「ピラミッド型組織」では、今の時代を乗り切れない: 「アジャイル(素早い)型組織」のススメ
1.アメーバ型組織のおさらい(先日の投稿より)
先日の投稿では、組織を小集団に分けて収益の管理を徹底する「アメーバ経営(アメーバ型組織)」について説明しました。
この「アメーバ型組織」は、故稲盛氏の「会社経営とは一部の経営トップで行うのではなく、全社員が関わって行うものだ」との考え方に基づいています。
即ち、全員参加経営の実現に向けて、❶部門別採算制度と❷組織の細分化ということがなされました。
大きな組織になればなる程、小回りが利かなくなり、最終的に誰が責任を取るのか不明確になるということです。
この「アメーバ型組織」は、部門別採算制度が最大の特徴であり、❶全員参加型の経営が可能、❷経営者意識を持つ人材育成が可能、❸市場直結のリアルタイムの情報を活かした課題解決が可能という3つのメリットが創出されます。
つまり、これらは、日本の組織で今なお多い「ピラミッド型組織」の課題を克服するためのより現場に密着した組織です。
しかしながら、現状の「ピラミッド型組織」を「アメーバ型組織」に変革するためには、経営トップの強い意志が必要になります。
そのため、大企業では、なかなかそこまでの決断ができないところが多かったのではないでしょうか。
本日は、そういった大きな組織変革を伴わない手法の「アジャイル開発」および「アジャイル型組織」についてお話したいと思います。
2.アジャイル開発とは
アジャイル(Agile)とは、「素早い」という意味です。「アジャイル開発」は短納期で実現する開発手法です。
ソフトウェア開発の世界には、「ウォーターホール開発」と「アジャイル開発」という2つの考え方があります。
「ウォーターホール開発」という考え方は、これまでの主流で、最初から全ての機能を企画・設計した上で計画を立て、その計画に従って実装しテストするという1年単位の開発手法です(下図↓参照)。
確実性が高い開発手法ですが、現在のように変化が激しい時代では、1年前に考えていたことがリリースする時には既に陳腐化してしまい、「導入したけれど、全く顧客に受け入れられない」という可能性があります。
一方、「アジャイル開発」は、上図↑のように、各部門から必要最低限の人員を集め組織化し、小さな単位(2週単位)で計画・実壮・テスト・リリースを繰り返す開発手法です。
アジャイル開発では、2週間単位でリリースし、リリース毎にユーザーや顧客のフィードバックから学習し、再度開発してリリースするという繰り返しとなります。
2週間単位でリリースすると年26回リリースが行われる計算となります。
そのため、最終的に顧客満足度が非常に高い開発ができるようになります。
3.アジャイル開発は、OODAループそのもの
このアジャイル型開発は、まさしくOODAループそのものだと私は考えています。
以前の投稿(↓参照)で説明したようにOODAループには❶臨機応変、❷即断即決、❸状況のUpdateの3つのポイントがあります。
「アジャイル開発」では、2週間毎に開発してリリースします。
そのため、ユーザーや顧客の反応をしっかり「観察」し、短期間で「状況判断」・「意志決定」をして、「実行」(リリース)しなければならないからです。
4.ピラミッド型組織とアジャイル型組織の比較
4-1)ピラミッド型組織
日本の大企業のほとんどが、ピラミッド型組織を採用しています。
ピラミッド型組織は、強大な経営トップのリーダーシップのもと、トップダウンの階層性をとり、縦割り組織で役割がきっちり決めて、全員で決めてトップが承認する開発スタイルを取っています。
計画を重視して、じっくり時間を掛けて開発するため、競合が追随できないものを開発することが可能となります。
しかしながら、例えば1年掛けてじっくり開発するため、最近のように変化の激しい時代では、外部環境変化に対応しきれない場合が多々あります。
4-2)アジャイル型組織
アジャイル型組織は、先程説明したアジャイル開発を可能にするための組織です。
それに対して、アジャイル型組織は、フラットな少人数(4〜5名、多くても10名以下)のチームの集合体で構成されています。
そのため、アジャイル型組織は、アメーバ型組織のように大掛かりな変革がなく、比較的容易に組織構築ができます。
そして、思考⇒実行⇒学習のプロセスが非常に早いのが特徴です。
組織内の全社員に権限を付与しているため、「臨機応変」な対応や「即断即決」がしやすく素早い開発が可能となります。
4-3)アジャイル型組織の特徴(ピラミッド型組織との比較)
アジャイル型組織の特徴をピラミッド型組織と比較したのが下表↓です。
これまでも説明して来たように、アジャイル型組織は、変化の激しい時代に有効な組織です。
全社員に権限が付与されているため、自律して分散して責任を負う必要があり、そのため実行や学習が重視されています。
マネジメントとしては、如何に自主性や各人のやる気を引き出すかが重要視されます。
5.まとめ
❶変化の激しい時代に対応できる組織として「アジャイル型」組織を紹介した。
❷「アジャイル型組織」は、各部門から必要最低限の人員を集め組織化し、小さな単位で計画・実壮・テスト・リリースを繰り返す開発手法です。
❸短期間で開発が繰り返されるため、最終的に顧客満足度が非常に高い開発ができる。
❹変化の激しい時代には、ピラミッド型組織は機能を十分に発揮することが難しいが、アジャイル型組織は、全社員に権限が付与されているため、自律して分散して責任を負う必要があり、実行や学習が重視される。
❺「アジャイル型組織」と「アメーバ型組織」は、決定までに時間を要する「ピラミッド型組織」のデメリットを克服しようとする組織ですが、「アメーバ型組織」はより、簡単に組織を構築することができます。
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