荻野NAO之 【伊東市 day2】 「空と天と時間と」
朝となった、2日目である
旅先の宿での一泊目はいつもとても大切な儀式である
「旅というのは、時間の中に純粋に身を委ねることだ」
という、福永武彦の『風土』の中の言葉を借りれば、一泊目の睡眠で、その土地の時間の中に身を委ねる儀式が済む
目を覚ますと、空から差し込む朝日がこの土地の時間の流れのようなものを知らせていた
この時間の流れは確かにどこかで感じ知っているようだが、似ているようでやはり初対面である
台湾の宜蘭縣の朝日でもなく、インドネシアのデンパサルや、メキシコのアカプルコのそれでもない、みなRing of Fire(環太平洋火山帯)の海沿いの朝日ではあるのだが、やはり違っている
数百万年前、まだ伊豆半島が半島ではなく、南の海に浮かぶ島だった時、はたして朝日はすでにこの感じだったのだろうか?
朝の散歩で出会った百代の過客、旅の大先輩の岩たちに降り注ぐ朝日を見たときにそんなことを思った
散歩しながら何百万年といった時間についつい思いを馳せてしまうのは、ここ伊豆半島ジオパークに悠久の時を感じさせる何か、ゲニウスロキのようなものが力強く息づいているからだと気づく
2日目の今日、いろいろな旅人に出会った
午前中の私の頭の中を支配していたのは、この小さな旅人だった
なかなかによき佇まいである、そしてこのものも朝日という旅人とやはり出会っている、良しと思った
たった8分前に天の太陽の表面を出発してきたこの朝日は、とても短い旅をあっさり終えたように思われるが、実は太陽の中心からその表面にたどり着くまでに17万年もの時間を旅してきているとも言われ、やはり長旅お疲れさまと言ったところでもある
ところで、旅は道連れというが、私に降り注ぐ太陽光とは別に、今日は一風変わった旅のお供ができた
今日まで城ケ崎資料館を逆旅としていた昭和十九年に鋳造されし十銭硬貨がそれである
金属元素そのものは地球では生成されないわけで、つまりこのものは元来、宇宙の果てのどこかの重力崩壊型の超新星爆発によって旅をはじめた古の旅人であり、伊豆半島の岩たちですら想像もつかないほどの長旅をしてきている地球外の出身者である
もっとも、我々の身体の中にも金属元素はたくさん循環していて、アメリカの天文学者でNASAの惑星探査にも関わっていたカール・セーガンに言わせれば、そもそも
「私たちは星くずで出来ている」
のであるから、さして珍しがるものでもないのだが、十銭君のなんとも言えない旅に疲れたような風貌が良い
この旅のお供を仲人してくれたのは、ITOまなびやステーションという旅人だった
リンガフランカという旅人と一緒になって、城ケ崎資料館に招いて下さったことがきっかけで、どちらの旅人もとても暖かく、素敵な場を用意して下さり、そこではさらに多くの旅人たちとの出会いをひらいていただいた
ホスト( #いとう・すもうPT )の旅人方に想像をはるかに超える歓待をいただいた初日の夜に引き続き、今日の新たな旅人方による歓待にも改めて感謝する夕となった
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