市川まや(龍山町6日目3/14)「いま、できること」
春の雨の日は朝霧が見えやすい。
のぞみさんが、吉崎さんと私を連れ出してくれた。
白神神社へ向かう。
ただ、予報とは異なり、青空が広がってきた。
山の天気は難しい。
車をどんどん山奥へ走らせる。
しかし、少し「もや」はあるものの、のぞみさんが見せたいそれとは違った。
「これで最後。ここが無かったら、もう無い。」
白神神社の手前のポイントに来たが、やはりだめだった。
それでも日が昇ると木漏れ日が美しく、雨上がり特有の杉の木からの雨垂れが美しい。
散策していると、千陽さんと合流。
吉崎さんとのぞみさんは撮影のため水窪へ向かうらしい。
私は体力的に疲れ果ててしまい、雨だしゆっくりオフ日にしようと考えていた。
それなのに、ものすごく、これまでの中で一番天気がよいのだ。
山奥からメインストリート(ドラゴンママや森林文化会館、郵便局、交番がある)の生島(おくしま)まで下りてくる。総合食品多丸屋もあり、そこで「勢」という日本酒のワンカップ「イキオイカップ」を購入する。醸造元は岐阜県だが、地元の方々はこれをよく飲まれているらしく、「ここでしか買えないもの」でもある。
「田舎の味 くるみ味」という謎の商品もここでしか買えないそうなので買ってみる。千陽さんがのぞみさんが2日前に誕生日だったことを思い出し、ケーキ風の何かをここであるもので用意することにする。
購入後道を歩いていると、定休日の「ドラゴンママ」が開いている。
中に入り、声をかける。休みではあったがお土産を選ばせてもらう。ママ達の手作りの味噌やジャム等がある。
ゆず味噌とはやとうりの味噌漬けを買う。「はやとうり」は何かと尋ねると、「ブラジル人がよく食べる」という説明だけでよく分からなかった。(調べると南国のウリらしい)
端に校歌のCDが置いてあった。それは来た当初からずっと気になっていたものがった。
手に取ると、CDデッキを持ってきてくださり、聞くことができた。歌詞が書かれた楽譜のコピーも持ってきてくださった。
そのデッキの入った箱にはラジオ体操のCDも入っていて、「前まではラジオ体操をしてから働いていたんだけどねぇ」と仰る。
「あ、校歌でみんなの踊れる体操のようなものを創りたい」そう思った。
昨年から今年にかけ「暮らしランプ体操」というのを創っていた。その時に、一瞬で消えてしまうイベント的なものではなく、長く続けられて(体や記憶に)残っていくものを依頼された。
思いついてしまったものの、オフにしようと言っていた手前、自力で運転できない私はまた千陽さんにお願いすることが非常に申し訳なかった。
「ごめん、やりたいことがあるのだけど、、、取り合えず、いったん朝食を食べよう」
そう言い、多丸屋さんで朝食を買う。方言とイントネーションのはなしで盛り上がる。
山いき隊の2人が、今回のマイクロアートワーケションの趣旨や、訪れる旅人について回覧を作ってくれていたので、みな心を開いて話しかけてくれる。このあたりの方々はしっかりと回覧を熟読されるらしい。
本当にありがたい。
森林文化会館の川べりの道で朝食を食べると、うっすらと朝霧が見える。
幻想的な光景。
千陽さんにお願いするかどうかを躊躇しながら朝食を食べるが、やはり、どうしても、買った校歌で体操を踊り、撮影したいと思ってしまい、それをお伝えした。
千陽さんは天気もいいことだし、下平山農村公園から見える風景が良いので連れていくともいって下さっていたのに便乗して、そこで撮影をお願いした。そこは下平山小学校跡地でもあった。
校歌は龍山中学校のうたを選ぶ。
現在龍山中学校は森林組合が使用している。
千陽さんに衣装の用意をしていただき、一旦滞在場所に向かう。
お昼ご飯をタッパーに詰め、撮影準備をし、校歌をかけて振付を二人で考える。
「秋葉山の山頂に火防(ひぶせ)の神がいるので、火をイメージした動きにしよう」とか、「『龍山中学』はキャッチーなポーズにしよう」「どの世代の人も踊れてワクワクする振付」
30分のうちに、なんとか完成した。
衣装はまたまた真っ赤。
下平山農村公園に向かう道中に振付を確認しながら登る。
そこは見晴らしが素晴らしく、龍山中学校を見下ろすことができた。
いざ撮影なのに、私ときたら振付が覚えられず、ずっと千陽さんに「ポーズ、左足下げる、移動!」と小声で教えてもらう。
情けない。覚えるの、本当に苦手なんです。ごめんなさい。
何とか撮影も終わり、木陰でお昼ご飯を食べる。「田舎の味 くるみ味」はもちもちしたくるみ味の何かを大葉でくるんであった。素焼きしてるのかノリのように大葉がパリパリしていた。
名残惜しく、もう一度、山間から見える天竜川を眺める。
ここにきて、本当に良かった。
次来るときは、もっと人と交流できるといいな。
下山し、この日の夜、やっと、吉崎さん、のぞみさん、千陽さん、長谷山さんと私で集まることができた。歓迎会のような、送別会のような。
予定を詰め込み過ぎて、ちょっと疲れ顔。たくさんサポートしてくださりありがとうございました。出会えたことに心から感謝致します。
豪華な手巻き寿司でもてなしていただき、あるもので作ったケーキらしきものでお祝いをし、夜が更けていく。
次の日には、もうここから離れなければならないのか。
千陽さんと、長谷山さんはこの日でお別れ。
吉崎さんは明朝早くに発つ。
朝。
今私は、これを書きながら、上達した鶯の鳴き声を聞いている。
桜が咲いた風景を思い浮かべて。