『発達障害児の親』というアイデンティティー
※発達障害児を育てているのが必ずしも「親」とは限りませんが、自身が親の立場から綴るものとして、文中では「親」という言葉で統一しています
善意?自己顕示欲?
どんな育児も「育児は『その子』それぞれ」ではありますが、発達障害児を育てていると、特にその傾向は顕著になります。そのため、園や学校のママ友とは『育児あるある』が共有できない。療育や支援級・支援学校のママ友も同じ障害児の親でありながら、子の障害種や度合いが違うと共通の話題とは程遠いというケースが起こりがちです。
そんな中、同じ育児に挑んでいる仲間と繋がる目的で積極的にSNS交流をしたり、情報の少ない発達障害児育児界において自分の経験が誰かの役に立てば、という思いで情報発信をしたりという人は、どのSNSにも多いのではないでしょうか。
一方で、『障害児を育てて苦労している親・頑張っている親』というのは自分のみに与えられたアイデンティティーだとばかりに、SNS上で他の発達障害児親を見下す・否定するような発言をして、炎上しているアカウントもしばしば…。注目を集めるためにわざと誰かを否定するような物言いをして、いつも何かの騒ぎの中心にいる人もいます。
(自己顕示欲ではなくても、疲れ切ってまともな判断ができなくなり助けを求める声をありのままSNSに流し続けた結果、ものすごく注目されてしまうことも…)
純粋な仲間づくりや善意から始めたはずの発達系アカウントが、いつしか自己顕示欲に飲み込まれる場合もありますし、時々SNSの投稿内容を自分で振り返ってみることは大切ですね。自戒の意味も込めて。
不幸アピール、苦労マウンティング
リアルライフでは言っても理解してくれる人がいないから、普段は言えない愚痴をSNSで思う存分垂れ流しまくる!コレはコレで良い発散方法です。言葉にして自分の外に出してしまうことでスッキリすることは多いですし、気持ちの整理にもなります。
ただ、そこから不幸アピールや苦労マウンティングに発展してしまうと、SNS上の人間関係も自分の心もこじれていくので、気をつけたいところです。『不幸』『苦労』『辛い目ばかりの人生』というのが自分のアイデンティティー化してしまうと、自分のアイデンティティーを保ち続けるために問題解決を避けるようになりがちです。ツラいツラいと言いつつも、『発達障害児育児で苦労してかわいそうな自分』というアイデンティティーは失いたくないのでしょうね。
(SNSに発達っ子育児の辛さや愚痴を書いている人の全てがそうなのではなく、あくまで一部の人ですからね!)
「そんなアイデンティティーの示し方は間違っている!」と外野が言ってもどうにかなるものではなく、カウンセリングやセラピーが必要な域のことなので、「苦労してるんだなぁ…」と、攻撃せずそっと見守ってあげて下さい。
親も、ありのままで
発達障害を持つ子を育てていると、発達段階やこだわりの傾向など『子どものありのまま』を受容することが求められます。それと同じように、親の側もどうか、ありのままの自分を受け入れてあげて欲しいと思います。
今は発達っ子育児にてんてこまいで、それが自分の現実・ありのままの姿というのもひとつの真実ですが、子どもを持つ前にも、あなたの人生はあったはずです。
気付いたら「子ども産む前の自分がどんなだったか、もう思い出せない」と言うほど疲れ切っていることも、よくありますよね。子どもに合わせた旅行や娯楽ではなく、『自分軸』の様々な物を、いつか自分のために取り戻せますように。私は発達っ子育児13年目にして、ようやく取り戻せました。
『育児中でヲタ活ができず禁断症状が出てる古のヲタク』というのも、『永遠に猫の写真を眺めていたい限界中年』というのも、大切な自分のアイデンティティーです。苦しくなった時こそ、『発達障害児の親』というアイデンティティーだけに捕われず、ありのままの自分自身を見つけてあげて下さい。