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1月25日(水)集まってきたものごと

朝タコセンに向かうと、野口くんの友人のドイツ人アーティスト、リサさんがいた。彼女には去年東京で野口くんとともに会っていたので、まさかこんなところで会うなんて!と大声をあげてびっくりした。滞在制作しているアーティストがきっかけで、他のアーティスト仲間がやってくるという状況に心が躍った。

数日ぶりにやってきたタコセンには、セキ文具店から運んだ木製棚、木箱、朱色で中が細長く仕切られた箱、鉄製の棚などが所狭しと埋まっていた。なんとなく展示空間的な導線もできつつある。これまで野口くんがはなしとして共有してくれていたアイデアやリサーチなどが描かれたドローイング、昨日の夕方富士川で拾ってきた石なども増えている。

ダルマに竹を挿して起き上がり小法師のようにする、というアイデアを描いたもの。「ドラ◯もん?」と野口くんに聞いたら「ダルマですよ〜。でもドラ◯もんも頭に竹ささってますね!」と言っていた

昼過ぎに、これまでリサーチした内容やタンスのダンスを振り返っての「制作ミーティング」をした。
昨年野口くんに会ったとき、私は大学時代に「舞踊譜(ダンスノーテーション)」を研究していたことを話した。要は「人体の動きに関する情報を時間軸・空間軸で楽譜のように記す」ツールなのだが、野口くんはこのことを覚えていたようで、タンスのダンスの舞踊譜を作りたいという話になった。

これまで蛸みこしは、野口くんが居合わせた状態で参加者に演出指示を出しながら行われていた。しかし今後は、野口くん不在の状態でも、指示書や楽譜のようなものを辿れば蛸みこし担ぎを参加者が自ずと再現できるようにしたい、と言う。そこで、吉原で起きた「タンスのダンス」の動き方を辿る舞踊譜を作ったらそれがそのまま蛸みこしの舞踊譜にもなるのでは、と言うような話だった。

この時、私と野口くん共通の知人であるアーティスト、齋藤コンの話になり、ついでに彼女を巻き込んだワークショップを企画する話になる。

午後は2月11日に三島で行う蛸みこしツアーの事前打ち合わせのため「株式会社シタテ」山森さんはじめ関係者でzoomミーティング。三島には地元の馬鈴薯を使った地元名物「みしまコロッケ」があることと、江戸時代に女子のあいだで流行った「いもたこなんきん」に引っ掛けて、蛸とカボチャの入ったコロッケを作れないか、という案が出る。

江戸時代の浮世草子で人形浄瑠璃作者の井原西鶴(いはらさいかく)が女性の好むものとして「芝居、浄瑠璃、芋、蛸、南瓜」をあげたという説や江戸時代の慣用句、または落語に出てくる女性の好物が「芝居、こんにゃく、芋、蛸、南瓜」といわれたことからとされます。

https://oisiiryouri.com/imo-tako-nankin-imi/

夜に齋藤コンさんと早速zoomミーティングを行う。
肩書きには「ダンサー・振付家・肉体屋・どうぶつ体操主宰」などとあるように、コンさんは幼少期から動物に強い興味を持っており、動物の体の構造や動きの仕組み、進化の過程などを研究しながら身体表現作品に落とし込んだり、ワークショップやボディコンディショニングなどの機会を主催して活動している。

蛸は8本脚それぞれに知性があり、人間のように1つの脳みそから全身へ指令を送って動く動物ではない。コンさんも蛸の動きを研究しきるには相当な時間を要するとのこと。しかしなんらかのレクチャーも交えつつ参加者が楽しく体験できる仕組みを作り、そこで得た身体感覚をもって蛸みこしを担ぐ、というざっくりとしたワークショップの流れを組んでこの日のミーティングを終える。
野口くんはミーティング中盤から私の後ろでずっと蛸のようにふにゃふにゃと踊っていた。

1日を振り返って、野口くんをきっかけにいろんなアーティストが、まるで蛸の吸盤に吸い寄せられるように吉原を訪れたり、これから訪れる予定を作ったり。吉原商店街のシャッターの向こうに眠っていたモノ、それを引き摺り出したことで起きた出来事、そのほか市内各所で拾ってきたものが蛸みこし研究センターに集約し、「作品」の一部となっていったことがとても感慨深かった(こんな動きがこの日以降も何度か起きていくので、各日の記事でぜひ読んでみてください)

(YCCC 瀧瀬記)