Oracle Cloud - クラウド戦国時代のゲームメーカー
ばおーばおーばおーばおー(法螺貝の音)。
はい、というわけでお約束していたクラウド戦国時代の話だよ。合戦物はいくつになったって男の子は大好きなものさ! ああ別に女の子も見ていっても大丈夫だよ。グロ画像とか出ないから。いやちょっと出るかな。
クラウドベンダーの市場シェア
さて、それでは始めよう。まずはビッグピクチャーをつかむために基礎的な数値から押さえておきたいと思う。ここら辺ができるコンサルっぽいね。クラウドベンダの市場シェアを見てみよう。
このグラフを見て驚くのは、まずAzureの躍進である。もう来年にはAWSを抜くのではないかという勢いだ。Google Cloudも健闘している。実数ではまだまだだが、伸び率は非常に良い。しかし今日の主役はこの二社ではない(関係はするけど)。シェアで見ると――申し訳ない言い方だが「ゴミ」にしか見えない――Oracle Cloud Infrastructure、略してOCIである。Oracleといえばもちろんデータベースの巨人であるが、ながらくクラウドに背を向けてきたためにクラウドベンダーとしては最後発となり、各社の後塵を拝している。もういっそIBMと並んでクラウド事業畳んだ方がよいのでは、と外野から見ている人間には思えてしまう。ラリー・エリソンがことあるごとにクラウドをくさしてきたのも、有名なエピソードである。
偉い猫の発言はあとあとまで残ってしまうのが(ノ∀`)アチャーという感じではある。
駄菓子菓子。
当のOracleにはクラウドを諦めるつもりなど毛頭ないのである。もう元気いっぱい、動きまくって業界を引っ搔き回している。本稿はそんなOCIの動きを中心に見たクラウド戦国時代の一断面である。
クラウドベンダー関係図 - 敵の敵は味方?
近年、クラウドベンダー同士の争いは激しさを増す一方であり、その構図はAWS対その他全員という形を取っている。図示すると以下のような感じだ。
まず、左側に位置するAWSは、特段どこと組むということもない。自分のところのクラウドを使ってくれるのが一番幸せなのだというチャンピオンらしい態度である(薄くGoogleと相互乗り入れをしているが、大勢に影響するほどではない)。問題は右側である。対AWS包囲網を形成しており、その合従連衡のゲームメーカーこそがOracle Cloudである。といってもOracle Cloud自身にこれといったウリはあまりない。東京リージョンのAD(AWSのAZみたいな概念)が一つしかないなど笑えるギャグをかましてくれる程度である。
特筆すべきは、他ベンダとの連携である。まずAzureとの連携を見てみよう。両社は、これまでにないくらい親密な関係を築いている。
Oracle Interconnect for Azure (2019)
インターネットを経由することなくセキュアで高速に相互接続するNWサービスとして提供が開始された。当初は一部リージョンのみでの提供だったが、徐々に拡大され2020年にはAzureの東日本リージョンとOCIの東京リージョンでも接続できるようになった。クラウドからのアウトバウンド通信にかかる料金(エグレスコスト)が発生しないという太っ腹なソリューション。レイテンシは2msを謳っており、インシデントはOracle社が窓口となって両社が協力して問題解決にあたるなどサポートもしっかりしている。
Oracle Database Service for Microsoft Azure (ODSA) (2022)
AzureユーザがOCI上のOracle Databaseを利用できるサービス。いくつか前提はあるが、基本的にはAzure上の操作のみでOCI上のリソースを操作できる。Oracle Database@Azure (2023)
Azureのデータセンター内にOCIのハードウェアを設置し、Oracle Databaseを稼働させるという「そんなのありかよ」「もはやマルチクラウドではなく一つの統合クラウドなのでは」という疑念すら浮かんでくる提携形態。現時点ではExadataの占有モデルのみ利用可能。2024年中には東京リージョンにも展開される予定。これ、データセンター被災が起きたら両方ダメになるんじゃないかな・・・。
このように、OracleとAzureの関係はこれまでないくらいに親密である。「他のクラウドベンダー君と一緒にいると緊張しちゃうんだけど、Azure君と一緒にいるとなんだか安心するんだよね」とかなんとか、いただき女子みたいなこと言ったんだろ。え、正直に言えよ。Oracleさんよお。
えー、話を真面目な方向に戻すと、二人がチュッチュしている理由は、もちろん首位を奪取したいAzureと1%でもいいからシェアが欲しいOracleの思惑が一致しているからである。なので、両者の思惑にすれ違いが生じるとこの蜜月関係も終わりを迎える可能性がある。何しろOracleというのは他社と仲良くするのも得意だが喧嘩するのはもっと得意という会社である。「ITの歴史上もっとも醜い争い」と言われた旧HP社との訴訟合戦を覚えている人も多いだろう。
さて、それではOracleとGoogleの関係はどうだろうか。実は、従来この両社の関係は、険悪とまではいかないまでもかなり冷え込んでいた。Google Cloudの仮想マシン上でOracle Databaseを動かすことはライセンス的にできなかったのである。しかし2024年6月に大きな発表があった。それがOracle Database@Google CloudとCross-Cloud Interconnectである。Azureでやった方式をGoogleでもやろうということである。これは歴史的なデタント(雪解け)である。これでようやくOracle Databaseが御三家で動かせることになった。どうせまた「他のクラウドベンダー君と一緒にいると(略)」。
このように、現在のクラウド業界ではOracleが中心となってクラウド戦国時代が展開されている。まさにゲームメーカーと言って差し支えないだろう。一度やると決めてシェアを取りに行くときの同社のなりふり構わなさは見ていて惚れ惚れする。実際、最近はOCIの採用事例も聞くようになってきた。
これからもOracle Cloudからは目が離せない。
なお、本稿の執筆にあたっては以下の書籍に多くを教えられた。まだ刊行前だが、筆者が査読を務めた関係で皆さんより早く読む機会を得られた。各クラウドベンダのサービス内容がデータベースを中心によく網羅されているので、一読をお勧めする。
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