeからは逃れられなかった…という気持ちと、私自身メディアアートは好きなので、表現媒体と表現するものの関係はこれからも考えていきたいところです。
「演じる」ということについて
演劇とはなにかということに突っ込んでいくのですが、演じるという行為が演劇には含まれていると思います。しかし、「演じる」っていうのは別に特殊なことではないと考えています。
私は中2くらいからマイクロメートルというTwitterのアカウントを持っているのですが、マイクロメートルという人格を作ってそれで発信するときと、別のアカウントを動かすときは全然違う人格を演じてるし、そしてその演じてるっていう感覚がないんですよね。人によって対応を変えて社会とよしなにやっていくというのはずっとあったことだと思いますが、インターネット時代、なりたい人格を作ってそれに入りこんで行くことが普通になってきてるんだろうなあと思って、今回の物語の主題に置いてみました。
詳しくはまた別のnoteにまとめられればと思いますが、自分の意志で作る自分の分人達をどうマネジメントしていくかみたいなのが、能力になっていくのかなとも思っています。
さいごに
まだまだやるぞ!!!!
参考文献
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