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『 おばぁ録⑥ 』 ~ おばぁの考え ~

私:「最後に、90年生きてきて、こうしとけば良かったってことある?」
祖母:「たくさんあるわよ。でも、今更どうしようもないじゃない。後悔なんて掘り出せばたくさん出てくるんだから。」

祖母:「現実を見なさい。いつまでも夢みて生きちゃダメよ。理想の人と結婚しようが、子供が育ったら親の介護があるかもしれないし、親の介護が終わったら今度は自分が倒れるかもしれないし。どんな事が起こるかなんて分からないの。理想や夢ばかり見ないで、『今起きてる現実』と向き合って生きなさい。

祖母:「私は本当に幸せ。この施設で生活ができてね。あの窓から見える空は綺麗だし、青々とした芝生は心が和むし。大部屋じゃなく、立派な個室がもらえて。本当に幸せだ。」

病室の窓の外には、祖母が言うように、この辺一体の地主さんの家の庭が見える。開けてすぐに、ビルや民家が密集しているより良かったと思うが、芝生と空が見えるだけで、平凡な景色だ。しかし、祖母は満足している。


後日、お見舞いに行った母から、祖母の部屋から撮ったという写真が、私に転送されてきた。

立派な虹が、空にかかっていた。あの病室だから見える景色だった。


ー 完 ー

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