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人に興味がなくても人事はできる

「新山さん、人に興味ないでしょ」

おっしゃる通り。
そんな人を人事部に配属していいんですか。



大学生の時、友人からも「みかちゃんって、人に興味ないよね」と言われた。
当時はどういう意味かわからなかったが、言われた半年後からの留学生活で人にさほど興味がないことを実感した。

留学中、異文化や新しい人との出会いに際して、度々あった質問攻めが気付いたきっかけだ。


「食べ物は何が好き?」
「好きなアーティストは?」
「日本人ってコーヒーあんまり飲まないの?」

授業の自己紹介で取り扱うようなテーマで次々と質問が飛んでくる。
授業だと「聞く練習」「話す練習」という目的があるから聞いていたが、本心で気になっていたかというとそうでもない。あまりにも周りと比べて質問ができない私は、自分がそこまで人に興味がないのだと結論づけた。


そうして、大学時代に友人から言われた「人に興味ないでしょ」発言の伏線回収をしたおよそ3年後。
新卒入社の会社で人事部配属になったことを告げられた。

「え……」

一番ないと思っていた、全く想定していなかった部署を言われて当時はフリーズした。
そのあと人事部長から言われたことはほとんど頭に入ってこず。さいごに、質問はありますかと聞かれて、こう返したのだけ覚えている。

「聞き逃していたら申し訳ないのですが、だいたい人事部には何年くらいいそうなんでしょうか?」

振り返ると、なかなか失礼な質問である。
まだ正式に配属されてもいないのに、これから仕事が始まる人事部での仕事が終わった後の話を切り出した。

「少なくとも3年ですかね。
1年目で流れを学んで、2年目である程度できるようになり、3年目で後進育成。中学校や高校が3年であるように、仕事も3年が基本だと思ってくれたらと思います」

3年か……。
とりあえず3年、という言葉を聞いたことがある。人事の仕事も、とりあえず続けてみればハマるかもしれない。そうだ、とりあえず3年頑張ってみよう。

1週間、時間をかけてようやくそう思えるようになった。

が、2、3回しか会ったことのない上司からズバッと、人に興味がないことを言い当てられてしまった。
そうなんですよ、とはとても言えず、せっかく頑張ろうと決めた気持ちが折れかけた瞬間でもあった。


興味がなくても仕事はしなければいけない。
当時の私に課せられたのは、1対1で就活中の学生と約1時間お話しして相談に乗ること、会社情報を発信すること、質問に答えることである。

何を話そうか、何を聞こうか。
数少ない「興味を持てる人」に対しては自然と質問が浮かんでくるため、もし彼らが就活生だったら、と想定して質問リストを作ってみた。20問くらいあったように思う。そのリストから学生に合いそうな質問を選んで聞き、相手の興味関心に応じて話を展開するように心がけた。

人は、頑張ってきたことや自分の好きなことを話すとき、感情が乗って言葉に力が入る。その感情が乗った言葉を拾って詳しく話を聞くと、会話はスムーズにつながる。
文章にするとなかなか冷たい対応に聞こえるが、こうして会話をする合間に会社情報を発信しつつ、質疑応答をしていると1時間を難なく過ごせるようになった。


年間150人程度、初対面の学生と話す。この仕事をやっていたのも2年くらいで、今は転職したこともあり、やっていない。

1対1で人と向き合うことが減ってきたところで先日、友人が運営するワークショップに当日スタッフとして参加した。
コーチングというコミュニケーション手法について、キットを使い実践を通して学んでいくワークショップだ。

コーチングとは、「答えは相手の中にある」という考えのもと、その答えを一緒に探すコーチの姿勢をもってコミュニケーションをとる手法だ。相手の話をしっかりと聞く傾聴の姿勢など、面談実施時の聴き方・話し方はコーチングから学んだ。

ワークショップでは当日スタッフとして裏方のはずだった。が、参加者が奇数だったため、人数合わせ要員としてありがたいことに講義から実践までフル参加させてもらった。

ワークショップの参加者はその道で独立している・独立しようとしている方、副業としてスキルアップを目指す方、コミュニケーション手法としてコーチングを学びたい方。
様々な人が集まっていたが、総じて「人が好きそう」という印象を持った。

「こんな、人が大好き! みたいな方々と私なんかが一緒にいていいのだろうか」

そんなことを心の奥底にしまいつつ、ペアで一方が相手の悩みを聞くワークが始まった。

今回のワークショップの難しさは、自分のコミュニケーションスタイルを一度崩されることにある。
何百人と人の話を聞いていると、ある程度話を類型化してしまえる。そうなると、「あ、このパターンの話ならまずはこの質問をしてみよう」と、聞く側も質問の「型」を持つようになる。
ワークショップではその「型」を崩して原点回帰させるような内容でもあったため、今までの自分の「型」が崩されると質問しづらそうであった。

ペアワークで質問しづらそうな参加者をみて、私は失礼ながらにもこう思った。

人に興味がある人でも、質問リストを自分の中に持っているんだな、と。

質問リストを作るのは人に興味がなくて質問が湧き上がってこないから、だったが、興味関心の有無を問わず、質問リストは必要なのかもしれない。そう思うと、人に強い関心がなくても人事の仕事はできる、やってもいいと思えた。漠然とあった罪悪感のようなものも減った気がした。


好きで人事の仕事を選ぶか、と聞かれれば正直わからない。
ただ、人にそこまで興味がなくても、人と関わる人事の仕事はできる。人事であれば普段は聞けない超個人情報にも触れるため、より深く個人を知ることができる。そうして一人ひとりを深く知る機会を持つうちに、少しづつ興味も湧いてくるかもしれない。

自分の変化を楽しみながら、今日も今日とて仕事に取り組む。


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参加したワークショップはこちら:
https://tomoni-inc.com/coaching-dice/

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