【読書】「鹿の王」
最近のコロナウィルスの感染拡大をみて、以前読んだこの「鹿の王」を思い出し再読しました。
NHKでドラマ化もされた「精霊の守り人」シリーズでおなじみの上橋菜穂子さんの本です。
舞台は架空の世界、強大な国に侵略され統治される国。
ある時、とある捕虜施設で感染症により捕虜全員が死んだ。
戦に敗れた元戦士の男ヴァンと幼い女児ユナを除いてー。
なぜ病にかかる人、かからない人がいるのか?
治る人、治らない人がいるのか?
それは神の思し召しでもなく、天罰でもなく、そこには何か理由がある・・・
それを追求し続ける、高度な医術を持つ貴人の男ホッサル。
その感染症に隠された謎とは・・・
皇帝と各地域をまとめる王たちとの駆け引き、地域に根ざした文化文明、移民との交流、変わりゆく景色、交わる文化の光と影・・・
全く架空の世界のはずなのに、この地球上のどこか実在する地域でのお話・歴史ではないかと思うほどリアルに感じます。
また病の原因と治す術を、懸命にまっすぐな気持ちで知ろうとする医術師ホッサルの熱い想いに心を打たれます。
「いいかい、私たちの身体は、ひとつの国みたいなものなんだ」
「このひとつの身体の中に、実に様々な、目に見えぬ、ごくごく小さなモノたちが住んでいて、今も、私の中で休むことなく働いている。滑らかにに連携を保ちながら。そうやって、私の身体は生かされているんだ」
壮大な物語に、読み終わった後はしばらくその世界から抜け出せないほどでした。
ファンタジーと呼ぶには骨太な、社会的ですらある物語。
ぜひ読んでみていただきたいです。