嘉春佳「伝えられていく技(6日目)」
私が最初に滞在先を森町に決めた理由に、陶房が集まっている、ということがあります。今日は自転車で森山焼きの陶房を回ることにしました。
その前に、1日目に駆け足で見た小國神社にもう一度向かいました。
現在拝殿で行われている50年に一度のお屋根替えについて、色々教えていただきました。
まず檜皮葺について、境内の檜の木から皮をとり、その皮で屋根を覆っていくそうで、一度皮を取ってから10年ほどかけて、またその檜に皮が新しくできてくるそう。
この檜は皮を取ってから5年ほど。あと5年かけて、また皮が取れるまで再生するそう。
その場所で取れた素材をその場所で使い、さらに素材を取った後、樹木も再生し、また次の50年に向けて檜皮の準備を行い・・・。
このお屋根替えの素材や職人の技法について知る中でも、最初の日にお話を伺った神道の循環する考え方を思い出します。
きっちり重ねられ、屋根を覆う檜皮。伝統として受け継がれてきた職人の技。
小國神社のそばの川。今日も子供達がたくさん遊んでいました。
ここで小さい頃に遊んだ子供たちが大人になって、またここに子供と一緒に遊びに来るそう。この川を通じても、町の人たちの暮らしの歴史を感じます。
神社のそばにあるみもろ焼きの陶房へ。「みもろ」は神々の鎮座する場所。
御神木の杉の落ち葉を燃やした灰、宮川沿いで採れる鬼板や陶石など、小國神社の境内で採れた素材を土や釉薬に混ぜて作られた、この場所の恵みを含んだ陶器たち。
どれも少しずつ色味や質感が異なり、一つ一つ見入ってしまいます。
中央の少し光沢のある黒茶色っぽい色味にとても惹かれたのですが、釉薬に鉄分を多く含んだ鬼板が使われているそう。
鬼板の釉薬に惹かれすぎて、マグカップ(写真には映っていないのですが)を購入してしまいました。茨城に帰ったらまとめを書きながらマグカップでコーヒーを飲もう。
続いての陶房へ移動。めぐみ橋のカワセミ。
こんなに近い範囲に窯元がある森町。
中村陶房へ。
森山焼きの本家で、この中村陶房から他の陶房に分かれ、四陶房になったそう。(現在は七陶房)
この花瓶は赤い釉薬一色をかけていたけれど、焼き上がったら、火の当たる位置の都合で色合いが異なる二色のように焼き上がったものだそう。
春夏秋冬の季節によっても、釜の中の位置や温度の違いによっても、意図せぬ効果が生まれてくる。
釜に入れたらその後出すまで見ることができない陶芸は、作者がコントロールしきれない部分に新しい手法が生まれていくこともあるそう。
土が乾きかけたところを削ることで模様をつけたものたち。削り方によって全然違った質感になる。
お話を伺っていたら、ご家族の繋がりの中で私の地元に住んでいる方もいらっしゃるそうで、まさか全く同じ市に住んでいる方とつながると思っていなかったので驚きつつ、ご縁を感じました。
そしてなんと、釉薬が少し失敗しちゃったという湯呑み(フリーカップとして使えそう)をくださり、、。一つの用途だけではなくて、さまざまな用途に自由に使うことで、さらにその焼き物の魅力が生かせるとのお話も印象的だったので、大切にしつつ、毎日の中で使っていこうと思います。
茨城に帰ったらまとめを書きつつお茶を飲もう。
公園のパンダとゾウ。飛んでそう。
続いて赤焼きの青邨陶房へ。
数日前に訪れていた暁雲釜の赤焼きとは色味がまた少し違う赤。暁雲釜の土は黒土で、青邨さんの土は明るい黄土色。土の違いにより色味の違いが出てくるそう。
森町に来て初めて赤焼きの焼き物を見て気になっていたのが、なぜ赤焼きでいこうと決めたのだろうということ。
お話を伺ったところ、釉薬の中でも青磁と赤は難しい色味で、その赤の色味に挑戦する中で次第にうまくいく方法を見つけ、突き詰め、赤焼きの陶房として独立した歴史があったそう。
他の作品でもなんでも、「赤」は難しい色で、使っていて飽きない「赤」にするというお話を伺い、確かに一点取り入れるだけで雰囲気がガラッと変わってしまう赤色の色味の調整はとても難しいものなのだろうと思います。少し暗いだけでも、明るいだけでも、全く雰囲気が変わってしまう「赤」。その匙加減が伝えられてきた技法に詰まっているのだと思うと、より特別な色に見えてきます。
今回の滞在で図らずも森山焼きコレクションができつつあるので、また次に森町に来たら赤焼きもお迎えしたいな。
飯田の方も景色が良いと情報をいただいていたので、自転車を走らせてみました。本当に一面の稲が広がり、日に当たった黄色と黄緑が眩しい道でした。とっても景色の良い場所。
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今日は花火大会があるそうで、滞在させていただいたゲストハウス森と町の前にも提灯が出て素敵。お祭りの雰囲気。
(そういえば、ずっといる場所だからこそこれまでゲストハウスの写真を全然撮っていなかった...!帰る前に写真撮ろう。)
すぐ近くの駐車場で始まった踊り。火。
花火大会。森町ホストの方々にご一緒させていただき、川沿いで混みすぎることもなく、近くに花火を見ることができ感動でした。
参加が遅れたことによって偶然花火大会が帰る前日に当たったおかげでラッキーでした。
今日のゆる絵。