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日本の経営者は悪代官なのか?

はじめに

日本人の給料の低さをまとめてある記事を読んだ。

OECD調査の最新の平均給与のデータを紹介し、大企業での内部留保を問題視するような記事だった。

内部留保自体は問題なのだろうが、ここに書かれたデータだけで、給料を上げない経営者が悪いと論じるのは結論ありきに思えた。

日本全体の稼ぎが多い(1人あたりGDPがそれなりに高い)のに給料が低いなら、経営者が溜め込んでいると言えそうだが、果たしてそうだろうか?

人の批判をするなら事実を示す必要があるので、1人あたりでGDPと年収の関係を調べてみた。

1)GDPと年収はほぼ正比例

上記と同じソースにあたり、2019年の平均年収とGDPをプロットしてみた。
結果、国別で見ると年収とGDPは正比例にあること、そして、日本は稼ぎが少ない(1人あたりのGDPが低い)ことがわかる。

仮に日本がこの直線より大きく下ならきちんとGDPが年収に反映されていないと言えるが、そこまで外れているとも言えない微妙な位置だ。
ポルトガルやノルウェーは日本と同じような位置(GDP還元率)にある。

つまり、日本の経営者が溜め込んでいる、とまでは断じれない。ちなみに、経営者の手腕がないためGDPが増えていないという話は別の問題だ。

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経年でデータ(下図)をみてみたが、先進国はGDP・年収ともに大きくなっていて、その動きは今の直線を同じような傾きを描いている。

日本も、あまりGDPの増分が小さいのでわかりにくいが、GDPが増えた分は給料に反映されているようにも見える。

つまり、日本の経営者が溜め込んでいる、とまでは断じれない。ちなみに、経営者の手腕がないためGDPが増えていないという話は別の問題だ。

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※赤いドットが2019年のデータで、各国およそGDPは増加するので、左から右に動いている。(右上は国名が消えているが米国)

2)線の上下を分ける要因はなんだろう

これだけだと味気ないのでもう少し頭を使ってみた。事実の整理として、

・国ごとのばらつきは多少ある。アメリカと日本を比べると、アメリカはGDPの割に年収は高い
・GDPが高ければ、直線よりも上にある(年収が対GDPで高い)わけではない。ルクセンブルクやノルウェーなど1人あたりGPDが高くても年収に反映されていない国、その逆のポルトガルもある。

直線の上下に関わる要因を想像してみると、一つは社会保障の充実具合がまずは思いついた。

北欧各国や日本は社会保障が手厚いため、GDPの割には1人1人の給料には反映されていない。逆にアメリカは顕著に、儲かった分が給料に反映されるが、社会保障は自己責任だ。

逆に韓国は、GDPは小さくなった(2018→2019)が給料は上がっており、赤い直線よりも上にきている。
韓国と日本は文化的には近いので、いきなり企業の経営方法が変わったとは思えず、ドルベースで見ているためにこう見えるのかもしれない(結論はでないが)

おわりに

たまたま目にした記事に違和感があったのでデータを見てみて、データを見ることは大事だが、データだけで分かる・想像できることは限界があると感じた。

私の結論も短絡的で、じゃあGDPを上げるには何が必要なのかという話は別の機会に考えたい。





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