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Eri Liao 「 ここの私から (MAWまとめ)」

 ベランダの花に水やり。昨日雨が降ったし、今朝は曇りで寒いが、ひさしの下にある鉢はこの時期いつも土が乾くので水をやっていると、大家さんちの向こう側の空だけ少し明るくそちらに目がいく。電線の向こう、ちょうど富士山のところ、上下を雲が層になって重なる中、富士山に積もった雪が白く光っている。御殿場ももしかして、と思ってiPhoneの天気を見ると、雪ではなく曇り。最低気温1度とあるから、あそこにいたら間違いなくストーブをつけてるはず。

 マンテンゲストハウスの冷凍庫の棚に、コーヒーを置いてきてしまった。旅先で買ったコーヒーを自宅に戻ってから毎朝少しずつ飲むのは旅の後の何よりの楽しみだけど、勝呂さんがあそこの木のカウンターのところでお湯を沸かして、コーヒーを淹れて、あのマグカップで飲んでるのかなと思うと、置いてくるのも悪くないな。私は近所のスーパーのコーヒーで、でも朝起きてまず最初に飲むのは、mayaちゃんに教わったカルダモン一粒を入れたスパイス白湯というのは帰ってきてからもずっと続けている。ちょうどちょっと前に大船のスパイス屋さんで、カレー用にホールのカルダモンを一袋買っていた。御殿場のスパイス屋さんには行かずじまいだったが、もう数日滞在してたら間違いなくあのお店にチャイを飲みに行ってた。

 クリーニングのオリーブでお土産にいただいた大豆のピクルスも昨日食べ終わってしまった。あまりにも美味しくて、次いつランチに行けるんだろうと考えている。小沢さんからいただいた水かけ菜は、教わった通りに細かく刻んで炊きたてのご飯に混ぜて、私は普段あんまり白米を食べないのだけど、水かけ菜を混ぜたご飯は美味しくて、大盛りで、それを卵かけご飯にしたり、納豆ご飯にしたり、梅干し乗せたりして食べてたらあっという間に終わった。もう一袋、mayaちゃんからいただいた方はまだ大事に冷蔵庫にとってある。少しはそのままで食べて、残りはごま油で炒めるというのをやってみようと思っている。

 もう二週間前になるのか、御殿場に向かう途中の電車、駅間の長い御殿場線の窓の外を眺めながら、今ここの景色の中にある自分と、1秒前に1秒前の景色の中にあった自分について考えていた。その二つの自分が連続していること、こんなにも離れていること、その二つが「私」として両立しているとはどういうことなのか、考えては驚くのをくり返していた。今の私、1秒前の私、5秒前の私、10秒前の・・・と窓の外をじっくり、首をひねって外を見て、今の私から見て過去の方へ、少しだけ過去の私がいた方へびゅんびゅん過ぎていく景色を捕らえようとしては、過去、過去、過去、過去・・・・・とラベルを貼るけど、その中にいた私、全部私?と途方もない気持ちになった。誰かの家の窓が見えると、その中に住む人と入れ替わる自分を想像したりした。今みたいにこうやって自分の机に座ってnoteを書いていれば、1秒前の私と今の私は同じ場所に座り続けているから、二つの私が連続して私であり続けることは全く当然なんだけど、あの電車の中で、自分の体がコマ送りのようになってどどどどどと動いているんだとしたら、「私」と言う時の私は一体どこにあるんだろう、どこからどこまでなんだろう。

 今ここでお灸しながらnoteを書いている私と、マンテンゲストハウスの部屋でお灸しながらひいこらnoteを書いていた私は連続していて、今「私」という時、御殿場にいた私もそこに確かに入っている。別の言い方をすれば、「御殿場に今いない私」というのが今も御殿場にいて、その私はたぶんやっぱりマンテンゲストハウスにいて、通りに面した部屋でむっくり起きて、ストーブつけて、スパイス白湯いれて、コーヒー淹れて、おまんじゅう食べて、お灸して、note書いて、森岡さんがドアの向こうで笑う声を聞いて、キッチンのスペースに行ってみんなと話して、そろそろ食糧が切れるからエピに買いものに行って、途中富士山を眺めて、frolicがやってるか覗いて、ロバ夫さんの新しいスペースを気にして、鮫島さんとmayaちゃんと勝呂さんと、夜はどこに飲みに行こうか相談して、でも今日は金曜日だからマンテンゲストハウスでバー営業をしてるから、私はみんなが教えてくれたオススメの酒屋さんでお酒を買って、馬刺しも買って差し入れにするかもしれない。御殿場でも桜が咲き始めてるようだから、明るいうちに、富士山と桜と両方うつる写真を撮れないか、森岡さんにまずは訊ねて、ひとまず電動自転車に乗って出かけて、町の中をあちこち流れている川の水には桜の花びらが浮かんでいるかもしれない。

 御殿場に来る前、「ウェルカムパーティをするので、みんなに聞いてみたいこと等あったら教えてください」と森岡さんに聞かれていた。パーティ自体はマンボウで中止になってしまったが、当初の予定では、その交流会の中で私は自己紹介をしたり、◯◯に興味があります等の話をして、それに対してみなさんから「じゃあここに行くといいですよ」「この人に会うといいですよ」などとオススメを聞いて、それによって一週間の旅の予定を決める、ということになっていた。思い返せば、私は森岡さんにメールで「みなさんと歌の話をしたいです」と返信していた。民謡とかご当地ソングとか調べに行くのも、それはそれで面白いんだろうけど、なんだか違うような気がして、好きな音楽とか、最近聞いた曲とか、カラオケ好きですとか、リサーチってほどでもない、ただ他愛もない歌の話などしたいなあと思っていたが、御殿場に着いてみたらそのことさえすっかり忘れていた。それどころか、そもそも自分が音楽家としてここに来てるだとかそういうこともほぼ忘れていて、むしろそういう名目から離れて、出会った人たちと宴会の席で台湾の歌うたったり、ぎゃーライブがあるから東京行かなきゃ、衣装どうしよう、みんなと飲みに行きたいけど15分でも練習しないと、終電逃した帰ってこれないどうしよう、こんな夜中に迎えに来させちゃってごめんね本当にありがとう、とか、「なんかあの人音楽やってて歌とか歌ってるらしいよ」くらいの存在として、みなさんと親しくなり、旅をすることができたのはとてもありがたいことだった。この場をお借りして、改めまして、御殿場のみなさま、本当にありがとうございました。御殿場にいた私、御殿場にいない私、御殿場に行く途中だった私、帰ってくる途中だった私、今ここにいてこれを書いている私、全員揃って、みなさんと知り合えたことが心からうれしく、深く感謝しています。みんなありがとうー!!!

 最後に。私は確かに御殿場の人の歌を聴いたのだった。今回の私の旅にあまりにカンペキな歌で、この角に立ってみんなが来るのを待ちながら、思わず録音していたのをここに記録してしまおうと思います。最後は拍手。
 みなさまどうもありがとうございました。またね!

 

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