早渕仁美「優しい海。(7日目)」
こんにちは、吉田町を旅する早渕仁美です。
最終日の今日は朝から市場。
しらすのセリがあるよ〜というので、
以前工場を見学した住吉水産の鈴木康裕さんを尋ねる。
時間ごとに船が入ってくる時間が決まっていて、
見学したのは7時半〜8時半の回。
2隻の船が湾で漁をして、1隻の運搬船がしらすを運んでくる仕組み。
見てると運搬船は驚くほど小回りがきいて、
ウィン〜、ウィン、ウィン〜って港につけては去っていく。
鈴木さんに聞いたら、腕がいい人はそうだけど、
何回も切り返す人や、普通にぶつける人もいるらしい。
海の上という得体の知れない道路というか通路で、運転上手いって格別だなと思った。
運搬船が来るのを丘番さんたちが待つ。
みなさんしらすの入った箱を引っ張るオリジナルの棒も持ってスタンバイ。
船はひっきりなしにくる。
農家や漁師の周りにはそれぞれにオリジナルの道具がある。
形が違うので、手作りな気がする。
ない道具は自分で作るのだ。
しらすがきたら囲って何度も素手で確認。
しらすって意外と丈夫なんですね。
金額を専用の用紙に書いて、取りまとめの人に渡す。
その中で高額の人が購入できる。
丘番さんたちの動きは早い。
風を切って運搬作業。
海には水があるから滑らせることができる。
土の上と水辺での作業の違いに興味津々。
写真の看板は漁に出ている船。
この時間はまだ半分しかきてないよ〜とそこにいた人が教えてくれた。
この日の水揚げは少なく、いつもより2倍ほどの値段に。
2箱で10万円以上の値段になった。
セリの時間が終わると、鈴木さんが市場の2階に連れて行ってくれた。
「向こうが御前崎で、向こうが伊豆半島ね」
「向こうの方で船がしらす獲ってるよ、双眼鏡で見てみて」
2階のベランダにある備え付けの双眼鏡を覗くと
何層もの船が勢いよく水上を行き来していた。
駿河湾で船が躍動し、それを待つ人々。
手前の海は穏やかで、私の目線は遠くに霞む静岡の断片を望んだ。
鈴木さんが、じゃ工房行こうか、と軽トラで先導してくれる。
なんと獲れたばかりの生しらすを振る舞ってくださった。
生しらすはすこし大きめ。
魚ってなんでこんなに美味しいんだろう。
透き通る身はほんのり苦味があって、うまみ抜群。
酢味噌で食べるのは初めて!上品な一品の味。
鈴木さんは、市場での説明やしらすの試食まで、
当たり前のように、自然にしてくださった。
こちらががっつり入るでもなく、外から眺めるだけでもなく。
そのおもてなしがとても嬉しかった。
今日は最終日。
少し島田にはみ出してお茶畑を眺める。
静岡ではよく見る景色だけど、吉田町ではお茶畑は少し珍しい。
お茶畑のあるなしが、町の境界とも言えそうだ。
そのお茶畑の景色を眺めながら、吉田町であった数々の場面を思い出す。
旅の帰路に着く前に、
最初にご挨拶した山王神社へ。
感謝の気持ちが、この場所へ向かわせる。
最初、自分の足で踏み出した吉田町。
いつの間にかたくさんの人の流れに沿うことで、
様々な様子が町に映し出された。
いつの間にか自分が歩く音が聞こえなくなるくらい賑やかに。
神社でまた、自分の歩く音を聞く。
感謝の気持ちも感じ取りながら。
今回吉田町で関わってくださった一人一人のみなさま、
本当にありがとうございました。
noteを読んでくれていた方も、励みになっていました。
ありがとうございます。
また、滞在まとめにて。
今回の旅のことを丁寧に綴りたいと思います。
その時まで。ありがとうございました。