中島響 龍山町滞在総括レポート
今日は11月8日(水)。龍山町でのMAWとしての滞在から約2週間が経った。
と言っても、10月25日にMAWを終えてから自分はその次の土日にあった瀬尻地域でのお祭りにお邪魔させてもらっていた。この二日間の話をまずはさせて欲しい。
この日は15時頃に到着して、山いき隊長谷山さんと合流。
お祭り自体は夕方頃から始まるということで、それまで行けていなかったエリアを案内してもらったり、長谷山さんの用事を済ませるのに同行させてもらったりした。龍山のひととのコミュニケーションはやっぱり軽快で心地良いな。そんなことを思っていると辺りはだんだんと暗くなってきた。龍山の日は短い。
お祭りの中心地である社務所に行くと既に屋台(富士吉原では山車と言っていた)が出ていた。話を聞くと驚くべきことにこれは30年前に地域の人たちが協力して自分たちで作ったよう。
地域の人達自ら木を切り、組んで作り上げたということで、その話をする人の表情は皆さん誇らし気で羨ましさすら覚えた。
思えば自分は自分の地元のことをそこまで誇りを持って語れないし知らない。だからこそ、自分の"地元を語れる"このまちの人たちは凄く素敵に映るし羨ましくも思う。
昔のことを語る一方で、この日の祭りに人が集まるか心配する声も漏れていた。なんせ4年振りの祭りの開催。コロナ前はこの祭りのために若い人も戻ってきてお囃子を演奏していたということだけど、このまちに一週間滞在していて若い人にはほとんど会っていない。人数が集まらなければ屋台は引けない。期待と不安が混ざり合う雰囲気の中、日はだんだんと落ちていく。
そうこうしている内にポツポツと笛を持ちながらやってくる若い人や小さな子どもの姿が。あたりの雰囲気がだんだんと高揚感に包まれてくる。気がつくと30-40人くらいの老若男女の人が集まっていた。
お祓いを終えた後の乾杯にもちゃっかり混ぜて頂き、テントの下では七輪を囲んだ宴会が始まった。
今回はカメラを回させてもらい、昔の思い出話を聞かせて頂いた。
しばらくすると辺りからは笛や太鼓の音が鳴り出し、そのまま屋台を引く流れとなった。(この時のなんとも言えない現場の高揚感は映像として撮らせてもらったので、今度12/1-3にある「龍山、ぽちゃん。」に上映予定の映像を是非見てもらいたい。)
屋台を引く頃には60人くらいいただろうか。小さい子から普段龍山に住む人たちまで沢山いた。あまりに自然だったので、一瞬これが当たり前の光景かとも思ったけど普段がそうではないことも知っている。なんとも感慨深い気持ちになる。
社務所の前のメイン通りを2往復くらいする。今年は富士吉原から始まり、三嶋大祭りと、色んなお祭りやお囃子を見させてもらったけど、この龍山の祭りはまた特別熱い気持ちになった。
屋台の引き回しが終わるとまた宴会に戻る。ここで凄く素敵な出会いがあった。このまちに住む最年長のおばあちゃんが1週間前に100歳になったということで、お孫さんの粋な計らいで家までお邪魔させてもらうことに。ここで出会ったお孫さんがとても素敵な方で、お酒が大好きなおばあちゃんのために「100歳になったらとびきり良い麦焼酎をプレゼントする」という約束を果たすために今日は来たということだった。お家にお邪魔し、そのお祝いの焼酎をおばあちゃんに渡し、乾杯するところを映像として撮らせて頂いた。本当に素敵な時間だった。
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そしてこの文章を書いている数日前、このおばあちゃんが亡くなったという報せを受けた。
直前まで元気で、安らかな最期だったと。
自分は何も出来なかったけど、このお孫さんからは、中島さんに最後の姿を残してもらって良かったと言って頂いた。
色んな感情が溢れて思わず涙をこぼしてしまった。
命には終わりがある。
始まりがあれば終わりもある。
そんな当たり前のことをこんなに強く実感したのは初めてだったかもしれない。
改めて龍山で滞在した一週間超の間に感じたことを思い返した。
ここに来るまでは、このまちの未来のために自分ができることは何だろうかと息巻いていた。ただ、沢山色んな人のお話を聞く中で、自分の考えがいかに浅はかで何も分かっていなかったかが分かるようになってきた。
それでもせっかくこのまちにドキュメンタリー映像作家として滞在させてもらったからには、このまちの今生きる目の前のひとのために映像をつくりたいと思った。
そして、自分自身の滞在はまだ終わりではない。
MAWとしての滞在は一旦終わりだが、また11月中に数日お邪魔し、12月1-3日の「龍山、ぽちゃん。」で上映する映像のために準備したい。
改めてこの場を借りて今回の色んな素敵な出会いや体験をさせて頂いた方に感謝を伝えさせてください。
こんな素敵な機会を企画して頂き、自分を芸術家という枠で認めて頂いたアーツカウンシルしずおかの皆さん。
今回の滞在中ずっと僕らのことを気遣い、色んな方々に繋いで頂いた山いき隊のお二人と鈴木のぞみさん。
同じ芸術家という立場で時間を共にしたお二人。
そして、今回の滞在中嫌な顔せずすーっと温かく受け入れて下さった地域の方々、本当にありがとうございました。
また来ます、すぐ来ます。
ドキュメンタリー映像作家
中島響