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國吉咲貴「滞在レポート(まとめ)」

こんばんは。
國吉咲貴です。
普段は演劇をつくっています。

旅人が終わり、数日が経ちました。
あの日々が懐かしいような、つい昨日のような、つい数日前のような気持ちです。
つい数日前ですので合ってますね。

私の生活は、旅人をする前も、していたときも、終わってからも、変わりません。
書いて、見て、聞いて、読んで、書く。
それが私の全部のようです。
旅人になる前、家族や仕事の人に
「御殿場に行って何するの?」
と聞かれました。

御殿場の方々にも
「御殿場に来て何するの?」
と聞かれました。

私も思っていました。
御殿場で、何をしたらいいのだろう。

旅人募集の際のページには、こんなことが書いてありました。

【静岡県内各地域に滞在し、その地域の文化や魅力に触れ、自らの創造性を発揮できる「旅人」(クリエイティブ人材)を募集します】

私は旅に向かう電車の中でやっと気づきました。
「そんなこと、たった一週間で可能なのだろうか・・?」

御殿場は空気がいい。
御殿場から見える富士山は素敵。
御殿場は人が温かい。
そんなことは、アーティストじゃなくても見つけられることではないか。
私じゃなくてもよいではないか。

毎日のnoteを、書いたそばから自信がなくなり、書いては消し、書いては消しする日々でした。

【私ならでは】と考えると、
「私とは何か」
という壁にぶち当たるばかりでした。

私と他者との違いは何か。
私は他の人と何が違うのか。
そんなことを考え、旅人として何かしなくては、と柄でもないのに色んな場所に行こうと活動的に過ごしたりもしました。
何かを見て、何かを感じ取ろうとしました。
頑張って人と話そうともしました。
どの場所でも、「旅人」としての言葉を求められ、それが私は苦しくなっていきました。
何かうまいことを、しっかりしたことを話さなければ・・とどんどんプレッシャーになりました。

そんな感じなので、勿論2、3日もするとすごく疲れてしまって、「私は何もできないなあ」「旅人失格だなあ」と落ち込みました。

自分探しの旅をする人がいる世の中で、旅人失格の人間なんているのでしょうか。私です。
すっかり旅人としての自信をなくした4日目、同じ御殿場滞在メンバーの丹治さんのグループ展が、Gotemba Apartment storeで開催されていました。
丹治さんたちのトークをぼーっと聞いていたら、言葉が頭の中に残っていく、不思議な感じになりました。
そこでふと思いました。

体の中に残っていく言葉を集めたら、自分が興味を持ったものがわかるのではないか。
それはすなわち、私の視点になるのではないか。

そのときに、私は別に御殿場で何か行動を起こさなくても、自分の中に留まる言葉を取っておいたり、気になる言葉を採取していけばいいのかもしれない。と思いました。

トークの中で丹治さんが
「現代アートは今すぐどうこうじゃなく、何年か経ってから思い出したり、そのときのその人の生活に役に立ったらいいと思ってる」
的なこと(間違ってたらごめんなさい)を言ってて、
(それは私が演劇をつくるときも思っていることなので、同じ気持ちで嬉しかったです)
この旅も、そういう考えでいいのかもしれないと気付きました。

旅人の間は、「毎日の終わりに日記を書き、一週間で感じたことをその後まとめる」という、ある意味すぐに結果を出すための表現ルートが必要だと感じていたので、それが私の表現の仕方とは喧嘩していたのかもしれません。
私自身も、すぐに何かを見つけて、何かを表現しなければ、と焦っていました。

でもこの一週間、そしてそのあとに私の中に生まれたものや見つけたものや気持ちや言葉を拾い集めて、それがいつか何かの作品に繋がって、やがていろんな人(その中に御殿場の人がいたら更に素敵)に届いたら、それは旅人として成功なのではないか、と4日目の夜に思いました。

この考えが合ってるのかはわかりませんが、私はそう思えたことで、4日目にしてやっと旅人として御殿場を楽しんで見えるようになりました。遅い。


どれも食べられなかったこだわり推奨品

前半は何かしなきゃと焦り、後半は身の回りにあるものを体に流して、引っかかったものを掬い上げるという感じで過ごした、一週間のまとめを、下に書きます。

御殿場の素敵だと思ったところ


富士山があります。これは絶対的です。これに勝るものはありません。

富士山さん

それと観光地がたくさんあるのが良いです。御殿場駅からシャトルバスがたくさんあるので、車がない人も観光出来るのが嬉しいです。

シャトルバスの多い箱根乙女口


向こう側が見えない赤い階段


白すぎて長すぎて不安になる道


あと御殿場で出会う人、皆さん心がおおらかな感じがしました。
変におもてなしをするわけでもなく、放置しているわけでもなく、旅人のやりたいことのための方法を提案したり見守ったり手助けしてくれたりしました。

