清水玲「もぐる準備(2日目)」
天候は曇りのち雨、気温は13℃。今週に入って急に冷え込んできたが今日はまた一段と肌寒い。7:30にローカル×ローカルを出発し、宿前で送迎の車が到着するのを待つ。
迎えに来てくれたのは、今日からお世話になる「神子元ハンマーズ」のインストラクター上平さん。3日間かけてPADIのオープン・ウォーター・ダイバー・コースを取得する。厳密にいえば2か月ほど前からこつこつとオンラインのEラーニングを使って事前学習を修了した。そのうえで、今日のプール実習と明日明後日の海洋実習を経てライセンスを取得する。
伊豆半島の南東沖合10kmに浮かぶ岩礁だけの小さな無人島神子元島(みこもとじま)付近は、ハンマーヘッドシャーク(シュモクザメ)の群れが出現し、このような場所は世界的にも珍しく、日本では神子元島と与那国島だけだという。
私は南伊豆でMAW滞在するならダイビングをしようと決めていた。以前から続けている伊豆半島の成り立ちを辿る旅の延長で、地上だけでなく海底の地形も見てみたいというのがひとつ。もうひとつは、珍しいダイビングスポットに国内だけでなく海外からも潜りにやってくる人たちと南伊豆とをつなげる役割を担っているインストラクターの話を聞くことは、ローカル×ローカルさんが試みている都市と地方の二項対立にとらわれないローカルなあり方を、また違った側面から垣間見ることができるのではないかと思ったから。
プール実習では、事前のオンライン学習の内容を身体を通して復習し、明日からの海洋実習に備える。水中では深度が10メートル増すごとに、圧力が1気圧ずつ増える。水面から深度10メートル潜ると圧力は倍の2気圧(大気圧1+水圧1)になり、空気の体積は半分、その密度は2倍になる。この原理は、水中での浮力や、シリンダー内の空気を使える時間の長さにも関係し、ダイバーは身につける浮力調節具の重さや空気の出し入れと、自身の呼吸(吸うと浮かぶ、吐くと沈む)で浮力をコントロールする。中性浮力の調整具合は深度によっても変わってくるのでなおさら難しい。
午前と午後2回の訓練(潜降という名の格闘)を経て、なんとか中性浮力を維持するコツをつかむ手ごたえを感じ取ることができた。「人は空気と水による心的転回を知るに至らねば、人の国に入ることあたわず」という山本七平の『「空気」の研究』の冒頭の一文を思い出した。
さて、明日の海洋実習に備えて早く寝ることにする。