水野渚「自分以外の目で世界をみること。自分独自の目で世界をみること。」(2日目)
2日目の午前中、ホストの荒武さんと藤田さんが、細野高原を案内してくださった。ススキの高原だ。日本だと、金色のススキと形容するけど、ススキの英訳は、silver grass(銀色の草)になる。色の識別は、かなり曖昧なものだ。ススキは、金色でもあり、銀色でもある。
標高800mほどまで登ると、私たちが滞在している稲取が遠くに見下ろせる。今朝は雲がかかっていたおかげで(?)、空と海の境界がより曖昧で、どこからが空で、海なのか、はっきりしない。いま目の前に広がっているのは、空でもあり、海でもある。
ボコボコとした、モグラの巣もたくさん発見した。
私の足の下で、自分の知らない道が張り巡らされ、モグラが一生懸命穴を掘って生きていると想像すると、なんだか、とても愛おしい。自分の目で世界をみるだけでは、きっと宇宙の星屑ひとつくらいのことしかわからない。地球には、地上の世界もあり、地中の世界もあるのに。
金色と銀色。空と海。地上と地中。自分以外の視点を手に入れると、私の認識をとおしてみえている世界は、とても曖昧なものだと、あらためて気付く。
ちなみに、モグラは目が見えない。以前、視覚をなくして世界をみるワークショップに参加したが、目の前にある世界が、大きすぎて広すぎて、圧倒されてしまった。
午後は、町歩きをしながら、稲取でなにを収集したらおもしろいことができるだろうかと、考えていた。今日は、昨日から気になっていた「屋号」を集めることにした。稲取地区は、「鈴木」と「山田」という名字が多いため、どこの「鈴木さん」かを判別するために、各家は、玄関先に木札で名字以外の屋号を掲げている。
今日、歩いている中で発見した屋号は、以下の14個だ。
「黒初」「てっぺんや」「古新米」「魚よし」「荒店」「まきや」「マルバン」「宿」「予浦屋」「こめや」「石油屋」「とーふや」「まことや」「野田精肉店」
この屋号たちで、どんな遊びができるだろうか。まだわからないけど、自分なりのルールに従って町を歩くと、いつもはみえない町の表情が見えてくるようになるのは、確かだ。
こうやって自分独自の目で、物事に向き合うと、新たな世界が構築される。明日以降も、収集し続けよう。
自分以外の目で世界をみること。自分独自の目で世界をみること。どちらも、大事にしたい。