素敵な素敵な一箱図書館


自分でお店や交流の場を開いている方がたくさんいたのも印象的でした。
どうして新しいことをするのか聞くと、多くの方から「面白そうだから」と返ってきます。

面白いからと言って手をだせる規模には思えないものも、面白そうという気持ちでやり通してしまう行動力は、富士山が見える「御殿場」という場所にいるから培えるものなのでしょうか。
人それぞれでしょうか。
人それぞれでしょうね。


マウント劇場シール

宿泊場所のマウント劇場も、とんでもなく素敵でした。
御殿場駅から近くて、元映画館というのが最高でした。
「映画に出てくるような映画館で映画を観て寝る」
という至福の時間は、きっと中々体験できません。
たくさんここで映画を見たい気持ちと、ここで見るのに慣れたらもうパソコンで映画は見れない、という葛藤に苛まれました。
宿泊できて幸せでした。マウント劇場がずっとずっとこの先もいろんな方に愛されますように。
ありがとうございました。

初日のラ・ラ・ランド


無計画に洗ったために乾かす場所を失った洗濯物

マイクロ・アート・ワーケーションを終えて

何かを学ぶぞ、吸収するぞ、という気持ちで過ごしたのは久しぶりでした。
いつからでも、吸収するぞという気持ちになれば、視点が変わるし、人や物事への感じ方が変わるのだなと思いました。一つ一つに対して、丁寧になった気がします。

例えば2日目に行ったアークラ大サーカスは、普段なら私は人混みが苦手なのでお祭りには行かないし、服や小物にあまり興味がないのでサーっと通り過ぎてしまうのですが、「日記を書かねば」「素敵なところを見つけなければ」という意識があると、お店全部を見渡す意地が出来ました。
毎日の出来事を一つ残らず覚えておこうという余裕の無さは、いいことなのかどうなのか正直わかりませんが、そんな日もあっていいのだと思います。

悲しかったことは、御殿場に演劇がなかったことです。
こればっかりはすぐになんとかなることでもないし、なんとかするべきことかもわからないのですが、演劇を観る習慣がない場所には演劇をつくる人たちは出来ないと思うので、御殿場に演劇を広めるには、長い時間と労力が必要だなと思いました。


猫の背中はかわいい

最後に

1日目の自分の日記を見返したら、こんなことが書いてありました。

「MAWに応募した1番の理由は、どこかに籠って作品を書く、ということをしてみたかったからです。
そして2つ目の理由は、成果物を提出しなくても良かったからです。
いついつまでにこの作品、という感じでゴールが決まったものしかここ暫く書けていなかったので、どこに出すわけでもないものをゆっくりと書いたり書かなかったりして、自分の中身と向き合える1週間に出来たらいいなと思っています」

すごくその通りの旅になったと思います。
宿泊先の部屋に戻る度に、私は誰に見せるでもないものをカタカタカタカタと書いていました。
これはいつか何かの作品になるかもしれないし、ならないかもしれません。
でも書く人として、自分の中に出てくる言葉を大切にするためのリセットが出来た気がします。
これからも創作をがんばります。

今回は旅人をさせていただき、誠にありがとうございました。
一緒に御殿場に滞在した丹治さんと関野さん、他の場所に滞在した皆さんや、前回、前々回の旅人達のこれからのご活躍も、とても楽しみです。
みんなみんなに幸あれ。


おまけ:集めた言葉と会話の一部

「試飲しますか?」
「それならもう、結構ですので」
「お受け取りください。お受け取りください4番の方」
「そうですね。そうだね。そうかもしれない」
富士山5号目
「高いね」「全部高いね」
小劇場行事
境目
限界はどこか
高山植物
プレミアムミルク
お立ち寄り券
「重くなっちゃったのよ」「あんだけ食べたらそうよ」
炭酸水
死海
塩分濃度
「タオルはつきますか」「タオルはつきます」
パーマカルチャー
アーユルヴェーダ
風の気質
沼津港
ヌマヅヌマズナマズ
ジョンレノンの声
ジョンレノンの新作
富士山濃度
富士山の概念
栄養を運んでいく


おわり


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