早渕仁美「朝日をみにいく。(5日目)」
10/12(木)
朝日をみにいく。
今日は旅人メンバーで4時台に集合して朝日を見にいった。
ちょうどランドマーク(鳥)がある辺りの展望台近くに着いた頃は、星のある空からはじまって、伊東の方の星、下田の方の星(この見方は現地の人に教わった)は、どちらも山の木の輪郭に触れるまで一面に煌めいていた。
はっきりとした月の美しさを確認しながら、薄ぼんやり明るくなった空の方に歩いて向かっていく。鹿が鳴いている。猪がどこかで見ているかもしれない。
展望台に到着。それぞれ思い思いに朝日を待つ。
東の空を見ながら、時々稲取の町を眺める。
空は肉眼ではっきりと分かるほど変化していて、光が薄く薄く、町の方へと進出していく。町に灯されたひとつひとつが灯台のように灯る明かりが、徐々にその光量を緩めていく。
この時間はとても永く思えて、目の前に見えている海の先にも、今朝日がいる見えていない海の先にも行けた。
一瞬でパッと辺りの様子が変わる。
朝日が大島から顔を出した瞬間だ。朝日が直接、我々を照らしている。町も、山も、海も、朝日に目を眩しくしている。
待ち望んだ朝日はそれからすごく早く昇っていった。地球ではなくて、太陽が動いているみたいに。
町は、毎日の儀式を終えたかのように朝を迎えていた。今日も稲取の1日が始まる。
朝日のことは食堂おばあちゃんちの森下さんに聞いていた。
というのは、私は地図や観光情報には載っていない、稲取に関わった人が持っている「場所」を集めている。海、湾、家、道。場所はいつもそこにある。その人の人生の中であるとき出会った「場所」を探しにいく。
森下さんは東京から稲取に移り住んだ方で、現在元気に食堂でみんなのご飯を作っている。食堂オープンの経緯とか、気が付いたら好きなご飯作りに手を動かす自分に気付いた話とか、食堂に集まる人たちの話を聞かせてもらった。
そんな森下さんが伝えてくれた「場所」は、自宅のベランダからみる朝日。伊豆に来る前は、朝日は正面に海から上がってくるものだと思っていた。でも稲取から見る朝日は、東の空から段々とぼんやり明るくなって、長い時間を掛けて明かりが横に伸びていく。それが朝日なんだと知ったと教えてくれた。
森下さんの食堂に色々な人がくる。その度に森下さんが丁寧に説明をしたり、話し掛けてくれる。
私が滞在中、食堂の前を通るといつも手を振ってくれる。
森下さんの朝日に思いを馳せながら、今日私は自分の朝日を見た。町の人にはどんな朝日があるのかな。
追伸:
朝日をみていたら、かやの寺の長谷川さんが覗きにいてくれた!車がないから寝坊したのかと思ったよ〜と。会うかもねー、と言ってくれていたから、会えた時嬉しかった。