未来からの案内人
「床材は18ミリの無垢にしよう」
Norisとの木材選びが始まった。
「木には位があるんだよ。だから位の高い木を足元に使ったり逆にしたりするとバランスが崩れて美しい建築にならないんだ」
4万本以上ある無垢の木を観に行った日を懐かしく思う。楽しかったなぁ。
玄関、神棚、上り框、受付の机、、、
一周するだけでも
1時間はかかるだろう倉庫で、
私はあっという間に
それぞれに使う木を決めてしまった。
何となく、
素材に呼ばれたような
不思議な感覚だった。
「木との相性もあるからね」
神棚と上り框には
樹齢100年の楠
受付のデスクは
富士山の形が出ているタモの木
そして木について何も知識のない私は
玄関に
樹齢1000年を越える屋久杉を
選んでしまった。
「この屋久杉、江戸城を築城するときに島津藩が伐採して残った根っこの部分なんだよ。斜面での伐採なので根っこから8尺ほど土に埋まり残っていたもので400年前に切られたものなの」
木は伐採してからその年輪分の年月で強度のピークを迎えるのだそう。そして同じ時間をかけて朽ちてゆく。千年生きた屋久杉は千年後に強度のピークを迎えることになるから、ほぼ永遠に使える玄関扉、幸福を呼ぶ場所には一番相応しい扉だと随分満足気だ。
「あのさー、森をつくるのにカーテンレールだけ安っぽい金属でいいの?」
「え〜。まぁそうだな。木で枠をつくるか。うーん」
流石にNoris も頭をかかえた。
「変だって。やってよ」
自然界には直線はないから、レールを包む木枠の角は丸くした。そして、角は曲げれないので、太い木をくり抜いてつくることになった。
後になって、これは大正解だと思った。この森にチープなカーテンレールの存在は全てを台無しにしただろう。
やりたいことをやるんだ。
一切の妥協はしないと決めた。