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西松秀祐 「南伊豆町滞在まとめ」

改めて思い返すと短い滞在、旅人という立場だからできたこと、やり残したことがかなりあったように思う。南伊豆を回れたのは、九州からの移動もあって実質5日間だったが、本当に濃密で出会う人にも恵まれた充実した日々だった。また行きたいではなく、いつかまた行くというのが正直な気持ち。

今回の旅のまとめでは、南伊豆の滞在で受けた刺激によってできてきた個人的な宿題、アイデアみたいなものを中心に書きたいと思う。具体的な場所や日々の出来事はnoteに日記のように印しているので、そちらに目を通していただければ、ありがたいです。

1日目 https://note.com/microart2023/n/nd2d73285c8ba
2日目 https://note.com/microart2023/n/n4422b0635937
3日目 https://note.com/microart2023/n/nd87441e4f52a
4日目 https://note.com/microart2023/n/ne8ecedbe5979
5日目 https://note.com/microart2023/n/ncde31db2dc53
6日目 https://note.com/microart2023/n/n6c24cba40a65
7日目 https://note.com/microart2023/n/n35ffa4ef8abc

<風待ち港で考えること>
南伊豆での滞在で計3泊、子浦とよばれる風待ち港で栄えたエリアに宿泊した。事前知識のあまりない南伊豆では日々の予定をなるべく決めず、風に流されるようにそこで発見した興味の赴くままに旅をしようと決めていたこともあって、滞在はじめに宿泊した場所が風待ち港で良かったと思う。「今後の旅路を考える場所」という土地性をもった風待ち港は、予定を決めるのが苦手な自分としては相性が良いように思った。予定や、今何をすべきか分からなくなったら、現在拠点にしている大分にも風待ち港があるので、そこに行きじっくり考える場所として通いたい。実際ここ子浦で出会った様々な方、散歩中に出会った鈴木さん、秀島さん、ゲストハウスの松原さん、小野さん、橋本さん、Tee Salon Kibiのオーナーさん、子浦五十鈴川美術館の千景さん、そして南伊豆町子浦生まれの日本画家矢谷長治の作品によって今回の南伊豆滞在が本当に刺激的な時間になった。

船の移動から車、電車の移動といった移動方法の大転換によって、風待ち港として栄えた当時と現在の比較については、むかしの子浦の浜での海水浴の賑わいについて聞くことや、下賀茂のパンやメロン最中などを販売しているぱんかふぇ だいまるさんをしている場所が元々妻良(風待ち港)でお店を出していたことなどを聞くことで少し想像したくらいしかできなかったが、「移動方法とその土地の文化について」その観点からも今後考えていきたい。

子浦港

<道について>
子浦の港で車を停めて、ゲストハウスまでは歩いて行く。そもそも子浦の道はとても狭く、港付近でないと車が入れない。そのことも移動方法の変化について考えるフックになると思うのだが、その狭い道が私は好きだった。初めの印象は、道沿いの家々は玄関がすごい近いのも相まって、プライベートな空間を歩いているような感覚が強かったし、実際道が歩いていくとそのまま玄関に繋がっていたりプライベートとパブリックの境界が曖昧な道だった。

プライベートとパブリックな境界の曖昧さは拠点にしていた大分の別府でも感じることがあります。南伊豆の下賀茂にもあるのですが、地域の方々が使う温泉のことを、別府ではジモセン(地域の温泉)と呼びます。

そこに住む人たちが入りに行く温泉。毎日の日々の生活の一部となったその温泉へ行く感覚はきっと「パブリックな温泉へいく」というより「自分の家の温泉にいく」という感覚が近く、
ジモセン(地域の温泉)は誰々さんの家の温泉でもあって、私の家の温泉でもある。そうやって見ていくと、たしかに夏など半裸で温泉に行く感じや、ほぼパジャマで温泉にいく私は、家から温泉にいく道を廊下として使ってるのかもしれません。

言い方を変えると、公共スペースが初めにあって個人がそれに合わせるという形ではなくて、個人がシェアをすることで、公共スペースが生まれていく感じだと思います。その曖昧なパブリックとプライベートの関係、プライベートをシェアして現れるパブリックみたいなものに僕は興味があると改めて感じた瞬間でした。

子浦の道

<道の駅のコミュニティ>
南伊豆で聞き書きをおこなってきた山本さんのお話を聞きに行きました。地域の方にお話しを聞くときにどのようにしてネットワーク作りや人選をおこなってきたか?みたいな質問をして山本さんが言っていたのは、自身が栽培している野菜やお茶(モモンガ)を道の駅に卸しに行く時に、そこに朝きている人たちやその繋がりなどを紹介してもらいながら活動を展開していったと言っていて、改めて地産が集まるスーパー、道の駅などは確かに情報交流の場になるのかと思ったこと。

いま私は大分の山香という場所を拠点に活動をしているが、ちょうど南伊豆に行く前に山香の作家たちと何か地域で展示など企画をしていきたいと、話していたこともあって、地産が集まるスーパーで、それこそ毎朝、昨日の創作行為なりを、採れたて野菜風に毎日出荷するみたいなことをやっても良いなと思いました。思いつきの分もあるけど、毎朝なにかしの創作行為が地域の作家によって出荷される状況は、地域と芸術を結ぶヒントになるのかも。

道の駅 下賀茂温泉

<農地による多様性>

道の駅下賀茂温泉 湯の花に初めて行った時の印象に、すごい野菜の種類が豊富で、それに壁にや野球部員募集、様々な地域のイベントのチラシなどが貼られていて、実際に賑わっていたし、場所として生き生きしていて、活用されているコミュニティースペースみたいだなと思った。

道の駅は地産の野菜などが売っている場所の他に、観光案内所、資料館などが併設されていたりと、(下賀茂温泉 湯の花も同じ)ほんのちょっとだけその場所が分かるようには設計され、どこかから訪れた人向け用の急いでお土産買う場所、閑散としている雰囲気というのが個人的な感想なのだが、下賀茂温泉 湯の花はどこか他所から訪れた人たちに向けたというか、どちらかというと地域の人々が活動する場所というのものに重きをおいているから、だからこそ余所者の自分も地域のことがより分かる仕組みになっているのかもと思った。

そういう意味で、野菜の種類の多様性は、この南伊豆という平地の少ない場所で農家が専業的な大規模な収穫ができないこと、それによって様々な品種を同時に栽培する方法を取っていること、その方法は個人的に生活の豊かさに重きをおいた暮らしだと思うし、自分もそういうことに惹かれていると感じた。

道の駅 下賀茂温泉 湯の花の壁

訪れた場所の個々の魅力はもっともっとあるし、そこで活動している方々の魅力も満載な場所なのですが、日々の日記をまとめきれず、こういった考えたいことを中心にまとめさせていただきました。

マイクロアートワーケーションの南伊豆ホストを務めてくれたローカルローカルの伊集院さん、渡辺さん、子浦で散歩中に出会った鈴木さん、秀島さん、ゲストハウスDajaの松原さん、小野さん、橋本さん、Tee Salon Kibiのオーナーさん、子浦五十鈴川美術館の千景さん、聞き書きについて話をしてくれた山本さん、アート村の島川さん、意見交流会に来てくれた、和さん、村瀬さん、山口さん、そしてこの企画運営をしているアーツカウンシルしずおかさん、本当にお世話になりました。ちょっと硬い文末ですが、また南伊豆に訪れる時はよろしくお願いいたします。

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