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荻野NAO之 【伊東市 day4】 「太陽と月と星と」
また朝となった、4日目である
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旅人の中でもとても特殊だと思う存在がいる
それが火である、またはプラズマである
いつ生まれ、いつ旅を終えるのか、どことどこが繋がっていて、どこが切れているのかいまいちわからない…一体なのか、個別なのか…
この大室山に顕れた火の旅人も、はたして一人だったのか、無数の火の旅人たちが最後一つになって旅を終えたのか、はたまたまだ見えないところで旅を続けているのか、同じ旅人とはいえ月日や光陰の方がまだ想像が及びやすいように感じるのは私だけだろうか…
この火の旅人との遭遇をアレンジしてくれたのは、まずはこれまで何度も山焼きの延期をもたらしてきた天候で、そして現場では大渋滞の中を良さそうな場所へ案内して下さった市議会の活動の旅をしていらっしゃる議員さんだった
山焼きを前にして、宇宙で最初の火、最初のプラズマはどのようなものだったのだろうか?と思う
伊豆半島創世記に思いを馳せると本当に多くの問いに出会うものである
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身近なもので最もプラズマを発しているものは太陽だろう
前にも書いたが、8秒前に太陽の表面を出発した旅人の太陽光は8秒という短い!?時間で我々の中にその旅を終える
我々が見た太陽の光はどれもすべて我々の目の中、脳の中でその旅を終える
ただ、太陽の表面に達するまでその光たちは、十万年以上もの間、太陽の中を中心から表面に向かって長い旅をしていて、この間はプラズマとしての旅人である
出世魚のように、太陽の表面まで向かっていた間プラズマだったその旅人は、表面を離れたとき、光の旅人と名を変えて、終着点となる我々の目の中、網膜の中、または脳の中へ飛び込んでくる…いや、もしかすると我々がその光のことを覚えているということは、脳の中でまたなにかに名を変えて、今も脳の中で旅をし続けているのかもしれない、だから我々が思い出せるのかもしれない…
山焼きというとてもシンプルな出来事が、日常から離れたどこかへ導いてくれる力を宿していることに気づく
写真のかわいい太陽のような茶菓子は、伊東市内の素敵な茶室で、三代に渡り伊東市内でお茶葉を製造している旅人の方からお出しいただいたもの
なんとも美味で印象深く残っているが、何よりもその茶席の中で現れたいろいろなお話が大変に豊かで得難いものであった
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そして月あかりのようにして、我々の茶席の対話を照らし続けてくれたのは、3代の茶の旅人が淹れて下さった、ぐり茶である
独特の味の丸みは、茶葉の製法から来ているようである、茶葉も丸みを帯びた製法によって作られている、茶葉の宇宙をしばし楽しませていただいた午前のひと時だった、良しと思った
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太陽と月と星と
この3種の旅人たちの姿について語ったスイスの教育学の旅人ヨハン・ハインリヒ・ペスタロッチの言葉が心地よく私の中で響き続けている
"Sun has own light, moon has own and stars have each blightness"
「太陽には太陽の輝きがあり、月には月の、星々には星々の明るさがある」
お茶の席のあと、山焼きのあと、午後に訪れた粘土や木などによる人創造の工房については、6日目の獣・家畜・人創造の日に改めて記したいと思う、そんな夕となった