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1月31日(火)満たされてる場所? / タンスのダンス再び

昼前頃にセンターへ。野口くんはPCの前に座ってマウスを握っていた。この日はセンターとして借りているスペース自体が13:00頃までで閉館ということで、蛸みこし作業は一旦お休みにしてデスクワークをすることにしていたようだ。すぐ終わるとのことだったので、センター内に散りばめられた色々な資料や野口流日記を読んだりして過ごして待つ。

一緒にランチに行こうと思っていたのだが、ランチに向かう前に『タコセン引っ越し案』を持ちかけてみた。

現在のスペースはWi-Fiも使えてエアコンが効いていて暖かいし新しい施設なのでとても快適なのだが、あくまでプレオープン中のコワーキングスペースを一部借りている状態だ。これから先、本格的な竹加工作業が始まりゴミや切り屑なども沢山出ること、蛸みこしを県内各地に連れていくツアーが始まり早朝の積み込み作業などもあることを考えると、もう少し作業に向いていて且つ自分達で自由に出入りできる(鍵ごとお預かりする)環境があると良いだろうと思っていた。そこで、現在のタコセンのすぐ近くでお茶屋さんを営む窪田さんに、所有している空き店舗を貸してくれないか事前相談したところ快諾いただいていたので、それを踏まえての野口くんへの提案だった。

引っ越すと言っても歩いて20秒もない商店街のすぐ近くの空き店舗なのですぐ様子を見に行く。昨年、商店街で開催された『観るは法楽』というイベントの時も展示会場として使用された場所で、その時の作家さんの作品が壁面に残っていたりしていた。使っていない物件なので電気こそ通っていないが、ガランとしたスペースが作業には向いていて、ガラス張りのエントランスも商店街から中の様子が見えやすい。野口くんも「いいですね!」ということで大きく頷く。そのまま窪田さんに挨拶をし早速鍵をを預かった。

  • 現・タコセンは週末まで資料の展示をメインとしたスペースとして使用

  • 週末にかけて、蛸みこしづくりの竹や運んできた家具を徐々に引越し

  • 来週からは完全に「新・蛸みこし研究センター」へ移転

  • 以降は、みこし作りの作業がメインになるだろう

といった感じで引っ越しの話がまとまったところで、ランチへ。
田村と同い年の友人が営む焼きそば屋に歩いて向かう。

もう野口くんは絶対飲むだろうと思っていたので、とりあえず生2つを注文。店主に野口くんをゆるっと紹介しながら、昼から富士宮焼きそばとビール。前日の夜に行ってきた林さんの話をシェアしてもらう。

  • 八幡さまはもともと水属性

  • こいのぼりも実はルーツにタコがある?

  • 日本人にとって空に何かを飛ばしたりあげたりすることの意味

といった話をしてくれた。「話がディープすぎて僕も完全には覚えてないんですけど・・・」と笑いながらも、林さんの話すことや、その知識の広さ深さがかなり楽しかったようで、昨夜も随分遅くまで話し込んだが滞在中あと何度か話を聞きに行きたいとのことだった。

野口くんが2杯目のビールを頼んだあたりで、僕からは「蛸みこしを持つ感覚がパラグライダーの操作と微妙に似ている」という話をシェアしてみた。

前日、センターに置いてあるプロトタイプ的な蛸みこしを実際に持って居合わせた人たちと遊んだ時、手ではなく背中(の服やベルト)に蛸の脚を刺し、両手を離した状態でバランスをとったりしてみた。すると竹のテンションがベルトにかかり、上から釣られているような感じがしたのだ。この感覚がパラグライダーの練習でもある「グランドハンドリング」をやっている時の身体使いと似ている気がする。という話をした。

この部分には野口くんもだいぶ興味を持った様子。そしてパラグライダーから繋がって、“空に向かって飛ばしたりあげたりするもの” という昨夜の林さんの話がもう一度混ざってきて「色々な話がやっぱりタコに続いちゃうね!!」と話がまとまったところで焼きそば屋さんを後にした。

帰りに散歩がてら近くの公園で休憩。ブランコをしながら野口くんが「まちと芸術の関係」という話をしてくれた。というよりこの話は野口くんと一緒に吉原に滞在中のリサさんが話したことで、それを野口くん的に解釈したとのこと。

リサさんのいるドイツでは都市やまちがしっかり目的をもって作られていて、それは建物だけでなく道路や公園までもがその目的を果たすために存在している。そしてまちの人々もその用途のためにそこを利用するし、その目的以外に使用されることをまち自体が拒んでいると思う。一見すると美しいまちの構造とも言えるが、一方で日々の生活風景に余白がないとも言える。その結果、人々がその余白部分すなわち “自由にできるところ” とか ”決められていないこと” を求めて芸術が発展し、皆にとって必要なものとして芸術が理解されてきたのではないか。

日本(とくに現在滞在している富士市も含め)では、つくられた目的があるように見えても、その通りに利用されていない場所や、放置された場所、使い方がイマイチ明確になっていない空間などが多く存在していると感じる。生活する景色の中に比較的余白が多く、ある程度のゆるさがある。それゆえ芸術のようなものがむしろ人々にとって必要ないのではないか。ある意味満たされた人々が多いのではないだろうか。

といった話だった。

野口くんは「リサさんは日本に来ても美術館や博物館、歴史的な価値のある場所などには全然行かず、ただその辺をぶらぶらしてるんですよね。それが面白いみたいで。」と付け加える。確かに彼女はその辺をふらふらしている姿をよく見る。

何かが足りない!と思って色々なことをYCCC発足以前からも吉原や富士市内で企画したりしていたが「満たされているのでは?」という急な問いかけはかなり衝撃的だった。この部分はYCCC的にも今後の活動をしていく上で追求していきたいテーマだと感じた。

13時でクローズの予定だったタコセンがスタッフさんの計らいで15時頃までOKとなったので、それなら今日できる引っ越し早速やっちゃいましょうとなる。

文具店から運んできた古い家具たちを「新・タコセン」に移動する。
そう、タンスのダンス再びである。とはいっても今回は移動距離もかなり近いし何より僕たちは既に、どうやったら良い感じに動けるかなんとなくわかってきていて結構スムーズだった(と思う・・・笑)野口語録で言うならばバイブスでできた。

途中「新・タコセン」のオーナーである窪田さんに大丈夫??と言われながらも僕らは元気よく返事をして大きい家具は引っ越し完了。勢いで運び終わったが、野口くんも「流石に焼きそば大盛りと生2杯がきいてきました〜」と、珍しくへなへなな声を出して少し顔を赤くしていた。ひとまず今日はこれで終わりにしようということになり別れた。

(YCCC 田村記)