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ルールだらけの大企業と、ルールの無いベンチャー企業の違い(前編)

はじめに

私がとある某大手インフラ会社を支援したときのことである。

数十億円を超える大型のシステム開発案件を担当していたが、その会社ではシステム一つを開発するために経営会議の承認が必要であり、その最終的な承認のためには2ヶ月前には会議にかける資料を準備しなければならないと言われてしまった。

担当の方と話していて、“各レイヤーに意見を聞いて資料を直す“官僚的なプロセスは、世の中のベンチャー企業(だけど比較的大きい企業)ではどうなっているのか?という議論になった。

このとき私は答えを持ち合わせていなかったものの、最近この記事にある「NO RULES 世界一「自由」な会社」を読んで少し分かったことがあるのでここに書いておきたい。

1)そもそもの仕事に対する姿勢

上記の記事の中でも言及されているが、NETFLIXでは経費精算などの事務処理に関する承認はもちろん、数億ドルの大規模な広告キャンペーンなどのGo/No Goについてすら、上司からの承認が必要とされない。

参考までに、以下がNETFLIXの規模感であるが、この規模の会社としては異常と言える。

社員数:9,400名(2020年)
売上:250億ドル(同)

社員数1万名というと、日本の企業のトップ300程度に入り、なじみのある会社だとローソン、京急、京成など。またメディアコンテンツ業界だと、少し大きいが博報堂1.8万名だ(余談だが電通は6万名もいる)

この特異なマネージメントスタイルを実現する上で、高い給与で有能な人を採用する、成果が出ない場合にはすぐに首となる、などは前提だが、社員の意思決定の基準を明確にしていることが特有である。

この特異なマネージメントスタイルを実現する上で、高い給与で有能な人を採用する、成果が出ない場合にはすぐに首となる、などは前提だが、社員の意思決定の基準を明確にしていることが特有である。

その判断基準とは、NETFLIXのためになるかどうか、という判断基準である。

その経費を使うことで、投資や経費以上の価値がNETFLIXにもたらされると信じるのなら、その経費使用をし決定してよいとなる。

2)大きな意思決定における大事なルール

ただし、経費レベルでは許されているが、大きな意思決定(ネットフリックス社員にとって本気になれるアイディア、を見つけた場合には、次のようなイノベーションサイクルのステップを踏むことが原則である。

イノベーションサイクルのステップ
1 「反対意見を募る」あるいはアイデアを「周知する」
2 壮大な計画は、まず試してみる。
3 「情報に通じたキャプテン」として賭けに出る
4 成功したら祝杯をあげ、失敗したら公表する。

それぞれに面白いエピソードがあるが、この中でも、1の反対意見を含むさまざまな立場の人の意見を集めることが、必須の行動とされている。


ここで大事なのは、「反対意見」を集める方ではなく、「様々な立場の人」の意見を集めることである。

同じ部署の上司だけでなく、他部署や他の地域の関係者に意見をえることで、賛否の意見を集め、本当に自分がやるべきと考える施策・アクションをすべきかを判断できるようにする。

徹底的に意見を集め、自分の中で様々な矛盾に折り合いをつけるようにアイディアを磨き上げてから意思決定をする。これが3のような情報に通じたキャプテンになれる。

あくまでも意思決定の責任は"自分"となる。上司は反対することも可能だが、それは命令ではなく自分にとってのインプットとなる。

この判断の成否自体が(たとえば結果が失敗でも)問題となることはないが、様々な人の意見を聞かずに判断した場合には、判断能力がないとみなされて職を追われることとなるという。

3)おわりに:失敗の共有

少し長くなったのでここで一度締めるが、イノベーションサイクルの4の失敗の共有もとても興味深い。

自分で決断し、その結果が失敗した時には本当にガックリくるはずだが、それを自分だけにとどめず周りを共有することで社内のレベルアップを図る。またこれは、失敗した当人にとっても失敗を消化するための良いプロセスのように感じる。

これらのネットフリックスのイノベーションプロセスと大企業の意思決定の対比、またシステム開発での対比を次の記事で行う。

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