北林みなみ「漁村とドラえもん」(1日目)
今日から1週間、日記を書く。
アーツカウンシルしずおかの“マイクロアートワーケーション”というプログラムに参加をしている。
Micro Art Work Vacation の造語だそうだ。
静岡県各地に“旅人”を送り出し、旅人たちは旅の様子をレポートすることになっている。私は河津町へ、旅人の1人として向かうことになった。
旅の様子や、色々な気持ちを文章に残しておければ、と思う。
●北林みなみ:絵描き。神奈川県横浜市出身。
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朝、特急「踊り子号」に乗って横浜から出発。
列車の中は平日、そしてシーズンオフということもありガラガラに空いていた。
1時間ほど経った頃、通路左側の車窓に大きな青い海が広がる。
わたしは通路右側の席に座っていた。わたしの真横の窓からは、コンクリートの絶壁がよく見えた。
仕方がないので遠くから写真を撮る。シートも青くてなんか綺麗だからいいか。
帰りは海側の席を予約しようと思う。(帰りは右側の座席を予約すればいいのか?)
お昼頃、河津駅へ到着。
今回のホストを務めてくださるWorking Space Bagatelleの和田さんが改札まで迎えに来てくださった。
昼食に海鮮丼をご馳走していただく。河津は海の幸が豊富だそうだ。
どんぶりに大量に盛られたお刺身。おいしい。
満腹すぎて旅の始まりから腹がクライマックスを迎える。
昼食後、役場の陽気な古川さんと共に3人で海へ。
古川さんの生まれ育った見高地区、ちいさな漁村。
夏は神輿で海を渡り、地元のみんなで手分けして藁で船を作り人形を乗せ、海へと流す。
秋は丘の上にある見高神社で地元青年たちによる能が奉納される。
冬、正月を過ぎると海岸ではどんど焼き(正月飾りをお焚き上げする行事)を行う。
沢山の行事が1年の中に詰まっているそうだ。
秋、ここで地元の青年が能を舞う
舞台が回転盤のようになっており、能を踊っている間、地元集が地下で舞台を回す。音楽も地元の人間が演奏する。
若い地元の人間たちは、それぞれの行事の時期になると大忙しだという。
あらゆる行事を手分けして行っていく地区の人間たちの団結力は、とても強い。と古川さんは言っていた。
氏子さんのご家族が拾ったぎんなんのお裾分け
神社で見つけた優しい顔のドラえもんの石。
ここだけではなく、河津各地に置いてあるそうだ。
魚屋のおじいさんが描いたものだという。
お店で売れ残った魚を、浜でカモメに撒きに行くときに、浜辺の丸い石を拾ってきて、それに絵を描いて色々な場所に置いていたそうだ。
おじいさんはもう亡くなってしまっているが、その魚屋は今も続いているらしい。
丸い石に沢山の絵を描いていたおじいさんのことを、もっと知りたいと思った。
この地区では若い世代が減りつつあり、丘の上にある小学校は中心地区の小学校との統合が決まっている。
小学校の校庭の真横には、すでに閉園した幼稚園の校舎があった。可愛らしい丸窓。屋上から滑り台が伸びていた。荒れ放題の庭は、かつて砂場だった。ちいさな子ども用のトイレが、曇った窓ガラスの向こう側に並んでいた。
漁村での暮らしというのは、どういうものなのだろう。
この地区では、年に数回、資格を持っていない地元の一般住民に海が開かれ、潜って漁をしても良い“口あけ”という日があるらしい。
“貝の口あけ”では、誰でも貝を採っていい、といった感じ。
しかし話を聞いていくと、それは誰でもいいのではなく、地元民であることを認められた人のみが参加を許され、例えばフラッと引っ越してきた人が口あけに参加をすることは難しいそうだ。
今回の滞在中にもう少し話を聞いてみたい。
またこの地区に数日滞在予定なので、色々見て回りたいと思う。
その後、和田さんの勤めるワーキングスペースへ。
温泉街を抜け、森に囲まれた斜面を登っていくと、急に現れる洋風の巨大な門。
でけーーー
かつての河津町長が、船でフランスから運んだらしい。色々な意味で凄みを感じます。
Working Space Bagatelleに到着。
ボロボロになっていた使われていない古いレストランを改修、壊れていた椅子なども背もたれや足はそのまま再利用して、座面の部分を和田さんが自分で綺麗に張り替えたそうだ。素晴らしきDIY根性。
その後、本日泊まる宿、七滝温泉ホテルへと車でわざわざ送ってくださった。
初めてループ橋を間近で見る。
かっこいい!!
和田さんに「今日一番テンション上がってますね(笑)」と言われる。
やっぱり巨大建造物を目の前にすると、喜んでしまいます。
チェックイン後、まだ日が沈んでいなかったので、1人で散策。
河津でも、植物は友達。
水辺の緑色の植物たち、葉が柔らかいことが多い気もする。
大きな滝がそばにあったけど、それよりも側に群生していた大型のシダにテンションが上がる。ナチシダというらしい。
このエリアには滝がたくさんあるそうだ。明日見て回ろうと思う。
日が沈んだ後の、まだ空が薄青の時間が好き。
山の稜線が綺麗に見える時間帯、思う存分徘徊しました。
暗闇の中の自動販売機、ほんと安心する。お前は希望の光だな。
ひとりぼっちには豪勢すぎるご飯。
おいしかった。特に金目鯛。数年ぶりに食べたな。
今日だけで普段の3日分のカロリーを摂取してる・・・ような気がする。
まあいいか!
明日も楽しみです。
つづく
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