未来を起点に解決を見出す:バックキャスティング思考とは?
先日の投稿(↓参照)の最後のところで、日本の脱石炭が進まない理由の一つとして、日本人は、「バックキャスティング思考」をすることがないからではないかという考えを述べました。
そこで、本日の投稿では、この「バックキャスティング思考」とは一体何なのかについてお話ししたいと思います。
1. バックキャスティング思考とは
前回の投稿の最後のところで、いきなり出て来た「バックキャスティング思考」。
実は、私も詳しくは知りませんでした。
そこで、まずはググって調べることにしました。
バックキャスティング思考とは、
現在から未来を考えるのではなく、「未来のあるべき姿」から「未来を起点」に解決策を見つける思考法のようです。
この思考は、10年、20年といった長期的な目標実現や、現在の延長線上にはない未来の実現に使われる思考法で、「このままではいけない!」といった根本的な課題解決に有効のようです。
その反対が、「フォーキャスティング思考」であり、現在の延長線上の想定される社会を目指す思考法です。
要は、先に課題を定義して、その解決策を考える思考法です。
2.「バックキャスティング思考」のメリットとデメリット
ここで、まずこの「バックキャスティング思考」のメリットとデメリットを挙げて見ます。
2-1)メリット
メリットとしては、以下の5つがありそうです。
このメリットを考えて行くと、日本の社会で多い過去の発想の延長である「PDCAサイクル思考」では絶対に不可能なことを、この「バックキャスティング思考」では、可能にしてしまうイメージがあります。
❶具体策や正解のないものの解決に適している。
❷飛躍的なアイディアやこれまでになかった全く新しい発想が生まれやすい。
❸選択肢に制限がなくなる。
❹目先の利害関係を超えたパートナーシップも築くことができる。
❺高い成果を創出できる組織変革ができる。
2-2)デメリット
デメリットとして、以下の3つを挙げてみました。
❶解決方法に不確実性が高く、実現が困難のものも出てくる。
❷前例がないので、理想の未来像がしっかりと共有しにくい。
❸短期的な解決策やアクションには向いていない。
❶については、確かにデメリットかもしれませんが、正解のない課題に立ち向かう場合は、仕方がないような気がします。
また❷については、反対に理想の未来像さえしっかりと共有できれば、メリットになるということだと思います。
メリット、デメリットを見てみると、中長期的に新たなことにチャレンジするには、「バックキャスティング思考」が非常に有効だという印象ができました。
3.「バックキャスティング思考」の活用
「バックキャスティング思考」で実現させようとしている社会の姿は、そもそも現在の延長線上にはない、誰も経験したことのない未来です。
そのため、未来からの逆算ではなく、常に「未来のあるべき姿」を忘れないことが重要のようです。
その未来に対し必要なアクションを実行し、改善を繰り返して実現を目指すことが、最も現実的で確実な使い方のようです。
3-1)「ムーンショット理論」と「バックキャスティング思考」
アメリカのケネディ大統領は1961年に「アポロ計画」を発表し、1960年代のうちに人類を月に着陸させると宣言しました。
その後、ケネディ大統領は暗殺されますが、死後1969年、2名の宇宙飛行士がアポロ11号で月面に着陸しました。
このように壮大な目標をまず掲げ、それに必要なイノベーションを起こしていくことを、ケネディ大統領の宣言になぞらえて「ムーンショット理論」と呼んでいます。
「バックキャスティング思考」は、正しくこの「ムーンショット理論」そのものの考え方です。
3-2)SDGsはバックキャスティング思考の典型
SDGsとは、持続不可能になった地球を、15年後に持続可能にするための、いわば世界と人類の挑戦です。
この挑戦は、これまで誰も経験したことがないことであり、現在の延長線上での想定された変化だけでは、まず達成することはできないと考えられます。
SDGsは、持続可能な世界という「未来」のイメージが先にあり、そのために「現在」どんな課題を解決すべきかを考えており、「バックキャスティング思考」の典型と言えます。
4.日本人にオススメ
今の日本は、「失われた30年」とか「デジタル敗戦」とか言われますが、まさしくこの「バックキャスティング思考」ができず、過去の延長線上しか見ていなかったからではないかと思いました。
私は、「フォーキャスティング思考」と「バックキャスティング思考」の違いは、「PDCAサイクル」と「OODAループ」の違いに似ているような気がします。
「理想像」や「パーパス」を明確にして、それに向かって過去に囚われずに「多様性」持った考えで、理想に向かっていく。
最近の日本には、そういう考え方が不足していたんだなと納得感があります。
そのことを裏付ける証拠として、これまでも何度か紹介した日本のSDGsの通知表(↓参照)があります。
この中で、日本のSDGs目標のうち目標を達成しているものは、過去からの積み重ねがあるものです。
一方、主要な課題が残っているもの(いわゆる赤点)の中には、このバックキャスティング思考でなければ、なかなか達成できないものが多く含まれているようです(↓図参照)。
例えば、「ジェンダー平等」「再生可能エネルギーの導入」「海洋プラスチック問題」等々。
日本の企業は「PDCAサイクル思考」で過去の延長でものを考えるのではなく、是非、「バックキャスティング思考」で「未来のあるべき姿」から「未来を起点」に解決策を見つけて欲しいものです。
それが日本の復活に繋がる方法だと強く思いました。
【引用、参照website】
◆SDGsジャーナル website: 今さら聞けない「バックキャスティング」の使い方
◆SDGs Eラーニング、研修、コンサルティング website: [DAY27] “バックキャスティング”とは何か?
◆naoonoブログ: 目標実現の為のバックキャスティング思考とは
◆SDGパートナーズ・トップページ: 1. ムーンショット理論
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